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魔法じゃない、超能力だ  作者: 一川一
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エクセリオン 1

 

 何か大事なことを忘れたまま、俺たちはエルエリスについて世界樹の生える地下広間へと向かった。


 悪魔との激戦で荒らされた広間は既に復旧していた。千里眼でハラハラしながら見ていた光景が嘘のようだ。それにしても……。


「また随分と派手な見送りだなぁ」


 ドリュアスと里長はわかるとして会議の席で見かけた長老たちをはじめ里の中心人物っぽい方々が集まっていた。


「わざわざお呼びだてして申し訳ありません。本来ならばこちらから出向くところなのですが……大切なお話しをさせていただくためにお呼びいたしました」

 

 かしこまったドリュアス同様に里長をはじめとしたエルフたちまでも緊張した面持ちだ。どんな話題をふるつもりなのだろうか? ちょっと不安である。


「まずはあらためてお礼を……我等の窮地を救って頂き感謝いたします」


 ドリュアスをはじめとして一同が頭を下げる。なんで今更と思ったが、ずっと眠っていたので礼を言うタイミングがなかったのだろう。照れくさいが彼女たちの言葉を素直に受け取った。


「本来ならそれ相応のお礼を用意するものなのでしょうが……生憎と財宝の類はありませんので……」

「いいよ別に。見返りがほしくて手伝ったわけじゃないし」


 ティアラも頷き不要だと答える。


「そうですか……無欲なのですね。やはり貴方こそ……相応しい」


 ドリュアスが意味深な笑みを浮かべると世界樹が淡い光を放った。


「世界樹も貴方を主と認めたようです」

「なんの話しだ?」

「ケイジ殿……貴方に世界樹を託したいのですが如何でしょう?」


 託す? この馬鹿でかい木を?


「意味がよくわかんないんだが……」


 まわりを見るとえらく驚いている。どうも俺以外はその意味を理解したらしい。嫌な予感がする……。


「ティアラさん……どうしましょう?」

「ま、迷うことはない。大変栄誉なことだ。君ならば支配者エクセリオンとしての実力も申し分ない」


 支配者エクセリオン? いよいよきな臭くなってきた。


「えっと……つまり?」

「君が魔法資源を受け継ぐ者として精霊より認められたということだ」


 つまり……やっかいごとを背負い込めと?


 しかし口には出来ない雰囲気だった。囲んでいるエルフたちやティアラの顔を見る限りすんごい恩賞を与えられたみたいな空気なのだ。


 はっきり言って断りたい……。


「待ってくれ。気持ちはありがたいが……俺はそんなつもりで手を貸したわけじゃない」


 正直な気持ちだし嘘は言ってない。なのに周囲の反応ときたらこの期に及んでなんと無欲なっとでも言いたげ顔をしている。俺の評価が更に上がってしまった……。


「存じております。私利私欲に走る者ならば例え我等を救ってくれた英雄であっても世界樹を託すことはありません」


 こう見えて俗物ですよとゲロしたい。しかし恋人目当てに世界を救いに来たと言えるわけもなく……。


「どうか受け取って頂けませんか?」


 周囲から感じられる無言の圧力……。ティアラなんて我がごとのように喜んでいる。俺はちっとも嬉しくないんだけどね。


「ご存じかと思いますが世界樹を手にすれば貴方の魔力は更なる高みへとのぼり絶大な力を得られることでしょう」


 ご存じないし魔力もないから高みにのぼることもない。つまりメリットなし。むしろデメリットだけが思い浮かぶ……。


「正直に申し上げれば……魔族に世界樹の存在を知られた以上このままとはいかないでしょう……おそらくはまた奪いにやってくる」


 でしょうね……。


 俺もそれは危惧していたが、いつまでもここにとどまるわけにはいかないし、あれ以上の敵が出てきた場合いまのままでは対処できない。力をつける必要性を感じていた。そういうこともあって早々に里を出ることに決めたのだ。


「あの幻影魔法は有効なんだろ?」

「ええ。ですが……」


 ドリュアスが口ごもる理由には察しがついた。チキの例がある以上油断はできない。同じ手が通用するとも思えないが、なんといっても相手はあの悪魔だ。強い上に知恵もまわる。一度破られた結界だけでは心許ないのだろう。


「ん? となると俺に譲渡することで対策になるのか?」

「はい。貴方が支配者となることによって、例え世界樹が奪われようともその力を得ることができなくなるのです――」


 どうもロック的なものが掛かるらしい。鍵が支配者とやらで扉を開けて力を引き出すには精霊と契約を交わした者でなければならないそうだ。


「つまり……俺があの連中に狙われる訳か?」

「心苦しいのですが……そうなりますね」


 その結論を聞いたティアラも笑顔を消す。


「すまん……浮かれていた。たしかにその通りだ……」

「え? いやいやそんなに落ち込まないで下さい。別にその辺は気にしてませんから」

「そう……なのか?」


 俺は頷いた。狙われるなら逃げればいいだけだ。幸い自由に飛び回れるし、俺が逃げ回っているうちに神様の言っていた彼女たちとやらが世界を救ってくれればいい。むしろ囮とか前線で戦う必要がなくなって本望だ。疲れたらエルフたちに匿ってもらえばいいし……。


「俺も今後の対策とか気になってたし……そういう事情なら受け取るよ」


 どっと歓声がわく。まあ喜んでもらえてなによりだ。もしものときはきっちり匿ってもらおう。


「それではこちらに……」


 ドリュアスに誘われるまま世界樹に近づくと光が一層強くなる。


「お手を……」


 いつの間にか世界樹と重なるように現れたドリュアスが手を差し出す。言われるままその手の平に俺の手を重ねた。すると光の奔流が俺の体を包み込むように流れてあたりを覆う――そして一瞬で霧散した。


「……はて?」


 先ほどまで威厳ある顔つきをした精霊が今はきょとんとしていた。何このリアクション? ひょっとして……。


「失敗……とか?」

「いえ……契約は完了しました。たしかに貴方と繋がっている……のですが」


 どうにも腑に落ちない顔の精霊様……。意外に表情が豊かなのだと知った。


「魔力が上手く流れ込みませんねぇ……どういうことでしょうか?」

「俺に聞かれてもなぁ……」


 まさかレジストさんが悪さをしているのではとも思ったが、そういったログは見当たらない。


「う~ん。そもそもお一人で星魔法を行使できるぐらいですし既に限界を超えているということなのでしょうか……」


 そんな馬鹿な。限界どころか赤子以下の魔力と揶揄された俺にはまだまだ伸びしろがあるはずだ。ここが限界なら才能の欠片もないことになる。でも案外当たってるような気もするので辛い。


 しかしドリュアスも困っているようなので俺は努めて平然を装った。


「まあ……出来ないもんはしょうがない。俺は気にしてないから」

「ですがそれでは貴方にとってなんら価値もありません……」


 はたから見たら厄介事を抱えただけなので気が引けるようだ。俺としてはこのまま放置してせっかく守った魔力資源を、魔族に奪われないかと気を揉んでいるよりはましなのだが……そう言ったらますます恐縮された。


「貴方の旅路に少しでもお役にたてればと思うのです」

「そう言われてもなぁ……」


 俺が魔法を使えないのだからどうしようもない……ん?


「俺以外に譲渡するわけにはいかないのか?」

「生憎と世界樹が認めた者しか支配者にはなれません」

「う~ん。支配者とやらは俺でいいから……仲間に魔力を分け与える的なことは出来ないか?」

「それでしたら可能です」


 なんだ。解決じゃん。


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