邪竜降臨 2
空から降り注ぐ火球を浴びてもなおドラゴンは飛び続けていた。
たいした生きものだ。しかし再生が追いつかず、煙をあげながら高度が下がっていく。
「ぎざまぁぁぁぁぁぁ……なにをじだぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」
悪魔は体中から血を吹き出し、血涙を流しながら怨嗟の声をあげた。見た目以上に効いているようだ。落下する岩をぶつけただけだが、そのエネルギーは想像以上だったらしい。
それはほんの思いつきだった。サイコキネシスは強力ではあるが、力具合に無駄があると感じ、どうにか小さな力で大きなエネルギーは得られないかと考えた俺はアポートの特性に着目した。
この念力は千里眼と併用すると任意の場所に物を移動することができた。感覚的には手元に引き寄せる感じなので、なれればどうということはない。なので相手の頭上に質量の大きなものを落とせば攻撃になりえるのではと考えたのだ。
しかし相手は馬鹿みたいに硬い鱗で覆われたドラゴンだ。それ相応のものをぶつける必要があった。そこで思いついたのが大気圏上、つまり宇宙空間に岩を移動してサイコキネシスにより引き寄せて落下を誘導することだ。
思惑は概ね成功したが相当な数の岩を落下させたはずなのに、ほとんど燃え尽きてしまった。サイコキネシスで自由に動かせるサイズではこのあたり今の限界らしい。それでも十分な成果だった。まとが大きかったのも幸いした。
問題があったとすれば軌道修正に思いのほか集中力を使い、俺自身見た目以上に消耗しているということだろう。これでは本末転倒だが再生を得たドラゴンをサイコキネシスだけで倒すのは困難だったので、もしもの思いつきは正解だった。
「ごろずぅぅぅぅ……ぜっだいにごろじでやるぞぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっ!!!!!!!!」
翼を広げて血しぶきをあげながら羽ばたく姿からは想像もできない猛スピードで突っこんでくる。
「まだ動けんのかよっ」
すんでのところでかわすが旋回してすぐに追ってくる。
「しつけえーっ!」
「じねえぇぇぇぇぇぇっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!」
大口開けたドラゴンが黒い火球を飛ばしてくる。ブレスよりも熱量ある火球はサイコキネシスにより遠ざけてもなお肌を焼くような熱を感じさせた。絶対に当たるわけにはいかない。
俺はトップスピードでその場を離れるが、ドラゴンは怨嗟の言葉を吐き出しながら追ってくる。火球をかわすうちに距離を縮められて焦りをおぼえた。
上下左右、逃げる場所はいくらでもあるのに、圧倒的なスピードと巨体が距離を縮め、とうとう俺の背後まで迫っていた。
やるしかない――っ!
俺は急上昇するとそのまま雲に突っ込んだ。
「にがざんぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!」
その巨体は雲すらけちらし俺へと迫る。だがドラゴンの牙が届く前に、俺はまとわりついていた雲を突き抜けた。
目のくらむような陽の光のなかで俺はただ一点を見つめていた。そしてほくそ笑む。
誘導できないならこちらから迎えに行ってやればいい……。
反転した俺は雲を吹き飛ばして現れたドラゴンと対峙した。
「おいづいだぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっじねえええええええええええっっっっっっっ!!!!!!!!」
狂気と興奮で狂乱したザリクの顔が一瞬で青ざめる。
「星がっ――星がっ――ぞんなばがなあああああああああああっっっっっっっっっ!!!!!!!!!」
眼前に迫る巨大な真っ赤な火球を見て両目を見開き絶叫する。俺はその隙をのがさず、全力でドラゴンの巨体をサイコキネシスで押さえつけた。
「ぐううううううううっっっっっっっなんだごのじがらはあああああああああああっっっっっっっっはなぜえええええええええっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!」
「逃がすかよ!」
「よぜっ――やめろっ――ぞれは――星魔法は禁術だぞっ――ぎざまらはまだ世界を滅ぼす気があああああああっっっっっっっっっ!!!!」
「勘違いするなっ――魔法じゃない、超能力だ―――ッッッ!!!!!!!」
暴れ狂うドラゴンを全力で押さえつけ、ついにその巨体は燃えさかる火球に呑み込まれた。瞬間――悪魔の断末魔を掻き消すほどのすさまじい爆発が空を覆った。
間近でその余波を受けた俺の体が紙くずのように吹き飛ばされる。どうにか体勢を立て直した俺が見た光景は黒いしみのないまっさらな青い空だった。




