幕間 ドラゴンさんのいる街とは。
8/25 本日三話目
ドラゴンさんの仲よくしている街の名前はザイドラという。
元々は50名ほどしか住んでいなかった小さな村だったが、ドラゴンさんが住まうようになってからというもの村人が公爵夫人になったり、貴族が訪れるようになったりと大きな変化を伴った街だ。
竜が守護する街だとか、竜に愛された街だとか、竜の街だとか、そういう呼ばれ方がされている。
昔では考えられなかった発展が、そこにはあった。
そのザイドラは国内、いや世界でも類を見ないほどにドラゴンとのかかわりが深い街となっている。
ドラゴンさんたち家族。
ドラゴンさんの両親。
しまいにはその友人である者は、街に居座って竜の道場で師範などをしてしまっている。
竜に縁が深い街として広まったこの街には、多くのドラゴンが人型の姿でさらっとまぎれてきたりもしていて、街を歩けば必ず竜に関するものにぶち当たるといった他に例を見ない街である。ドラゴンさんたちの像があるだけではなく、街として発展させていく中でドラゴンさんたちをモチーフにした装飾の彫られた建物が沢山刻まれているのだ。
それは街の者達がドラゴンさんたちの事を愛し、慕っている証であると言える。
彼らにとってみればドラゴンさんは良き友人で、かわいらしいドラゴンである。それはドラゴンさん一家全てに対して言えることで、彼らはドラゴンさんたちのことを知り、ドラゴンさん達の事を近所のお隣さんと言った認識で接している。
それは村から街に変わった今でも変わらない。
街の長となった、ドラゴンさんが長2号と呼ぶ青年もドラゴンさんたちのことを大切に思っている。ドラゴンさんたちは良き隣人で、これからも仲よくしていきたい存在である。何よりドラゴンさんたちの影響で村が街へとなり、美しい貴族令嬢をめとる事が出来た幸福を彼は感謝していたので、ドラゴンさんのことを『幸福のドラゴンさん』などと時たま言っているぐらいだった。
……特に深い意味もなく言っていたこの『幸福のドラゴンさん』という言葉が後世に残り、言い伝えのようになっていくのはまだドラゴンさんも長2号も知らない未来の話である。
新しく街へ住まい始めた移住者は最初はドラゴンさんたちに怯えていたものの、前から此処に住んでいる街の者たちからドラゴンさんの話を聞くうちに親しみを感じ、いつしかドラゴンさんの姿を見たりするのを楽しみに思うようになっていた。
店をやっている者達なんてドラゴンさんたちが家に買い物に来るととてもうれしそうにそれを宣伝する。そうすれば、ドラゴンさんの購入したものを街の多くは購入するのである。ドラゴンさんは知らないことだが、こうしてドラゴンさんは時たま流行を作っていたりするのであった。
ドラゴンさんたち一家がたまに出ている劇場は大人気である。ドラゴンさんもよく見に来るので、皆、劇をよく見るようになっている。そういうわけでドラゴンさんの影響か演劇もとても活発になっているのであった。
この街はドラゴンさんが人間の子を拾った影響で、村から街へとなった。それもあって、ドラゴンさんたちというのはこの街にとって特別な存在なのであった。
また他の場所から見たこのザイドラも特別な場所である。
国にとってみれば、ドラゴンさんたちが大切にしている街は守らなければならない場所である。何かあればドラゴンさんがどんな行動を起こすかわからないので、とても大切なのだ。
ドラゴンさんに愛されている街は観光地としても栄えている。
ドラゴンさんたちが人型で街を普通に歩き、ドラゴンさんたちにまつわるものが沢山ある特別な街。
『竜に守護されし街・ザイドラ』
その名はずっと先の未来まで続いてく。
竜に守護され、竜が歩き、竜に愛された街。
そして、そこに住まうのは竜を愛し、竜を慈しむ人ばかりだ。




