幕間 ドラゴンさんのいう2号の兄と妹とは。
さて、ドラゴンさんが親しくしている村はリブラ王国に所属している。
その国の長であるドラゴンさんのいうきんきらきん2号――キジシサー・リブンには二人の子供がいる。
ドラゴンさんのいう2号の兄と妹である。側妃の子も含めれば子は他にもいるが、王妃の生んだ王の子はこの二人だけであった。
兄の名はオーカス・リブン。
妹の名はサビアノーヤ・リブン。
美しき銀色に輝く髪を持つ、見目麗しい王子様と王女様である。
この二人は、例にももれずドラゴンさんに名前を覚えられることなどなく、最近では2号の兄と妹といった、知らない人が聞けば2号と呼ばれる国の王の兄と妹と勘違いされそうな呼び名をしている。ドラゴンさんは2号の子のとつけるのが嫌になったのか短縮してしまったのだ。相変わらず名前を覚える気が皆無なドラゴンさんに子供達は呆れていた。
とはいえ、オーカスとサビアノーヤはドラゴンさんにそんな呼び名をされようとも気にしていなかった。というよりも、高位竜であるドラゴンさんに名前を憶えられていなくても認識されているというだけでも満足していたのだ。
普段のドラゴンさんの様子を見ていればそうは見えないかもしれないが、人間からしてみればとても危険な存在である。本来なら簡単に交流など持てない存在だ。
そのことをきちんと知っていて、自分たちが王族であろうとも、ドラゴンさん達の方が立場が上なのだと把握している。何よりオーカスもサビアノーヤもドラゴンさんたち家族のことが好きなので細かい所は気にしていなかった。
二人は王子で、王女だ。王族という立場であればあるほど、対等な立場の人間と言うのは少ない。そういう立場にいるのだから仕方がないと言えるのかもしれないが、それでも自分をただの一人の人間として扱ってくれる人が一人か二人はいてほしいと思うものである。
ドラゴンさんたち一家は、彼らが王族であろうと気にしない。高位竜であるドラゴンさんたちはそもそも王族であろうがかしこまることなどありえない。そしてその子供たちも、ドラゴンさんに習ってか特に権力と言うものを気にしない。人間であるルグネだって、オーカスやサビアノーヤの事をお兄ちゃん、お姉ちゃん扱いである。
出会った頃と違い、王族というのを理解したルグネはかしこまった態度をした方がいいか聞いたこともあったが、人前以外では気にしなくていいと答えられたためそのまま変わらない態度を続けている。
一人の人間として扱ってくれる。そして王族であろうとも彼らは気にしない。ルグネは人間であるが、ドラゴンさんに育てられたからなのか、はたまた才能があるからなのか、あの年ごろにしては驚くほどに魔法を使いこなし、剣を振り回している。
ルグネは人間と関わりあいを断っているわけではないが、人の街で生活をしているわけではない。
ルグネが学園に入学して、人の世界で生活を始めたらその存在は目立つだろうとオーカスは思っている。もし何か大変なことに巻き込まれそうになったら助けようとも考えている。そんな助けはいらないかもしれないが。
「お兄様、もうすぐお兄様は学園に入学ですわね。どんな学園か教えてくださいませ」
「もちろんだよ」
オーカス・リブンは今度の流月から学園に入学する。そして六年間通う予定になっている。王太子であるオーカスの側近候補たちも同時期に入学することになっている。
オーカスも、オーカスの二つ年下のサビアノーヤも学園生活というものを楽しみにしていた。王城で暮らしてきた王族たちが学園都市で寮生活を送るのだ。今まで経験したことのないことを経験出来ることを二人は楽しみにしている。
「お兄様、私も二年後には入学しますわ。そして三年後にはルグネたちも。楽しみですわね」
「ああ。楽しみだな」
オーカスもサビアノーヤもドラゴンさんたちの子供たちが学園都市に入学することに前向きなことを喜んでいた。
二人にとってルグネ、ラビノア、シノウールは弟や妹のように感じている存在だ。高位竜であるラビノアとシノウールにそういう扱いは恐れ多いことかもしれないが、そういう呼び方を二竜もしてくれていた。
オーカスはいずれ王位についたとしても、ドラゴンさんたちを利用するなどという考えはなかった。そんな考えがあれば、ドラゴンさんに殺されることは目に見えているし、何よりドラゴンさんのことを慕っているのだ。
ドラゴンさんたちを利用すべきだとおろかに考える存在は少なからずいる。その膿を少しでも減らすためにオーカスは動く気満々だった。
次にドラゴンさんといつ会えるかは分からないが、2号の兄と妹は彼らに会えることを楽しみにしている。




