ドラゴンさんの子育て日記73
新聖暦897年 茄月の一日
今月は英雄を祀ったお祭りに参加する予定なので、その場所へともう少ししたら向かうことを決めている。
我は祭りというものが楽しいというのを知ってしまったので、その祭りがどんなものなのか今から楽しみだったりする。あまりにもうずうずしていたらラオに「またどこかぶつけたりしないように」なんて言われてしまった。
新聖暦897年 茄月の五日
街からは何人も王都の竜の祝祭の手伝いなどに向かうものが多くいた。今年は王都の竜の祝祭には参加できないので、街のものたちには王都の竜の祝祭がどんなものなのか後で教えてもらうことにした。
新聖暦897年 茄月の七日
英雄をまつったお祭りのことを子たちが話している。子達もそういう祭りに参加したことはないので、楽しみなようだ。はしゃいでいる我が子たちはなんと愛いことか。
その様子を見ているだけで我は自然と口元が上がってしまう。やはり愛しい子たちには笑顔でいてほしいものだ。
新聖暦897年 茄月の十日
母君と父君は王都の竜の祝祭の方に向かうらしい。お土産も買ってきてくれるといってた。我らもそろそろ英雄のことを祝う祭りに向かうことにする。
初めて行く場所だが、ラオがしっかり場所などを把握しているらしい。流石我の番である。我一人なら知らない場所に向かうと違う場所に辿り着いたりしてしまいそうなのに。
新聖暦897年 茄月の十二日
空を飛ぶのは楽しい。ちなみに竜体の我とラオの上に子達とルアノとミカガネが乗っている。ミカガネは自分で飛んで移動が出来るが、竜がそんな並んで飛んでいたら騒がしくなるかもしれないことを配慮して我とラオだけだ。
まぁ、我とラオだけでも目立つらしいけど。
新聖暦897年 茄月の十四日
乗っている我が子達のことも考えて、時折休みながらの移動だが、家族で出かけるというものはなんと楽しきことか! 我はこうやって家族たちと家族旅行が出来る事実に喜びを感じてならない。
それにしてもはしゃいでいる我が子たちは愛いものよ。
新聖暦897年 茄月の十五日
目的地の近くにたどり着いた。流石にその開催場所に直接降りるのは騒がしくなりそうなので、少し離れた場所で人型に戻る。
我はどんな祭りなのだろうかと、わくわくしておる。
新聖暦897年 茄月の十六日
英雄をまつるお祭りの開催場所にたどり着いた。
街は騒がしかった。高位竜が飛んでいるのを見たかららしい。って、我らのことではないか。
確かにこのあたりまで最近は飛んでくることもなかったが。なんでもこの街では高位竜を見れると幸せになれるとかいう言い伝えのようなものがあるらしい。
ならば、この街の人々は皆幸せになれるのだな。我のことがっつり直視しておるし。
新聖暦897年 茄月の十八日
皆で大部屋に泊っている。ベッドの上で子たちと共に眠るのもなんと幸せなことか。それにここは初めて訪れる街なので街を見るだけでも楽しい。
ルグネを拾うまでの我は人の街というものに関心がなかったからこうして街に下りることもなかった。だからこそ、人の街というのは何処も新鮮な気分に感じる。我は昔は人の街なんてどこも一緒だろうと思っていたけれど、違うのだなとこの年にして知ったのだ。
やはり、ルグネを拾って良かったなと思ってぎゅってした。
街を家族で見て回るのも楽しい。祭りがあるからか人の数は多いけれど、それはそれで楽しいものだ。
新聖暦897年 茄月の二十日
お祭りが開催した。宿の者に聞いたが、この祭りの特徴はその英雄の恰好を模したものがいっぱいこの街にあふれたりしたり、英雄の好物がある赤い果実だったようでそれを投げてぶつけて、祝福するといった謎の行為がなされるらしい。
祭りというものは色んなものがあるのだなーと知れて、我はなんだかわくわくしている。ラオにははしゃぎすぎないようにと言われてしまうし。
新聖暦897年 茄月の二十二日
英雄の恰好を模した者がちらほら見れて楽しい。英雄は過去の存在なので、正確に伝わっているわけではないようだ。色んな通説があるらしくて、そもそも性別さえも説があるようだ。
実は男装していた女性ではないかみたいなのもあるらしくて、男女ともの恰好をした英雄の姿を模したものがいて、そういうのを見るのも楽しかった。なんというか、こういう祭りで我ら家族もそういう格好をいつかしてみたいなとか思ったり。ルグネは「やってみたい」と言っていたが、ラビノアとシノウールは、
「兄さんと母さんがやりたいなら」とちょっと乗り気ではなかった。
街の者に聞いたらこうして英雄の恰好を模した格好をするのは、こすぷれなどというらしい。なんかそういう催しが他にもあるならば参加してみようと決意した我である。
新聖暦897年 茄月の二十四日
今日は家族で英雄に関する劇を見た。やはり劇と言うものは楽しいものだ。あとは英雄に関する話なので、とても迫力があって我は英雄が好きになってしまった。英雄に関する本を購入した。
住処で読むのだ。
新聖暦897年 茄月の二十六日
あっと言う間に祭りが終わってしまった。楽しかったので我は満足である。
新聖暦897年 茄月の二十八日
戻ることになった。竜体になった我の上に何人かが乗り、びゅっととんだ。
空を飛ぶのは楽しいものである。




