32.散歩がてら
ーー翌朝。
久々にアルコールを摂取したーーとは言っても、おつまみのラムレーズンもどきーーのが、功を奏したのかスッキリ目が覚めた。
時刻は、5刻半。
よし!散歩がてら厨房に行って、朝食のお手伝いをしよう!!
っと、まずは、またサラに心配かけないように、誰かに言わないと。
ガチャ。
自室のドアを開けると、ちょうどナンシーが通りがかった。
ちょうど良かった、サラに伝えて貰いましょ。
「おはよう、ナンシー」
「おはようございます、お嬢様。お早いですね」
「うん、目が覚めちゃったから、散歩がてら厨房に行って朝食の、お手伝いしてくる。ってサラに伝えて貰える?」
「散歩がてら……。ふふふっ。かしこまりました。お手伝い頑張って下さいね」
「はーい。あっ、これ、ナンシーにあげようと思ってたの」
ストレージから、昨日作ったクッキーを渡す。
「昨日作ったの。あっ、私のストレージ、時間停止付きだから、まだ焼き立てだよ。ネイサンとザックと一緒に食べてね」
「まぁ、ありがとうございます。昨日、作ったって聞いたんですけど、食べられなくてあの子たち泣いていたんですよ」
「そうなの?あっ、じゃあ、これも……ドライフルーツ。ブレープ、ミランジ、ナババ。あっ、持てないよね。どうしよ?あっ、朝食の後、食堂に持って行けばいい?」
「えっ、でもお嬢様の手を煩わせるわけには……」
「いいの。他のみんなにも食べてもらいたいし。それに、最近ザックに会ってないし」
「ありがとうごさいます。じゃあお待ちしてますね」
「うん。じゃあ、厨房行ってくるねー」
タッ、タッ、タッ……。
「話には聞いていたけど……。本当に、何か吹っ切れたように変わったのね。前世持ちで、規格外のスキル…私が徹底的に鍛えないと」
【ランペイル家侍女長、ナンシー】
家令グレイの妻、元魔物討伐団の一員。身の軽さを生かした双剣の使い手。
長男ネイサン、次男ザックがおり、ジョアンとザックが同じ年ということもあり、娘のように見守っている。
だから、【無】属性の判定を受けたジョアンのことを、とても心配していた。だからこそ、今の状況のジョアンを嬉しく思いつつも、さらに心配は増した。
そして自分に出来ることは、ジョアンとザックを鍛えることだと心に決め、掃除の続きを再開した。
*****
バンッ。
「「うおっ!!」」
扉の音に驚く、アーサーさんとベンさん。
「おはようー!!お手伝いに来ましたー」
「おはよー。ってか、お嬢さん、扉は静かにしましょーよ。心臓に悪いから」
「えへへ。ごめんなさい」
「で、お嬢様、朝食のお手伝いに来てくれたんですか?」
「うん、朝食何にするつもりだったの?」
「いつも通り、サラダとスープと卵料理とパンっすよ」
「ふーん。何か手伝っていい?」
「もちろんです。何だったら、どんなものがいいかアイデアもらえますか?」
「んー、じゃあミモザサラダとタマオンとベーコンのスープ、チーズオムレツでどう?」
「うぉー、また聞いたことねーメニュー出てきた」
ベンが頭を抱える。
「どんな料理が教えてくれますか?お嬢様」
「えーっとね、ミモザサラダっていうのは、レタシとか葉物野菜の上に、茹で卵とチーズの微塵切りをのせてマヨネーズを上からかけるの。スープは、ベーコンから出た塩味を生かしたスープ。チーズオムレツは卵の中にチーズを入れて焼いた料理」
「お、おう。じゃあ、俺はサラダとスープを担当するっす」
「じゃあ、俺はオムレツとやらを」
「ちなみにパンは、あの硬いパン?」
「それ以外にないっすよ」
「そっか……パン、焼きたてかもしれないけど、アレンジしてもいい?」
「「アレンジ??」」