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地球に帰ってきたら人類が地下に潜って電子世界に旅立ってた

「なんだこれは……僕の地球を返して……」


 地球に帰ってきてみたものの、街並みはおろか地形そのものが大きく変貌をとげてしまっている。

「あの、すいません、ここは日本ですか?」

 僕は意を決して目の前のロボットに声をかけるが、一瞬こっちを見るもののすぐに立ち去ってしまう。

「一番人間に近い形のロボットに声をかけたんだけどな~」


 異世界から帰ってきた流星が驚いたのは、街並みや地形の変化だけではない……

何といっても一番の驚きは、街中に人がいない事だった。

 代わりにロボットは沢山いるものの、その他の生き物というのをまったくと言っていいほど見かけないのだ。

 途方に暮れていると、サイレンと共に、見覚えのある桜の紋章をつけた白黒の車がやってきた。

「これって、絶対僕が原因でやってきたパトカーだよね?」

 車体のドア部分がスライドして解放されても、中から誰もおりてくる気配はなかった。

『異世界からの転生者並びに、帰還者は速やかに車両に搭乗してください』と、アナウンスが流れた。

 延々と繰り返されるアナウンスを聞きながら、事態の打開に向けて車両に乗り込むと、ディスプレイに映像が流れはじめた……

 最初の説明によると、網膜照射やら脊椎から電気パルスを流して直接映像を見せる方式は、異世界帰還者には使えないらしい…防御スキルが自動で働いてすべてカットしてしまうようだ。

 その後、異世界に旅立った日付を聞かれると、その日からの歴史がかいつまんで説明された。

 今は西暦4068年で、僕が旅立った日から2000年先の未来だと言うことは分かったのだが、およそ1500年前に起こった第四次世界大戦によって、ほぼすべての文明が一度滅びかけたというのには驚きを隠せなかった。

 荒廃した大地と文明を、およそ500年もの間修復し続けたのだが、再び訪れた人口爆発によって危機を迎えた人類は、新技術で電子の世界に移住したらしい。


『現在の人類は、地下500mの空間に管理、保管されております。1000年前から人口は一定を保っており、平均年齢は800歳まで伸びました。現在地上は除染作業を続けた結果、人が出歩ける環境になりましたが、電子世界の方が暮しやすいと言うことで、地上で活動する人は皆無です』

「えっと、今僕と会話しているあなたはだれ?」

『私はテラ、統合管理ユニットです。地上の管理と人体のメンテナンスを行っております。また、500年前から始まった異世界人の来訪、および、転生帰還者への対応も行っております』

「……他の転生者とか、帰還者はどうしてるの?」

『異世界転生者はカプセルに入っていただきまして、電子世界へご案内しております。帰還者につきましては、殆どの方がパッシブで防御スキルが発動してしまい、システムを利用することが出来ません。そのため、専用にご用意させていただいた施設に移動して頂いております。現在の利用者はゼロです。専用施設をご利用なさいますか?』

「……ほかの帰還者って居ないんですか?」

『はい、前回の帰還者は150年前に亡くなっております。また、一部の帰還者は孤独に耐え切れず、再び異世界に渡った人もおります』


 地球に帰ってきたものの、地上にいる人間は自分だけで、電子世界のコミュニティーにも参加できないとは、思いもしなかった。

 僕は不老不死の体も手に入れているため、他に帰還者が来ない限りは永遠に独りぼっちだろう。

 そんなのは嫌だ!

 極めつけは、かつて日本が誇っていたアニメや漫画等の文化は、ほぼすべてが戦争で吹き飛んで消えたらしい。今の娯楽は電子世界でしか楽しめないものが殆どで、地上に残された僕に利用できるものはほとんどなかった。

 途方に暮れているところで、統合管理ユニットさんがとんでもないことを言い出した。

『極めて稀ですが、長寿命スキルを取得された方で、宇宙に旅立つ方もいらっしゃいます。その場合は超長距離を航行できる最新型の宇宙船を提供しております。利用なさいますか?』


「それだっ!」


 僕は準備ができるまでの数日間を施設で過ごし、出発の日を迎えた。


『流星様の旅の無事を願っております。行ってらっしゃいませ』

「ありがとう、行ってくるよ」


 どういった原理かわからないけれど、エンタープライズ号によく似た形の宇宙船は、種子島の海から静かに飛び上がり、あっという間に宇宙の彼方目掛けて地球を飛び出した。

「そういえばあの時種子島から飛んでったボイジャー5号ってどこに行ったのかな?ちょっと探してみるか……」

 僕がボイジャーに積んでいたのは、特殊な電波を一日に数回発信する機器で、特殊なバッテリーによってほぼ無限に使えるものだったはずだ、異世界で得たサーチスキルを全開にして半日ほど経ったころ、遥か彼方に反応があった。しかも電波のパターンからすると、大気がある惑星に到着できたみたいだ。

「コンピューター、前方に見える星を拡大してくれ」

『イエス・マイロード』

 

 さすが未来の宇宙船、どういった原理かわからないけど、ものすごい望遠倍率でしっかりと星を捉えてくれた。

 巨大な恒星の周囲を回る惑星の一つらしいが、大気が存在しており、海のようなものも見える。


「コンピューター、この惑星に行きたいんだけど、どれくらいかかる?」

『イエス・マイロード、この惑星までの距離は170光年で、最大速度でも340年かかります』

「えぇ~そんなにかかるの? コールドスリープとかワープとかないの?」

『…… 異世界帰還者の場合、スキルで転移することも可能です。転移しますか?』

「あっ、はい……」


 170光年という膨大な距離は、転移というチートを使ってもすぐにどうにかなるものではなく、僕は一日に何度も魔力が空になるまで転移を繰り返しては寝るという作業を繰り返し、1年という短い期間で目的地にたどり着くことができた。


 

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