26.カクテルが作りたい
ハッとして、起きると、みんなの作業も終わって、ジョアンの周りでお茶をしていた。
いつの間にか寝ちゃってたわ。申し訳なさすぎる。
「ご、ごめんなさい……」
「いや、気にすんな。いつもは昼寝の時間だったろ?」
「あっ、そういえば……」
「あれ?お嬢さん、忘れてたんすか?」
「えへへっ、料理が楽しくて」
「もう、大丈夫なんですか?もし良かったら、俺がーー」
バシッ。なぜか両手を広げたアーサーさんがエイブさんに叩かれた。
あとは夕食前に揚げるだけのトンカツとエビフライを試食のため、1つずつ揚げてみる。
トンカツはソースがないので塩で、エビフライはタルタルソースで。ジャガトサラダとエビのビスク風スープも少量ずつ、試食する。
サクッ「美味い!衣をつけて揚げるだけで、肉汁がスゴい」
「エビフライも美味しいです。プリップリですよ。このタルタルソースをつけると、無限で食べられそうです。さすが《悪魔のソース》!」
「お嬢様〜。ジャガトサラダも、初めて食べますけど、タマオンとキュウカンの食感が良いです。マヨネーズも病みつきになりそうですぅ」
「お嬢さん、スープも美味いっす。いつも捨てる頭と殻からこんなに味が出るなんて、今までもったいないことしてたっすよー」
うん、どれも美味しくできたわ。
ビスクなんて、久々だからねぇ。しかも、いつもブレンダーやフードプロセッサーを使っていたから、上手く出来るか心配だったのよねぇ。
「成功ですか?」
恐る恐る聞いてみる。
「もちろんだ!大成功だ」
「良かった〜。じゃあ、夕食は完成ですね。なら、ちょっと作りたいものあるんですけど……」
「おう、何だ?」
「お父様たちに、アフターディナーティーで飲むカクテルを作りたいんですけど」
「ん?カクテルってなんだ?」
「えーっと、お酒とお酒やジュースを混ぜたもの?」
「酒を混ぜるのか?」
「はい。あと、おつまみを何点か作ろうかと」
「5才の知識じゃあねーな」
「えへへっ」
さすがに82才の知識とは言えない。こんな時は、笑って誤魔化す。
「よし、じゃあ一度作ってみろ。まずは、セラーに行くぞ。よっと」
フワッ。
エイブに片腕だけで抱っこされた。82才の私としては恥ずかしい。
「お、重くない?」
「お嬢なんて、軽い軽い。ここで働く前は、旦那とグレイさんと一緒で、魔物討伐してたんだ。だから、全然余裕だ」
「えっ、そうなの?グレイもなの?」
エイブさんは、それっぽいって思ったけど、グレイもだなんて…人は見かけによらないのねぇ。
「あぁ、そうだぞ。知らなかったか?他にもウチの私兵団にもいるし、使用人にも元団員いるぞ?」
「えぇー!?知らなかった」
へぇー、私兵団、あるんだ。
まぁ、辺境伯だもんなぁ〜あるか。
今度、誰が元魔物討伐団か聞こうっと。