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mad world〜月〜

作者: magudara

平成の歌姫と呼ばれた人の曲名から二次創作をさせて頂きました。

白い肌を、まだぜっぜとひくつく喉が火照らせ、ほんのり赤く染めてじんわり濡らしていく。

アート、一般的に芸術と呼ばれる其れは、高尚な趣味に見えて実際の所身売りと何も変わらない。

私達の身体から迸る感情の昂りや集中力、全員が同じ動きをしていることへの支配感。

恍惚感、愉悦、苦悶。それを観て観客は心の中で好き勝手に私達と仮初の交じり合いをするのだ。

人気者でいいじゃないかと言いながら、そういう貴方の眼も私を蔑んでいる事を知っている。

心の中で弄んだ次の日は、必ず一度目を逸らす事を知っている。

普通。と称される人は皆、自分は売らないのだ。

だからどれだけテレビで持て囃されてもSNSや動画投稿サイトで人気があっても普通の人には自分とは関わりのない世界の人として認識されるし、まともな家の子からの反対のされようは尋常じゃ無い。

合宿所に居場所を見つけて迎えに来た母親が泣きながらこんな仕事しないでくれって言っているのを見て、良いな。と思いながら横目にスタジオの扉を開く。

世の中で売ったり作られたり、まるで物々交換の代わりに回り回ったお金が私達の所に辿り着いて、身体しか差し出すものの無い私達に、それ以上の交換先を無くして…。はぁ。と一息ため息をついた様な感じで私の口座残高に数字を増やしていく。

きっとそんな私の買う物だからこれも俗っぽく見えるんだろうなと思いながらGUCCIと大きくロゴの入った少し、ゴワゴワした手触りのーーチープだと思っていた素材は自分の常識から二〜三桁ほど大きく跳ね上がって、他の物より割高に感じ、金持ちはこんな物をもありがたがって買うのかと吃驚して思わず鼻で笑ってしまい、そんな所が気に入って買ったーーほんのりさくら色とグレーを良い具合に合わせたウールのナップサックの輪郭を手でざらりと感じながら両方纏めて引き上げ右肩にかけると、靴を履き替え帰り支度をしていく。

理性のある人間は空を仰がない。だから、仰ぐ。大声を出さない。だから、出す。

頭で考えるほど簡単な話ではない。

身体は理性によって人間らしさを整え、精密に近くなるほど理論的になる。そして技巧を過ぎると面白さを失ったので、次はその技巧をどこまで理性で保ったまま本能を曝け出し人間らしさを捨てられるのかを、私達は求められている。

そうしてバランス感覚が絶妙な者しか生き残っていけない世界が出来たのだと思っている。

少しひやりとしたポケットの裏地に手を滑り込ませふ、と息を吐き首を震わせながら月を見上げ歩を進める。

大きく空を睨み付けていた様な薄茶色に薄く輝く眼が、雲の切れ間から差し覗いた月の光にまるで太陽にそうする様に眩しそうにすうと細められ横顔はまるで月光浴をしているかの如く美しかったが、内面はまるでマグマでこの近辺の人間皆の内臓を一緒くたにふつふつと煮込んでいるかの様に煮えたぎっていた。

いつだって自分の伝えたい事は一つも伝わらないのが世の中だ。

拡散されて行く間に変わっていく。

だからといって伝えようも無いのだ。ああ、もう、どうしようもない。

そんな世の中を変えようとしない覚めた自分にも腹が立つのだ。煮える程に。

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