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魔法じゃない、超能力だ  作者: 一川一
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帰らずの森のエルフ 4


 思い返してみると随分とハードな一日だった。


 我ながらよく生き残れたものだと感心する。しかしこれで転生二日目だというのだから先が思いやられる……。


 今のところ具体的に何をすればこの世界を救う手伝いができるのかよくわからないが、覚醒者とか魔族という存在が深い意味をもっていそうな気がする。とはいえ気がする程度に曖昧な予感だ。


「そう言えば勇者なんて言葉もあったっけ……」


 はっきり違うと言われたので俺は違うのだろう。そもそもそんな器でもないし勇者のようだとたたえられても困ってしまう。逆に考えるとその勇者とやらを探し出して力を貸せばいいのかもしれない。


「でも伝説とか言ってたしなあ……」


 おそらく今はいない存在なのだろう。見つけると言っても手がかりがない。そもそも未だにこの世界の名前すらしらない。知らないことが多すぎてお手上げだ。


「動くにしても……もう少し情報を集めてからかな」


 とりあえずティアラについて行きこの世界について知ることが先決だろう。あとは……。


「この力か……」


 でたらめなうえにこの世界にはない力である以上使いこなすには自分でなんとかするしかない。


 この力を高めていき使いこなすことができれば世界に貢献できることだろう。それはつまり……。


「……叶う」


 何って? 願いが――叶う!


 目的を忘れそうになるほどハードでシリアスな展開が続いていてすっかり忘れていたが、俺には生きる目標がある。死なずに本懐を遂げるにはやはり超能力に頼るほかない。しかしこれ、どうすれば強くなれるのだろうか? 筋トレとか? 


『レベルアップボーナスによりランクアップできます』


 は?


 すると例のウインドウが開き振り分け可能な星が一つ増えていた。


 いつの間にレベルなんて上がったんだ? ひょっとして気絶してたときに上がったのか?


「…………」


 待てど暮らせど返答はなかった。意思疎通がはかれるようなしろものではないらしい。


「まいっか……」


 大事なのはこの星をどちらに割り振るかだ。


「う~ん……」


 悩む、大いに悩む。念力にふれば単純に攻撃方面で強化されるのだろうが、既に過剰なほどの恩恵を受けている。対してEPSは一度もふっていないため、どんな力が強化され解放されるのかいまいちわからない。


「下手にふって使えない能力とか勘弁だよなぁ……」


 そもそもEPSとはなんぞや?


 昔テレビで見かけた超能力者はEPSカードなるものの絵柄を当てていたっけ。でもあれって……。


「――まさかっ!」


 俺はたいへんな思い違いをしていたことに気づた。あれは勘を鋭くするとかそんなちゃちな能力ではない。よくよく考えればそんな半端な能力のわけがない。全然興味がなかったので深く考えもしなかったし調べもしなかったがもしやあれは……。


「透視……なのでは?」


 ありうる。全然ありうる。勘が鋭くなるとかより全然ある。むしろ透視で正解だろう。なんでこんな簡単なことに気がつかなかったのかと、過去の自分の目を覚まさせてやりたい。


「……よし」


 もはや迷いは吹っ切れていた。清々しいほど心は穏やかだ。これ以上過剰な戦闘力を手に入れても使いこなせる自信はいまのところない。そもそも細かなコントロールの鍛錬の方が先だ。だいたい俺は勇者じゃないし、本来サポート的な役割なはずだ。うん。そうに違いない。吹っ切れた。本当に吹っ切れた。心は穏やかでやましい心など微塵もない。


「てやっ!」


 別にかけ声なんていらないが、ソシャゲのガチャをまわす気分で気合いを入れてEPSに賦与した。


『千里眼が解放されました』

「しゃあああああっっっっっっ…………あっ? 千里眼?」


 一瞬なんのことだかわからなかったがそれもすぐに理解する。


「これは……」


 望んだ能力ではないものの……これも十分に禁忌される力だ。


 おそらくこれを使えばあらゆる場所を覗き――否、偵察できる。


 えらい能力に目覚めてしまった。これはもうとんでもないことだ。空を飛べるようになったときよりも感動している自分がいた。


 ガチャ運はないがこっちはあった。ガチャ運のなさを逆恨みして運営を批判するようなツイートをした過去の自分を反省して心を入れ替えようと思う。


 それにしても夢が広がる――じゃない。求めていた情報が一気に手に入る。とはいえ……。


「まずは使いこなせるようにならないとな……練習、練習っと」


 ちらりと居間の先のドアを見る。


「おお……」


 まるですり抜けたかのように景色は居間から廊下へとかわった。廊下の先には対面するようなドアが見える。


 さてどちらを覗――観察しようか……。


 ふと律儀にドアを通ることもないなと思い壁を通り抜ける――成功。


「げっ」


 随分と散らかった汚部屋だった。なんだかよくわからないガラクタであふれている。


「ここは……チキの部屋だな」


 断定するのもアレだがチキが着ていた服と同じものが脱ぎ散らかされてるし間違いあるまい。よく見れば下着まで落ちている。


「Tバックだと? ま、丸見えじゃないか――意外と下着は大人っぽいな……」


 はっ――いかんいかんっ!


 思わずチキの小さなお尻に食い込む下着を想像してしまい頭を振る。


 チキの下着に欲情するなんてあってはならい。あんなアホな妹的少女は俺のストライクゾーンから外れているはずだ。


 正気を取り戻した俺は隣の部屋へと移動した。


「ここは……寝室かな?」


 ベッドがふたつ置いてあるだけの簡素な部屋だった。チキの両親の寝室と考えるのが妥当だろう。


「やっぱいないんだな……」


 まあ千里眼の使用感はつかめたので、家のなかを拝見するのはこれぐらいでいいだろう。 


 自分の目で見ている感じとかわらないが、どことなく映像っぽさも感じる。違和感はないが肉眼で見る風景とは少し違って見えた。とはいえ些細な違いだ。とくに支障があるわけでもない。千里眼の優秀さは実証された。


「さて、どうすっかなあ……」


 チラリと玄関に目を向ける。そのまま視界を外へ。そして上空に目を向けると浮遊したときと同じように上空から地上を見渡すことができた。


 小川発見……。


「たまたまだよ……たまたま」


 いったい誰に言い訳しているのが自分でもわからないが、やましい気持ちなど決してない。偶然見つけてしまっただけだ。断言できる、偶然だ。


 千里眼の視界範囲とかそういうのを確認したかっただけだ。そうなのだ。それにもうすぐ日が沈む。辺りは暗くなりつつあるし、上空から里の様子を見渡して異変がないかパトロール的な……。


「ん?」


 先ほどから感じていた漠然とした違和感が一気に増すと、視界を地上へと降ろした。


 ここが異世界であろうと倫理観はある。だから覗き見なんてちょっとした冗談のつもりだった。


 しかしいま覚えた違和感の正体を知るために俺はあえて他人の家を覗き見した。


 一軒覗くとその隣の家へ……そしてまたその隣の家へ……。


「なんだよこりゃ……」


 ひとっこひとりいない空き家の床には乾いた血のあとだけが残されていた……。



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