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幕間 ドラゴンさんの親しい人間の少女とは。

 ザイドラ村の近くに住まうドラゴンさん。

 ドラゴンさんの家族構成は以下の通りだ。

 真っ白な鱗を持つ白竜のドラゴンさんに、ドラゴンさんの番である黒竜の旦那さん。

 そして、ドラゴンさんが拾った人の子に、ドラゴンさんの実の子である二匹の子竜。

 あとは、子竜たちの面倒を見てくれる一匹のドラゴン。

 そして……人の身でありながらドラゴンさんの子達の姉のような立場にいる人間の少女。

 さて、ドラゴンさんの親しい人間の少女ははじめ、ドラゴンさんの拾った人の子を育てるためにドラゴンさんが無理やり連れだしてきた。だからこそ当初少女はドラゴンさんの事を警戒していた。爪でひっかけて棲家に連れてこられたのもあって恐怖心に支配されていたのは当然の事だと言えただろう。

 そもそもザイドラ村で普通に過ごしていた少女は、魔物と戦う術も知らず、ましてやドラゴンと対峙したこともない当たり前にいる村娘だった。

 そんな村娘が恐怖心を感じるのは当然である。

 少女は恐怖心に包まれていたが、連れていかれた先で人の子供がいて、そこは子供が育っていける環境ではなかった。

 その事実を理解した時に、少女は怒った。圧倒的な力を持つドラゴン相手にだ。恐怖心がなくなっていたわけではなかった。それでも、赤子をそのまま放ってはおけないと思った。

 怒ったあと、しまったと少女は思った。

 少女は自分は殺されるだろうと正直考えた。

 けれど、殺される事などしなかった。

 そのドラゴンさんは泣いていた。大きな瞳をうるうるさせてなぜか涙を浮かべていて。少女はドラゴンさんを泣かせてしまったとぎょっとした。まさか泣くなんて考えてもいなかった。

 ドラゴンさんを慰めてそれから、少女はドラゴンさんと仲良くなった。

 ドラゴンさんは天然が入っているのか、世間知らずなのか色々と知らない事が沢山あった。人間の子の育て方なんて知らないのに、人の子を育てようとしているドラゴンさんの力になろうと少女は決めた。

 最初はドラゴンさんと、少女と、人の子だけだった。

 そこから、巣穴の住民は増えていく。

 まずは、ドラゴンさんの旦那さん。

 少女はドラゴンさんが「弟妹を作る」と宣言した時、酷く心配した。なぜならドラゴンさんは抜けている面が強く、もしかしたら気持ちのない相手と子作りを始めるのではないかと思ったからだ。人間とドラゴンでは色々と違うのかもしれないけれども、それでもドラゴンさんと仲良くなった身としてみれば、ドラゴンさんに気持ちが通じ合った人とそういう行為はしてほしいと思ってしまうのだ。

 結局やってきたのは、ドラゴンさんをずっと愛していた存在だということでほっとした。何より、ドラゴンさんはその旦那さんを大切に思っているのは少女の目から見ても見て取れた。

 貴族ともめたりしたのは緊張したけれど、その過程で少女はドラゴンさんがきんきらきんと呼ぶ存在と出会った。ただの村娘であったというのに貴族と出会い、貴族に告白されるなんてありえないはずだった。それがドラゴンさんとかかわったことで貴族とも知り合いになり、この国にとってもドラゴンさんと親しい村娘として無視できない存在となってしまっているのだ。

 貴族と少女は付き合いを始めた。身分差もあるけれども、それでも少女はきんきらきんが好きだと思った。これからどうなるかもわからないけれども、それでも好きな人が自分を好きだと言ってくれるから——という心境である。もちろん、ドラゴンさんが少女を傷つけると許さないと告げているのもあって普通の村娘が貴族に遊ばれるのとはわけが違うというのもあるのだが。

 それからドラゴンさんに子が出来て、少女はその子竜たちにとっても姉のような存在になった。そして、子竜たちを育てるためにもということで子竜たちの面倒を見るためのドラゴンもやってきた。

 少女は正直不思議だった。

 自分がドラゴンさんたちに家族として認識され、大切にされていることが。

 なぜなら少女には特別なことも何もない、本当にただの村娘である。そんな自分が彼らと仲良くなっていくなんて少女は想像できていなかった。

 ドラゴンさんたちが少女を大切に思っているように、少女もドラゴンさんを大切に思っている。少女には何の力もないけれども、それでもドラゴンさんたちが少女を家族と思って、そうして接してくれる事が本当に嬉しいと思っていた。

 少女は、最初であった時怯えていたけれども、あの時巣穴に連れて行かれたのが自分で良かったと思っている。今のドラゴンさんたちと仲良くやる生活が本当に楽しくて、彼らと家族になれるのが嬉しいのだ。

 ………だけど、少女は未来の事も見据えている。

 少女は、きんきらきんとの未来も考えている。だけれども、その手を取るという事はこの憩の場から離れるという事である。だから、少女は、どのような未来を選ぶべきなのかという点を現在悩んでいるのだった。





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