380.呼び出し
飴ちゃん vs ジョアン回です。
しばらくして、飴ちゃんから私宛に手紙が届いた。
内容としては……『ザックの事は家令が勝手にやった事だけど、自分の所の使用人がやったことだから謝りたい。明日の放課後、指定した場所に必ず1人で来て欲しい』と。
その場所は、学院の時計台。この時計台は、展望台があり昔から夕日を見る為に、恋人達がデートの場所として良く訪れていたらしい。まあ、私は行ったこともありませんけど?
「飴ちゃん、階段落ちしたいのかな?」
私の言葉に、会議室に集まった、アルバート殿下とルーカス様、攻略対象者とタッグパートナー、ベルの頭の中では王妃様から聞いた話を思い出していた。ちなみに、王子妃婚約者の2人は王子妃教育の為に、ここにはいない。
嫉妬に狂った公爵令嬢が、取り巻きの令嬢に指示をして、ヒロインを時計台の階段から突き飛ばし、それをフレッド殿下が助ける。
「でも、キャサリーヌ嬢は嫉妬はしないだろ?どうするんだ?」
と、フレッド殿下。
「私が突き飛ばしたように見えれば良いんでしょ?」
簡単に言う私を、皆んな心配そうに見ている。
「大丈夫なのか?」
と、アルバート殿下。
「大丈夫ですよ。記録用魔道具をセットする時間はたっぷりありますし、パール達も公安隊や我が家の《影》もいるでしょうから。」
「しかし《カラス》にしても《影》にしても、あの時計台では隠れる場所がなかったように思うが……。」
と、フレッド殿下。
「……まあ、なんとかなるでしょう。」
私の発言に、皆んな苦笑する。
「ともかく、フレッド殿下をはじめ皆さんは、時計台には一切近づかないで下さいね!フレッド殿下が助けなくても、他の人が助けてしまったら、その人がターゲットにされますからね!」
そう強めに言うと、攻略対象者とタッグパートナー達は、ブンブンと音が鳴るぐらいの勢いで首を縦に振る。それを見て、私は笑った。
*****
約束の日、階段付近にはわからないように記録用の魔道具を設置、念のため展望台にも設置した。もちろん私目線の記録も必要かと思い、ヘアピン型の魔道具もつけている。パールは、階段下で落ちて来た飴ちゃんを風魔法で助ける為に待機中。メテオは、上空を旋回して私に情報を念話で教えてくれている。ちなみに、ロッソは最近ずっとベルデと共に屋敷にいる。
《カラス》と《影》の皆さんは、展望台に入ると目立つので、きっと近くで見ているはず。
指定された時間に、階段を登り展望台へ行くと既に飴ちゃんは待っていてキョロキョロと下を見ている。まだ、私が来たことに気付いていないようで、ブツブツ呟いている。
「あれぇ〜?まだ、フレッドもアランドルフも来ないのかな?私のこと、助けて貰わなくちゃいけないのにぃ〜。」
やっぱり、フレッド殿下狙い?しかも、あわよくばアラン兄様まで?良かった〜。皆んなにここに来るなって言っておいて。
ふぅ〜、じゃあやりますか。
「あの〜。」
私は意を決して、飴ちゃんに声をかける。私の声に飴ちゃんが気付いてバッと振り返った瞬間、先程まで飴ちゃんが身を乗り出していた手摺りが、メキッと言う音と外側へ倒れる。飴ちゃんは、まだ手摺りを持っていたのでバランスを崩し、一緒に外へ放り出されそうになった。
「ンギャーーーーーッ。」
討伐されるゴブリンのような声を上げてる飴ちゃん。私は予想外のことに焦ったが、思わず手を伸ばした。飴ちゃんは私の手に掴まると、そのまま私の手を引っ張り遠心力を使うと体勢をかえた。
「えっ!?」
飴ちゃんは、展望台の床にへたり込み、外に放り出された私を見て目を丸くしている。
いやいや、驚くぐらいなら、人の手引っ張んなや!
ってか、展望台ってたぶん5階ぐらいの高さだよね?
あれ?このまま落ちると怪我で済まなかったりする?
なんて、落ちながら悠長に考えていると私を呼ぶ声がする。
『「ジョアン!!」』
『姐さん!!』
あれ?パールとメテオと……誰?
背中から落ちてるから、わかんないや……。
その瞬間、グンッと下から風が吹き落下スピードが落ちる。そのまま、ゆっくりと下へ落ちていく。一部の手摺りがなくなった展望台からは、飴ちゃんがこちらを見ている。その顔は先程よりも驚いてるように見えた。
あー、このまま地上に下りるのは、昔、子供や孫達と見た映画の、天空の城のヒロインみたい。まあ、映画と違うのはヒーローが受け止めてくれないことか。
あっ、そろそろ地上かな。
そう思っていると、誰かに受け止められた。
「大丈夫?」
私の顔を覗き込むのは、ここにいるはずもない人……。
「……ど、どう、して、ここに?」
「あー、ここでは話せないから、ともかく移動するよ。」
そのまま、移動始める。私を、お姫様抱っこしたままで。
「えっ、あっ、いや、降ります降ります。重いですから!!」
「いや、全然重くないから。気にしないで。」
彼は、そのままスタスタと歩く。私は、恥ずかしくて両手で顔を隠すと、念話でパールに話しかけた。
ーーパール、いる?
ーーええ、後ろからついて来てるわよ。大丈夫?
ーー恥ずかしくて死ねる。
ーー……大丈夫そうね。
しばらく歩いた所で、足を止めた。
「着いたよ。」
その声で顔を隠した手を外すと、彼が私を見ていた。バチッと目が合うと、自分の顔に血が集まってくるのがわかるぐらい、顔が熱い。
「クッククク、真っ赤。このままでも良いけど?」
「ヒャイ、お、降ります。」
彼は今度は素直に降ろしてくれた。
「あ、あ、ありがとうございます。」
お礼を言い、周りを見ると、そこには一台の馬車が停まっていた。御者が扉を開けると、彼は馬車へと乗り込み私に手を差し出した。その手を取り、私が乗り込むとその後にパールも乗り込む。私が座ると馬車はゆっくりと走り出す。
「あの……どうしてあの場所に?」
「あー、ノアとヴィーにお願いされてね。」
「ノア先輩とヴィーに……。」
「うん。詳しくは今話せないけど、ジョアンちゃんに何かあったら助けて欲しいって。まさか、時計台から落ちてくるとは思わなかったけど。」
「す、すみません。本当に助かりました。」
「まあ、1番の功労者は、そこにいるジョアンちゃんの契約獣だけどね。この子が風魔法で落下スピードを遅くしてくれたから。」
「ありがとう、パール。」
そう言って、パールを撫でる。
『ワン。』
彼がいるから、鳴き声で返事をするパール。
「クッククク、普通に話せるんでしょ?さっき、ジョアンちゃんの名前呼んでたし。」
「えっ、あのーー」
私が慌てると、馬車が停まった。
「着いたよ。」
馬車から降りると、そこは王城だった。
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