484.絶対領域
私と王妃様は立ち上がり、陛下に頭を下げる。陛下の後ろには、アラン兄様とユージンさん。
「あー良い良い。頭を上げなさい。すまなかった、遅くなってしまったようで」
陛下が着席し私達も座ると、侍女トリオが新しくお茶を淹れてくれた。今回淹れてくれたのは、緑茶。それに合わせて、ストレージからバター入りどら焼きと東の国で買って来た羊羹を取り出した。もちろん、どちらも大好評だった。どら焼きを食べながら陛下は、元ピグレート侯爵夫人の件について労いの言葉を頂いた。
「アレには私達も苦労したが、まさか自分の子供の代になっても変わらんとはな……美味いな」
「陛下、アレは死んでも変わりませんわ……バターの塩味が良いわ」
「……先代のピグレート侯爵は、ようやくアレから離れることが出来たと喜んでいましたから、元々縁切りするつもりだったんだろうな……羊羹とは初めて食べる。うん、コレも美味い」
「……昔、聞いた話では現ピグレート侯爵の為の薬を渡す条件として、アレを嫁にするって話でしたわよ。羊羹……お久しぶり」
「お2人共、食べるか話すかどちらかにしなさい!子供じゃあるまいし!!」
「「………」」
陛下と王妃様が、宰相様に怒られている。そんな様子を見ている侍女トリオ、近衛隊メンバー、私は苦笑い。
なるほどね〜。あの元侯爵夫人は、実家からも見放されていたのか。薬欲しけりゃ、嫁がせろって?いらん、おまけ付きだわ。
その後、各国での出来事を皇太后様に話したように話した。皆んな驚いたり、笑ったり聞いてくれたけど……アラン兄様の目が時折り細められているので、もしかしたら後で説教案件なのかも?
話は先日の卒業パーティーになり、陛下も王妃様も私達のドレス……というか、コスプレを褒めてくれた。宰相様や侍女トリオは、デザイン画を見ただけでどのような衣装になったのか知らない様だった。そこに、王妃様からの悪魔の一言が……
「ジョアンちゃん、着替えて見せたら?」
「へ?……今?」
「うん、今」
「………はい」
マジか……。4人で着たら、恥ずかしさも軽減されるのにオンリーワンは辛かろう。でも、言い出したら聞かないからなぁ〜。この人……。
ということで、ディメンションルームに入り着替える事にしたのだけど……
「うっわーー、マジで最高じゃない?この部屋。羨ましいーー!!バーカウンターとか、ヤバッ。こっちは……シャワールームあんのかい!!トイレまで?で、こっちは?えっ?何?クローゼットかと思ったらストレージに繋がってんの?ヤッバ!!」
付いて来た王妃様……いや、美梨ちゃんが叫んでる。私が着替えている間に、ディメンションルームを内見していた。
「ねぇねぇ、柊子おばさん?話に聞いてたより広くない?」
「あー、前は16畳ぐらいだったんだけど、いつの間にかレベルアップして30畳ぐらいになってた」
「どんだけ〜!!マジ、ここで住めるね。前世に私が住んでたマンションより広いんですけどーー!!ってか、トイレとシャワールームって排水どうなってんの?」
「知らん」
「は?」
「アシストちゃんに聞いても教えてくれなかった」
『はい、秘密です』
「「うおっ!!」」
急に現れたアシストちゃんに、私も王妃様も驚きを隠せない。いつも通り、私の5才の時の姿でメイド服のアシストちゃんが王妃様に挨拶をしている。
「どうして秘密なのかしら?」
『女の子には、一つぐらい秘密はあるものなので』
「お、おぉ。そういう答えか〜」
『でも、排水がどうなってるかなんてどーでも良くないですか?』
「まぁ、確かに……」
『でしょ?まぁ、ぶっちゃけ異次元に飛ばしてるんですけどね』
「「異次元!?」」
『はい。でも、その異次元がどこなんて知らないから、秘密ってことにしてるんです』
「知らないんだ……」
アシストちゃんと王妃様の対面も終わり、排水システムの謎も何となーくわかり、私の着替えも終わったのでディメンションルームから出る。
「お、お待たせ致しました」
「「「まぁ〜素敵」」」「「「「っ!!」」」」
「えっ、お、王妃様、あのデザインがこちらですか?」
「えぇ、そうよ。素敵でしょう?」
「いや、確かにそうではありますが……。その、いささか、脚が……」
「確かに……。先日は夜、しかも室内のパーティーではあまり気にならなかったが……」
「まぁ、この『絶対領域』が良いんじゃありませんか!陛下も宰相もそこだけ見るからいやらしく見えるのですわ。全体を見て下さいな。あなた達もよ!」
侍女トリオは喜んでくれたが、宰相様と陛下はやはり太ももが見えるデザインに苦言を呈した。そして、近衛隊メンバーは目を逸らしていたが、その中で、リュークさんだけガン見してメルヴィンさんに、後頭部を叩かれていた。しかも、アラン兄様はしれっとリュークさんの足を踏んでるし……。
やはり、1人でコスプレするのは私的にもキツいものがあるので早々に着替えると、王妃様と侍女トリオに残念がられたが男性陣はホッとした表情をしていたので、着替えて正解だったようだ。
「で?打ち上げはいつ?」
「打ち上げ?何の?」
「言ってなかったかしら?件の元侯爵夫人をやり込めた後に、ジョアンちゃんが戻って来たら打ち上げをしようって事になったのよ」
「えっ?初耳だし、それは提案した人が決めるのでは?」
「あら?だって、ジョアンちゃんが料理を作るのだもの。ジョアンちゃんの予定次第よ」
「はいー!?私が作るの?」
「えぇ。カッター公爵も楽しみにしているわよ」
「もちろん私達も期待しておるぞ」
王妃様の急な打ち上げ話に、陛下や宰相様達の期待している視線が痛い。そんな事言われたら……
「で、では早急に、予定を組ませて頂きます?」
「期待しているわ〜」
王妃様に、参加メンバーを確認したところ錚々たるメンバーに持っていたペンを落としてしまった。
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