いいもの拾った
時は流れて、昭和も終わりの方になりだして、
子供はみんな自分で運転できるようになり、
父母私と3人でいるってことが多くなりまして。
ま、でもこの夜は弟その1がいたんだなぁ。
ある寒い日のことだった。
父がやけに上機嫌で帰ってきた。
父:
いいもの拾った 儲かった~
私:
ホイルキャップでしょ どうせ。
弟:
ちくしょ~
えれぇ目にあったぁ~
解説:
えれぇ えらくって意味 たぶん東京方言
この場合は、ものすごくひどい目にあった、ですな。
外から帰ってきた弟。
なにやら手をせっせと洗っている。
弟:
まさかたぬきの死骸をさわらされるなんて。
私:
いいものって、まさかたぬきの死骸?
母が帰ってきた。
母:
お~やだやだ
あんたもみてきてごらん た・ぬ・き
父:
前にみたときはな、葬式に行く途中でな、
縁起悪いと思って道のはじにどけておいたんだ。
いつのまにやらお風呂に入り、湯上りである。
ビール片手に上機嫌のようだ
父:
でな、帰りになったらなかったんだ。
だからきっとだれかが、
いいもの拾った儲かったって
拾っていったんだろうなぁ。
たぬきの死骸の使い道。
ま、まさかたぬき汁???
それからしばらくの間、
肉がでるたび警戒していたのはいうまでもない。
~☆~
そんなこんなで月日がたったある日。
母:
よくできてるわ~
なにかをみて感心している様子
私:
よくできてるってなにが?
母の方にいってみる。
母:
やっとできてきたのよ、これ
私:
これって?
?
???
???!!!!!!
これと母がさした指の先。
笠と蓑を付けたたぬきが徳利をもって立っていた
あ、そうそう。
子供のころ、ホイルキャップを拾いに行っていたのは、
もっぱら弟たちでございました。
私はというと、ボストンバックいっぱいの漫画を読む。
そんな感じだったんです。
この文を書いてしばらくしてきいてみた。
私:ホイルキャップどうしたの?
母:もちろん売ったわよ
全部なのか一部なのかはわかりません。