2.目覚め①
目が覚めた私の視界に入ってきたのは高い天井だった。
ボーッとした状態のまま、ゆっくりと体を起こして周りを見る。
白を基調とした品の良い家具達。白い猫足のテーブルに白くて可愛いソファ。寝ているベッドはふわふわのフカフカで、天蓋がついてる。明らかに高そうな造りだ。室内が全部高級で可愛い。スイートルームって、こんな感じかしら?
……んで、ココはどこ?
ぐるりと視線を巡らせると…ベッドの横の、白くて可愛いドレッサーで目が止まった。
鏡の中には、腰まで伸びた栗色の髪の毛、長い睫毛にちょっとつり目がちな、水色の瞳。外国の映画に出てきそうな、可愛い女の子が映っている。1番下の孫と同じぐらいの年かな?
その女の子は、驚いているのか目が大きく見開いている。
どうしたんだろうか?あっ、私が原因か。日本人として、礼儀は大切。まず謝ろう。
「ごめんなさいね」と、言おうと口を開くと鏡の中の女の子も口を開く。手を振ろうとすると、女の子も真似をする…。
試しにバイバイと手を振ってみる。
…………。
自分の手を見てみる。小さい、可愛らしい手…。ベッドから降りて、ドレッサーの鏡の中をジーッと見つめた。
……段々と色々なことを思い出してきた。
私は、【ジョアン・ランペイル】
辺境伯家の長女。5才。
あっ、昨日、洗礼式で倒れたんだっけ…。
鏡の中の自分を見つめたまま首を傾げていると、遠くからバタバタと騒がしい音がして来た。その音はこの部屋の前で止まり…
「ジョアン!!」
突然、ドアが乱暴に開けられ、紳士淑女らしからぬ慌てた様子の男女が部屋の中に入って来た。
「目が覚めたか!大丈夫なのか?」
くぅー、いつ見てもカッコイイ!
うっすら額に汗をかいて、私の元に駆け寄ってくる30代半ばのダンディな男性は私のお父様。
栗色の髪はちょっと乱れているけれど、ターコイズの綺麗な瞳だ。
「なんとか、大丈夫です……」
お〜、なんとも可愛らしい声。
【スタンリー・ランペイル】
ランペイル辺境伯の当主。
【火】属性
爵位を継ぐ前は、魔物討伐団で副団長を務めていた程の剣の腕前。魔術師団の副師団長を務めていたお母様とは、王宮で出逢い一目惚れをし、猛アタックの末に結婚。
「本当に、良かった。心配したのよ?」
そう言って、涙を浮かべながら優しく抱き締めてくれた女性は私のお母様。
「……ごめんなさい。お母様」
わぁ〜、お母様めちゃくちゃ良い匂いする。
【マーガレット・ランペイル】
ランペイル辺境伯夫人。
【風】属性
蜂蜜色の髪を後ろで一つに緩く纏めている。私と同じ水色の瞳を持つお母様は、お父様が一目惚れしただけはある美人さん。
……いつ見ても芸能界にいそうな、美男美女の両親だなぁ。
「起きても、大丈夫なの?」
と、心配そうな声と
「ジョアンでも、倒れる事あるんだな」
クスクスとまだ幼さの残る笑いが聞こえた。