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兄弟

翌日。

間宮くんは学校を休んだ。


「頭痛が酷いらしい」

中空くんは学校で顔を合わせるなりそう教えてくれた。


「やっぱり昨日のアレのせいかなあ」

私は自分へのダメージが少なかった分、彼に負担がかかったのではと心配していた。

「どうだろうなあ、初めての事だらけで良く分かんねーや」

彼は頭をガシガシとかいて、面倒くさそうにため息を吐いた。


「ま、休めば体調も戻るだろ。焦って話す事でもねーし。」

「そうだね」

「けどなあ、なんか引っかかるんだよな」

「何が?」

独り言のように言った彼の一言が気になって、詳しく聞こうとしたのだけれど

「いや、なんでもない」

と、変にアッサリ誤魔化されてしまった。


まだ昨日聞いた話を消化しきれていない私は、それ以上踏み込むのをやめた。



昼休み、うつらうつらと眠気と戦いながら授業を受ける。

「……で、この数式をこれに当てはめると……」

先生の声がいつのまにか、聞き覚えのある声に変わる。





「ーーーというワケだ。分かったか?」

「……え、なんでそうなるの?」

「お前なあ」

はあ、と盛大なため息をつき、目の前の彼は頭をガシガシとかいた。

「寝ぼけてるんじゃないだろうな?」

「真面目に聞いてる」

「じゃ、もっかい話すから聞いとけ」

こうして、自分が行けない間の授業の補講を彼が毎日してくれるのだけど


「さくらは数字にめっぽう弱いから、教えるのは一苦労だろう」

途中、兄が笑いながら紅茶を持ってきてくれた。

「全くだよ。どこが分からないのかも分からない始末さ」

「仕方ないじゃない」

「いや、お前は医者の娘だろ……」

「そんなの関係ないって」

ぶーぶーと言い合う二人を見て、穏やかに笑う兄は

どこかで見覚えのある整った顔立ちでーーー


「じゃあもうフリッツに教えてもらえ!」

「そうする」

「おいおい、俺は忙しいんだ」

ふくれっ面の二人を兄のフリッツがなだめていると、遠慮がちにドアが開いた。


「……俺も、勉強教えてほしいな」

「ん?いいぞカイ。お前もこっち来い」

フリッツみたいに賢くなって家族を支えるんだろ、と目の前の彼ーーリンは笑って

隣にちょこんと座った少年の頭を撫でた。

そう、彼は私の弟でーーー





「……おい、さくら……起きろってば……」

こめかみを何か棒で突かれているような感覚がして

「ん……私は起きてるよ」

「嘘ばっか、お前白目むいてる」

「えっ」


ガバッと上半身を起こすと、教壇に立った先生と目があった。

「お、目覚めたようだな。寝起きついでにこの問題を解いてみろ」

「え」

みんながクスクスと笑う中、隣では聞き覚えのある盛大なため息が聞こえた。


「なーにが起きてるよ、だ」

「……夢の中でも勉強してたよ」

「は?」


それ以上、私は何も言わず

軽く目眩の残る頭で必死に黒板の問題を解いた。





「ーーなあ、もしかして」

授業が終わるなり、中空くんが話しかけてくる。

「さっきの夢って……」

「うん」

「マジか」

「だから言ったじゃん。夢の中でもリンと勉強してたって」

「何それ」

彼はキョトンとしてこちらを見ている。


「え、覚えてないの?」

「知るかよ」

「なんだ、てっきり中空くんは私よりたくさん思い出してるから知ってるかと思ったんだけど」

「そんなワケねーだろ」

「ふうん」


このやり取りを終始聞いていたメイが、肩を震わせて笑いをこらえている。

「ちょっとメイ、何笑ってんのさ」

「いやだってちょっと……いつの間にそんな仲良くなったのかと思って」

違和感なさすぎ、と言われて二人で顔を見合わせる。


「これって……運命?だったりして」

「まさか」

「冗談」

メイの冗談に二人して同時に反応してしまい、さらにメイの笑いを誘う。


「もう、メイやめてよ」

「だって…」

そう言いながら笑いの止まらない彼女を放置して

中空くんは帰り支度を始めた。


「帰り、タクミのところ寄るから」

「うん、お大事にって伝えておいて」

「ん。了解」


そう言って彼はサッサと教室を出て行った。

私たちも帰ろうと席を立った時、制服のポケットが震えた。


誰だろう。

何気なくスマホを手に取り、ディスプレイに表示された名前を見て

思わず声に出してしまった。

「……タケル、くん?」

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