46.タレ完成
ーーーランチの後。
バンッ。
「「「うわっ!!!」」」
「あっ……えへっ」
「こら、お嬢。えへっ、じゃない!扉は静かに開けろ」
エイブさんに怒られた。
「ごめんなさい」
「はぁー、で、どうした?」
「あっ、今夜みんなでバーベキューします!」
「「「バーベキュー?」」」
あっ、やっぱりそこから?
「えーっと、屋外で肉や野菜を食べる事なんだけど。今夜、ランペイル家の親睦会ってことで、私の家族と使用人と私兵団みんなで食べるの」
「へっ?全員っすか?旦那さんたちと?」
「うん、みんなランペイル家の家族だもん。みんなで食べたら美味しいよ?」
「「「……」」」
ん?何かおかしな事言ったかな?
「お嬢、わかった。指示してくれ」
そう言いながら、エイブさんは私の頭をワシャワシャとちょっと乱暴に撫でた。
「じゃあ、バーベキューの準備しまーす!
野菜は、タマオンを1cmぐらいにスライス、ピーパー(ピーマン)は半分に、コーモロコシ(とうもろこし)は3等分、ナッスー(ナス)は半分で隠し包丁で」
「お嬢様〜、隠し包丁って何ですか?」
野菜担当のアニーちゃんが聞く。
「えーっと、こうやって皮の部分に格子状に切れ目を入れるとスープやタレ……ソースが染みてナッスーが美味しくなるの」
「へぇ〜スゴいですね。ナッスーって味染みなくて嫌いだったんですよぉ。こうしたら、美味しいですかね?」
「うん、美味しいから、今夜チャレンジしてみて」
「はい、楽しみにしてます」
んー、アニーちゃん可愛い。
「肉は、牛と豚は5cmぐらいで。鶏は一口大ぐらいかなぁ。あっ、鶏の骨はこっちの鍋に入れといてー」
「鍋に?骨だぞ。ゴミだろ?」
「ゴミじゃないよ〜。良い出汁……スープが出るから」
「まぁー、良いけど」
「で、ソーセージにも斜めに隠し包丁を。ベーコンは厚めにスライスで」
「「了解」」
肉担当はエイブさんとベンにお願いする。
「じゃあ、私はタレを作ろっかなぁ〜」
醤油がないから、塩ダレよねぇ。
ネギ塩ダレ、塩レモンダレも捨てがたいし。あっ、いっそのこと、ネギ塩レモンダレにしよう。
「ふん、ふふん、ふ〜ん。塩と〜セサミ油と〜ネーギ(長ネギ)の微塵切り〜。最後に〜リモン汁で、ま〜ぜまぜ〜。美味しくな〜れ〜って、ま〜ぜまぜ〜」
焼肉のたれを作るだけなのに、鼻歌を歌ってるジョアン。みんなに背を向けているので、見られているのに気づいてない。
「鼻歌まで歌って、何か楽しそうっすね」
「ほんとにな。混ぜてるだけだろ?」
「お嬢様が楽しいなら、それで良いんですよー」
あっ、ガーニック塩ダレも作っておこう!きっと男の人は好きかも知れない。
「ガ、ガ、ガ、ガ、ガ〜ニック。トントントンと微塵切り〜。塩、塩、塩とセ、セ、セ、セ、セサミ油。胡椒をパッパと入れまして、ま〜ぜまぜまぜ、ま〜ぜまぜ」
「「「「ぶっ、ははははーーっ」」」」
あっ、しまった……。
集中して周りに人がいるの忘れてたーーー。
穴があったら入りたい。
そーっと、後ろを振り返ると…お腹を抱えて笑うエイブさん、ベン、ノエル兄様、ジーン兄様。俯いて肩を震わせている、サラとアニーちゃんがいた。
「な、何でお兄様たちがいるんですか!?」
「ぶふっ…ジョーが、厨房行ったっきり…ふふ…中々帰ってこないから…ふふふ」
ノエル兄様、笑いながら話さないで。
「あはは…ジョー…あははは…何…ぶはっ…作って…あはははーっ」
ジーン兄様は、もはや何言ってるのかわからないわ。
「うぅー……そんな事言う、お兄様たちには、味見させません!!あーあ、せっかく美味しく出来たのになぁ〜」
「「っ!!」」
「えっ、あっ、ごめん。ジョー、本当にごめん」
「ねぇ、ジョー、機嫌直してよ。いつもの可愛い笑顔を見せて」
お兄様たち、必死だわ。
「もう、笑わないで下さいよ」
「「うん。ありがとう」」
うっわ、切り替え早いわ〜。
「じゃあ、みんなで味見しよー!」
「「「「「「おー!!!!!!」」」」」」
スライスしてもらった豚肉を焼く。
「こっちのタレが、ネーギ塩リモンダレ。で、こっちが、ガーニック塩ダレです」
「「うっまーーーー!!」」
「「美味しいですぅ〜!!」」
「お嬢、美味い!!ガーニックがガツンときて、これは病みつきになるな」
「ネーギ塩リモンダレは、さっぱりとしてて良いね。やっぱりジョーの作るのは美味しいなぁ」
味見は高評価だわ。
「このタレがあれば、肉も野菜も美味しく食べられますよね?サラダにかけても、美味しいと思うんですけど、どうですか?」
「お嬢、ここまで簡単に作れて美味いなら、言うことなしだ」
「このタレを遠征とかに持って行けば、食事改善にもなると思うんです」
「何で遠征なんすか?」
午前中に聞いた、私兵団の食事改善の話をエイブとベン、アニーにする。
「私兵団とこ、そこまで酷かったんすね」
「そうみたい。だから、私が調理指導に行こうとーー」
「「ダメです!!」」
サラとアニーちゃんから同時に言われる。
「お嬢様、私兵団は男性ばかりですよ!」
あっ、お父様と同じ感じなのねぇ。
「安心して、初回行く時は1人で行かないから」
「お嬢、もしかしてボディガードは俺ってことか?」
「あっ、エイブさんじゃないですよ。私の憧れの人です。戦い方がキレイで、強くて格好いいの」
「えーっ、お嬢さんの憧れって誰っすか?もしかして……俺っすか?」
「お前じゃねーだろ、ベン。お嬢、誰だよ?」
「ナンシーでーす」
「あー。じゃあ、勝てねぇっす」
「……。(エル、ご愁傷様だな)」
次回は、同時3話更新予定。
頑張りまーすᕦ(ò_óˇ)ᕤ