23.夕食作り①
「いやぁ〜でも、本当に良かったな、お嬢」
エイブが自分の事の様に、喜んでくれる。
「はい、それもこれも、みなさんのおかげです」
「んなことないぞ。紅茶や塩チーズのクッキー、ドライフルーツなんて、俺たちは思いつかなかったんだ」
「それでも、快く厨房を使わせてもらったんですから、感謝してます」
「おう、そうか。じゃあ、夕食はお嬢の食べたいものにしようか」
「やったー!!じゃあ、私が作りたいものでも良いですか?」
「何作れんだ?」
「じゃあ、冷蔵庫とパントリーを見ても良いですか?」
「おう、良いぞ。ん、じゃあアニー見せてやれ」
アーサーとベンは休憩のため、厨房には、エイブとアニーだけだった。
まずは、冷蔵庫を見せて貰う。
冷蔵庫とは言っても、ちょっとした小部屋の様なものだ。
「えーっと、お肉は……豚と鶏がある。卵、ハム、ベーコン、ソーセージ、あっ、エビもある。アニーちゃん、野菜はどこですか?」
「お嬢様、私に敬語はいらないですよー。野菜は、コッチです。根菜類は、パントリーですけど」
「そう?ありがとう、アニーちゃん。
(【サーチ】)トメット、キャベッジ、レタシ…(トマト、キャベツ、レタス…果物と同じで、名前が惜しいわ…)」
「お嬢様、何を作るんですか?」
私も名前で呼ばれたいけど、令嬢と使用人じゃだめよねぇ。「お嬢様」って何か、壁があるのよねぇ〜。
「えーっと、パントリー見てからだけど、トンカツとサラダとエビのスープにしようかと」
「トンカツ?何ですか、それ」
「えーっと、豚肉をパン粉で揚げたもの」
「パン粉?何ですか、それ」
「……。後で、作る時にみせるね」
パントリーに移動して、物色する。
「(【サーチ】)ジャガト、キャロジン、タマオン…(じゃがいも、にんじん、玉ねぎ……ここまでくると、笑えてくるわ)、よし!決まった」
「さっき教えてくれた、トンカツですか?」
「うん、トンカツとジャガトサラダ、エビのスープにする」
「じゃあ、料理長の所に行きましょう」
「エイブさん、トンカツとジャガトサラダとエビのスープにする……します」
アニーちゃんに、タメ口で話してたから、ついエイブさんにまで話しそうになったわ。
「お嬢、俺に敬語なしでいいんだぞ。俺だって、お嬢に敬語使ってないしな、アハハハハ」
「じゃあ、ありがとう、エイブさん」
「おう、んで、なんだ?そのトンカツってのは。俺、知らねー食べ物なんだけど」
「えっと、豚肉に小麦粉、卵、パン粉をつけて揚げたものだよ。あっ、パン粉っていうのはパンを削って出た粉のこと」
「ふーん、まっ、お嬢が知ってんなら良いが…美味いのか?」
「もちろん、美味い!」
自信を持って言える。何なら、きっとエイブさんはガッツリ系が好きだからハマるはずよ。
「あはは、じゃあ、やるか」
「「おーっ!!」」
アニーと笑い合う。
「あっ、お嬢様」
「おっ、何、何?楽しそうじゃん」
アーサーとベンが戻ってきたので、夕食作りをみんなで始めた。