ドラゴンさんの子育て日記㊲
新聖歴893年 新月の一日
年が明けた。ルグネももう五歳である。ルグネも大分大きくなった。我が子の成長は早いものである。
今年はルグネの魔力検査を行う年だ。ルグネの将来を決める重要なものなのだ。それを思うと、今年は特別な年な気がする。
今年も我らは村の新年のお祝いに参加する。村の者たちは我らのことを快く受け入れてくれた。今年はなんか村の外から来た連中もいた。我らのことを見にきたらしい。わざわざ新年のお祝いに棲家を離れる者もいるのかと不思議な気分になった。
村の者達が、竜の祝祭のこともあってこの村が少しずつ有名になっていった結果だといっていた。辺境の村が有名になれたのは我らのおかげとか言われたけれど、我らはお世話になってる身であるし、礼はいらぬ。
お祝いはとても楽しいので、パシャパシャと我はする。思い出がこうして形として沢山増えていくことが本当に我は嬉しいと思ってならない。
来年もこうやって楽しい日々が続けられればいい。我はそんな風に願ってならないのだった。こうして、ラオが傍にいて、子たちが笑い、ミカガネが微笑み、母君と父君もいる生活が我は今とても気に入っている。
新聖歴893年 新月の五日
家族皆で写真の整理をする。ルグネとラビノアとシノウールがそれぞれとった写真もまとまっている。我の写真と共に「大好き」という文字を書いてくれた子達に我は感激した。愛い。びっくりするぐらい愛い。我は、母として子達のためならなんでもできる気がする。
新聖歴893年 新月の七日
ライラに魔力検査したいと手紙を送っている。きんきらきんに伝えてくれと。我、人の子の魔力検査をする道具とかよくわからぬからな。ラビノアとシノウールもはやくはやくとせかしておるし。ルグネも早く検査したいといっておる。
新聖歴893年 新月の十日
ライラから手紙の返事がきた。きんきらきんの書いた手紙もある。今月中には手配できるという話だった。今月中か、早く来ぬかな。
新聖歴893年 新月の十二日
友人のことを夢に見たので、ラオとミカガネにその話をする。友人は有名な人の子であったからラオやミカガネも友人のことは噂として知っている。ラオは我のことをよく追いかけていたから友人とも会ったことがあったはずだ。
でも我の口から友人のことを誰かに話すのは珍しいことだった。我にとって友人は大切な友であった。友人の名はフェスタリア。《紅蓮の魔女》、《破壊の魔女》などとこの大陸で言われていた我の友人。もう死んでしまった我にとってずっと心に残っている友人。
その友人は我と共に空を飛んでいた。ルグネも、同じように出来たら嬉しいなどと我は思っている。
新聖歴893年 新月の十七日
母君と父君が子たちに会いにきている。母君も父君も孫が可愛くて仕方がないようで色々狩りで手に入れたものとかくれる。
新聖歴893年 新月の二十日
家族ででかける家族旅行なるものに行こう、という話で計画しておる。王都にいくのとはまた違う場所にいくのである。ライラにも近いうちに会いにいく予定だが、王都以外にも我は興味が出ている。家族旅行なるものはとても楽しいと本にも書いてあったものだ。家族で過ごすだけでも楽しいのだから家族旅行が楽しくないわけがない。どこにいこうか、と我はラオが調べてくれた一覧を見ながら探している。皆でどこ行きたいか話し合うのだ。もちろん、ミカガネも一緒に行くのである。
新聖歴893年 新月の二十五日
きんきらきんが来てくれた。魔力検査がようやく出来る。なんか魔力検査は水晶を使うらしい。どういう原理か分からないけれど、触れたら魔力属性とかわかるそうだ。……我もちょっと触りたくなったけれど先に触らないようにいわれた。我とかラオの魔力多分多いから水晶壊れちゃうかもしれないらしい。我、ちょっと触ってみたかった。残念だが、ルグネの魔力検査を見守ることにした。
ルグネが水晶を触ったらすごく光った。色々な色に。きんきらきんが目を見開いている。ルグネは目をぱちくりさせて、何が起こったのか分からない様子だった。
結果としてルグネ、魔力の属性全部持っていて、魔力多いらしい。ルグネ凄い。きんきらきんがなんか興奮していた。ルグネ、凄い。流石我のルグネ。ラビノアとシノウールも自分のことみたいに喜んでいた。
新聖歴893年 新月の二十八日
ルグネに魔力があって、魔法が使えそうだということのお祝いを村の皆も含めてした。皆でわいわい騒ぐの我、好き。
そういえば、人間の子は五歳の魔力検査なので村にいる五歳程度の人たち(五歳を超えていても辺境のため魔力検査できなかった子もいたらしい)も検査してきんきらきんは帰っていった。残念ながら村の中には魔法が使える人の子はいなかったらしい。
新聖歴893年 新月の三十日
もう月が終わる。来月になったらルグネに本格的に魔法を教えるのである。




