200.べっこう飴
王族専用テラスでのティータイムが終わり、私とお父様が帰ろうと馬車に向かっていると
『アランドルフよ。』
パールに教えて貰い、私とお父様は歩みを止め振り返る。
「ハァハァ……良かった。追いついた。ありがとう、パール。俺の声聞こえたんだな。」
「そうなの?ありがとう、パール。」
『お安い御用よ。』
「で、アランドルフどうしたんだ?」
「伯父上、内密に話すことがありまして。ここではちょっと……。」
「ん?わかった……。では、場所を移そう。」
そう言ってお父様が私達を連れてきたのは、ギルバート叔父様の部屋だった。
ギルバート叔父様に人払いをしてもらい、お父様が防音の魔道具を使用する。
「で?どうした?」
「はい、実は先日俺の同期がジョアンに飴をもらったそうなんですが……ジョアン、覚えているか?リュークに渡した飴。」
「うん、覚えてるよ。それが、どうかしたの?」
「アレの作り方は?」
「えっ?砂糖に水入れて火にかけるだけだけど?」
そう、べっこう飴は砂糖水を熱するだけの簡単なお菓子。ちなみに、熱した砂糖水に重曹を入れると昔懐かしいカルメラ焼きと言うお菓子になる。
べっこう飴とカルメラ焼きは、ジョウ商会の駄菓子コーナーでも販売中です!
「本当にそれだけか?」
「うん。えっ?なんで?」
「リュークがその飴を食べると疲れが取れるどころか、いつもより力がみなぎると言っているんだけど……。試しに俺も舐めたが、味は普通だったが確かにリュークの言うことがわかった。本当に普通の飴なんだな?」
「えっ!?でも、ちゃんと普通の方をあげたはず……。」
「ん?ジョアン、普通の方とはなんだ?」
お父様が聞いてきた。
「えっ……あの……いや、全部普通です。あは、ははは……。」
『ジョアン、報連相!』
「……はい。ちょっとした出来心で、【アクア】の水でべっこう飴を作りました。」
「「「はー?」」」
「で、でもでも、間違えないように普通の方のべっこう飴の小瓶には青いリボンをしてますから、大丈夫です!」
「はぁ〜、そういうことか……。」
アラン兄様がため息をつく。
「え?」
「ジョアンがリュークに渡した、小瓶には赤いリボンがついていたんだ。」
「いやいやいや、まさか……間違えるはずはーーー」
トンッ。「ほら?」
「「あっ。」」「うそーーーん!?」
アラン兄様が取り出したのは、赤いリボンがついている小瓶。中には少量のべっこう飴が……。
マジかー!?
あれ?なんで確認した………してない!!確実に私の過失だわ……。
あーー、やっちまった、やっちまったよーーー。
「すみません……確認し忘れました。」
「「「はぁ〜。」」」『『あーあ。』』
3人が深いため息をつく。パールとロッソは、呆れてる。
「ねぇねぇ、前に【アクア】の水は解毒って聞いたけど、そのアランの同期は力がみなぎるって言ってたんだよね?ちょっと【サーチ】してみてよ。」
ギルバート叔父様に言われて、サーチする。
「うん。【サーチ オープン】」
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[べっこう飴:ジョアンSP]
【アクア】で出した『ジョアンの水』を使用して作ったべっこう飴。
長期保存可能。
効能:疲労回復。体力、持久力アップ。
食べ方:そのまま食べる。
補足:通常の水で作った物より、美味しい。
『ジョアンの水』の効果もあって、回復効果あり。
体力アップ1.5倍 効果は半日。(今のところ)
持久力アップ1.5倍 効果は半日。(今のところ)
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「「「あーー。」」」
と言いながら、眉をひそめながら私を見る。
「あは、ははは……ごめんなさい。」
やっぱりねぇ〜。なんとなくヤバいかなとは思ったのよ。
作ってる時に、ほんのり光ってたし……。ここまでの効果があるとは思わなかったけど。
だから、リボンで色分けしたのに……どうして間違っちゃったかなー。
「これは、どうしたもんか……。」
「やはり、陛下に報告された方がいいのではないですか?」
「リュークには、気のせいだと言ってあります。リュークも納得しております。……ジョアン、普通のべっこう飴はあるんだな?」
「う、うん。……はい、これ。」
アランドルフは、小瓶の中身だけを入れ替えた。
「とにかく、その赤いリボンのべっこう飴はジョアンの親しい人間以外出すな!」
「はい……。」
「はあ〜、この残りの方は持って行ってアイツらに説明をしてくる。ジョアンは先に帰りなさい。……と言っても、1人で帰すのは心配だな。」
「あっ、伯父上。俺が王都の屋敷まで連れて行きます。ちょうど今日は仕事上がりなので。」
「そうか。じゃあ、アランドルフ頼んだ。」
「はい。ジョアン、ちょっと着替えてくるから食堂で待っててくれ。」
「はーい。」
お父様は再び陛下の元へ、アラン兄様は騎士寮へ、私は食堂へ1人で行こうとしたら3人からダメだと言われ、ギルバート叔父様の案内で向かう。
パールもいるから大丈夫なのに……。
みんな心配性ね。
食堂へ向かう途中、ギルバート叔父様の部下の方が走って追いかけて来た。どうやら急ぎの案件があるらしい。
ギルバート叔父様は食堂までの道筋を教えてくれ、その道筋以外には行かないようにと念を押された。
そうして私は、1人と2匹で食堂へ向かう。
その途中で、乙女ゲームでよくある悪役令嬢のグループにいちゃもんをつけられ………るわけでもなく、嫉妬したメイド達に嫌味を言われたりバケツの水をかけられ………ることもなく、すんなりと食堂へ到着する。
食堂の中にはパール達を連れてはいけないので、先日アラン兄様達と座ったテラス席で待つ。
待っている間も、何も問題もなくパール達とストレージからお菓子を出してオヤツをする。
食堂まで無事に辿り着けたのも、テラス席で待っている間何の問題もなかったのも、全てロッソのお陰。
ロッソの運気MAXが、ジョアンの平和を保っていることを知らないのはジョアンだけ……。
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