17.3種類のクッキー
エイブさんが戻ってきたので、クッキーを作ることになった経緯を説明した。
「「「「………」」」」
エイブさんだけではなく、興味本位でクッキーを作りに来たと思っていたらしいアーサーさんやアニーちゃん、サラさんも驚いていた。しかも今から作るクッキーが、私の今後が決まる事になるとは、誰も考えてもいなかったわよね。
「と、言うことで、ベンさんが私の師匠になりました」
「あはっ、何か、さーせん」
全く悪びれた様子もなく、頭を掻きながらベンさんが謝る。
「まっ、ベンは、料理に関しては優秀だから良いとして…、真面目な話、お嬢はクッキーを作って、今後どうしていきたいんだ?」
「私は、クッキーだけではなく料理でみんなに喜んで貰いたいの。私が【無】属性判定をされたことで、お父様たちには迷惑をかけると思うの。だから、私が出来ることを一生懸命にやっていきたいと思って……」
「料理で人を喜ばせたい……か。料理に対しての気持ちは、俺たちと一緒なんだな。よし!わかった。もし、今から作るクッキーが上手くできて旦那様が合格と言うなら、俺も、ちゃんとお嬢が料理人になれるように見守ってやる」
「ありがとうございます。エイブさん」
「……いや、あの、お嬢、俺に『さん』付けは止めてくださいよ」
「じゃあ、師匠の師匠だから、大師匠?」
「いや、いや、いや、大師匠だなんて、とんでもない。それなら、『さん』付けで良い」
「はい。エイブさん」
何はともあれ、クッキーを作ることに厨房のみんなが納得してくれた。これで、ようやく作り始めることができる。
「じゃあ、お嬢さん。作ってみて下さい。あっ、オーブンに入れるのは、俺がやるっすから」
「はい。じゃあ、始めます。まずは、バターをクリーム状にして、そこに砂糖入れて、混ぜる。んで、コレを3等分にして……」
「えっ?なんで3等分にするんすか?」
「あっ、3種類作ろうと思って?」
あっ、報告し忘れてたわ。
「へぇ〜。ちなみに、どんなの作るんすか?」
「プレーンと紅茶クッキーと塩チーズクッキーを」
「紅茶と塩チーズ?食べたことないや。あっ、作業続けて良いっすよ」
「あっ、はい。プレーンは、このまま小麦粉をふるいながら混ぜる。紅茶は、小麦粉と一緒にふるって混ぜて、と。チーズはみじん切りして……」
「あっ、包丁使えるんっすか?大丈夫っすか?」
「大丈夫です」
うぅ。側で見てる分にはいいけど、いちいち何か言われるの、気が散るわ。
でも、5才の貴族令嬢が包丁使えるとは思わないわよねぇ〜。
「で、チーズと小麦粉を混ぜて。あとは、形を整えて冷蔵庫で冷やす。あのぉー、冷えるまで、どうしましょう?」
「お嬢さん、手際良いっすね〜。初めてとはおもえないっすよ」
ベンが褒めてくれる。
そりゃあ、子供や孫に何度も作っていたからねぇ〜……とは、言えないわ。
「でも、塩チーズの塩はどーするんすか?」
「あっ、生地を切った後、縁につけるんです」
「あ〜、なるほどっすね〜」
「お嬢様〜、一旦休憩にしませんか?お茶をお入れしましたから〜。ベンさんも良ければ」
サラが声をかけてくれた。
ナイスタイミングよ、サラ。