ドラゴンさんの子育て日記㊽
新聖暦894年 守月の一日
また竜の祝祭が来月行われる、という事で村の者達がバタバタしていた。また今年も我らに関する劇をやったりするらしい。
新聖暦894年 守月の四日
今、ルグネは六歳である。魔法を教えることはしているのだが、剣などの武器の扱いは教えないのかと母君に聞かれた。人間だと、剣などを幼いうちから教えたりするそうなのだ。
剣などを教えるなどと考えた事はなかった。我らは竜であり、あまりそういうものを使う事はしないから。でも人型にちょくちょくなっていたラオは剣も出来るらしく、ラオが「俺が教えようかな」と言っていた。
新聖暦894年 守月の十日
ラオがルグネに剣を教えている。剣以外の武器でもよかったのだが、ルグネが「剣がいい」と言っていたので、剣を教える事になった。教わる必要がないのだが、シノウールとラビノアも教わりたいとのことで、一緒に習っている。……何だか我だけ仲間外れのようで寂しかったので、我も一緒に習う事にした。
新聖暦894年 守月の十二日
それにしても、剣までもびっくりするぐらい扱えるラオはすごい。我の自慢の番だ。我、新たな一面にときめいた。
新聖暦894年 守月の十五日
ミカガネが子達を見てくれているので、ラオとでーとするのである。ラオと過ごす時間もかけがえのない。
新聖暦894年 守月の二十日
ライラから手紙が来た。……ライラがまた妊娠したらしい。人間というのは本当に竜より子が出来やすいのだと感心してしまった。まぁ、仲が良いという事でよいだろう。それにしてもまた子を妊娠したという事は、イラフに弟か妹が出来るという事。わが子がもう一人増えるようなものである。我は嬉しい。
新聖暦894年 守月の二十六日
今日もパシャパシャする。
我が子達は可愛い。もちろん、ラオやミカガネ、我自身もとっている。写真というものは良いものである。特に人の子であるルグネなんて一瞬で成長してしまうようなものなのだ。きっと大きくなってもルグネは、とてもかわいいと思うが、今のルグネも目に焼き付けておきたいのである。
新聖暦894年 威月の一日
今月は、竜の祝祭が行われる日だ。我はわくわくしている。一昨年、去年、今年と、今回で三回目だが、毎回全てが同じわけではなく、祭りというのは楽しい。何故、我は今までこんなに楽しいものを見てこなかったのかと、そんな後悔をするぐらいだ。
新聖暦894年 威月の七日
我は詳しく知らないが、竜の祝祭で得たお金はラオがしっかり管理していて結構たまっているらしい。普段の生活ではお金はあまり使わないが、ためていたほうが便利という事で、金持ちになっているとラオが満足気に言っていた。
新聖暦894年 威月の十一日
今年もライラは竜の祝祭に来れない。また妊娠したからだ。……残念である。是非とも、ライラとも回りたいのに。来年、再来年になればライラも来れるだろうか。しかし、もしかしたらぽんぽん子供が出来て無理な可能性も……。そう考えると残念だった。
という事で唸っていたら、村に来ていた商人に「寧ろ王都で竜の祝祭を行ったらどうですか?」と提案された。傍で聞いていた村人達も賛同している。我は商人がどうしてそんなことを言うのだろうと疑問だったが良い考えだと思った。
あとからラオに「祭りは利益を生むから」と商人が意気揚々としていた理由を教えてくれた。
それで来年か再来年には王都でも竜の祝祭を行おうという事で、村人たちと商人で話し合いが行われる事が決定したようだ。
新聖暦894年 威月の十五日
我が子達は、一生懸命剣の練習をしている。練習に使っているのは危ないから実際の剣ではないけれど、様になっている。我も、少しずつ上達しているが、我は魔法の方が好きである。でも、我が子達に「お母さんすごい」と言われるために我は頑張る。
新聖暦894年 威月の二十日
今日から竜の祝祭が行われる。今回は2号の子達は来ていない。この前、学園都市に行くという遠出をしたのもあって、今回はこないそうだ。今年が三回目というのもあって、遠くからも祭りを見に来ている者が多くいたようで、我、雄に話しかけられた。ラオに威嚇されて去っていったけれど、我が竜だと知らないものも結構祭りには来ているのだ。
雄に話しかけられてもどうとでも出来るが、ラオが不機嫌になるのは嫌なのでもう少しどうにかしないとと我は思った。
新聖暦894年 威月の二十二日
初日にラオが威嚇したおかげか、今の所、我もラオも声をかけられることはない。我は美味しい屋台の料理を食べれたり、劇を見れたりして大変満足である。
ラビノアには「母さんが一番楽しんでいるし」とあきれた目で見られた。でもそんな目で見ているラビノアもちゃっかり焼き鳥を持ってたりするので、ラビノアも十分楽しんでいる。
新聖暦894年 威月の二十五日
今回の竜の祝祭もこれで終わりである。
何だか寂しい気持ちになるが、また来年の開催を楽しみにしよう。
王都でも本当に竜の祝祭をやるならば、我はそれも行きたい。




