#1『とある聖女の異世界転生』
新しく公開しました!!
主人公が勇者と聖女の2人となります!!
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◇ ◇ ◇
【 あらすじ 】
勇者と聖女が色々あって魔王討伐した。
彼は消え掛けていた。意識も朦朧としているようだった。
「アレン!アレン!」
私は必死に彼を引き留めようとする。だけど、彼から溢れる血は止まらない。既に死んでいても仕方の無い状態だった。彼の下半身は無くなっていた。左腕もまたもがれている。
「誰か!アレンを生き返らせて!」
私は聖女として私の持つスキル【恩恵】で彼を必死に回復していた。でも回復が綻びに追いつかない。魔王が死を代償に施した呪いはそれほどに強大であった。
「……セレナ。もういいよ。」
残った右腕で私の手に優しく触れた。その手は温かくて、冷たかった。魔王の呪いが他者に襲い掛かろうとするのを聖女の防御力が防いでいた。
「嫌だ、アレンが死ぬなんて嫌だ!」
さらにスキルに掛ける魔力を増やす。私は目眩を感じるけど、どうにか耐える。
「もういいんだ……僕はどうやっても助からない。……それだけに魔王は強かったんだ。……セレナも言われたじゃないか。『勇者は魔王と共に死ぬ運命にある』って……。」
確かに言われた。この国で一番偉い王族に言い伝えとして伝えられている勇者の伝説。その最後にそう記述されている。私も彼もその目で確認したんだ。
それでもその光景を実際に目の当たりにすれば、私が信じていなかったんだと、信じたくなかったのだと知った。私にとって彼は、アレンは初めて出来た話し相手で、友達で、彼氏だった。他にそんな人はいなかった。
「喋らないで!諦めちゃダメ!私の聖女の力で……!」
「このままだと、セレナが死ぬだろう……? 僕は嫌だな。僕はセレナに生きて欲しい。いつまでも永遠に。」
「私が……!アレンのいない私が……!どうしてこの世界にいる必要があるの……!」
「そんなことを言わないで……。いつかきっと……僕は君を迎えに行くから。たとえ、君がどんな姿になっていたとしても。」
「……アレン。」
もう私の魔力は無くなった。彼を包んでいた聖女の暖かな光は消えていた。
「ありがとう……セレナ。」
その言葉を最後に彼の身体は砂となり風に流されていった。私は彼の欠片が風に流されていくのをずっと見ていた。いつまでも、いつまでも。
風は止み、また吹いた。それを何度も繰り返した後に。私はようやく目が覚めた。彼は、私の好きなアレンは、もうこの世界にいないんだと。何もかもが朧げで、儚いようだった。
「ありがとう、なんて言わないで……。感謝するのは私の方だよ……。アレン……。」
いつの間にか溢れた涙は乾いていた。でも気持ちは消えない。私は立ち上がった。この世界の行く末を見るために。
「【転移】」
地面に素早く魔方陣を描き、詠唱する。私は魔王の古城から、王の住む宮殿へと移っていた。
現れた私の姿に人々は笑い合い、喜んだ。そして、もう1人の大切な人の事なんて誰も気にもしてなかった。人々の記憶からアレンという人は消えていた。覚えているのは私だけだった。
「聖女セレナよ!大儀であった!……勇者の事は気の毒だが、それよりも今は祝宴だ!魔王討伐を人々に伝えなければならぬ!」
王様さえも名前も忘れられてしまった彼に、世間体を気にして気の毒そうに一言添えるだけだった。王様と彼は仲の良い友人だった。何度も助け合ったような親友だったのに。
私は祝宴に参加した。そして、傀儡のように王子に寄り添うだけの女となった。人々が掛けてくる声も、王様のお褒めの言葉も、何も聞こえなかった。
全てが終わって。静かになった宮殿で私は地下の書庫へ行った。ここは彼と私が初めて会った場所だった。5歳の時。彼がまだ召使いの見習いで、私がまだ駆け出しの治療師だった時。
「懐かしいなぁ……ここもあそこも。」
本当は懐かしくなんてなかった。悲しみで心がはち切れそうだった。彼を失った私の心は荒んでいた。それでもたった1つの目的のために私の心は保たれていた。
「アレンとまた会いたい。」
何が力を添えたのか、私の前に1冊の本が現れた。その本は私の前で読まれるのを待っているのかのように、プカプカと浮き沈みしている。私はそれに何も感じなかったが、開かれたページを血眼で読んだ。
「これは……【転生魔法】?」
禁術。古代魔術と呼ばれる太古の魔法の一種だった。
「こんな魔法がどうして宮殿の書庫に? ううん、今はそんなこと気にしていられない。」
私は自分の残っている魔力量を確かめる。どうせ生まれ変わるのなら、魔力が涸れても問題ない。残っている全魔力を注ぎ込めば、ギリギリ足りそうだった。あの時、あのタイミングで回復を止めなければこの魔法は使えなかった。
「……【運命の結びを解きて、新たな運命を紡ぎ給え、大いなる時の魔法よ―――― 転生】……!!」
聖女の光に勝る、太陽のような暖かな光が私の全身を包み込んだ。
『運命神の導きでその願いを叶えよう――――』
頭の奥でそんな声が響いたような気がした。そこで私の意識は途絶えた。
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