ドラゴンさんの子育て日記⑲
新聖歴890年 宵月の一日
我の子達は今日も可愛い。見ているだけでニマニマしてしまう。
あとラオとの交換日記を読んでいると、我と子達の事ばかりが書かれている。いや、我も大体似たようなものなのだが。でも我への気持ちとかを、書かれると読んでいて恥ずかしいのである。
新聖歴890年 宵月の四日
我とラオの小さな像は土産物として結構売れているらしい。それで、その売上げの一部とかいってお金くれた。よくわからないが、我とラオの像は売れていて、その一部をくれたらしい。ふむ、よくわからないが、もらえるものはもらっておこう。
人の世界のお金は我はいらないが、ルグネを育てていく上では必要だろうという事でありがたくもらった。
新聖歴890年 宵月の十日
ラオとミカガネが獲物をとってきたり、村に出かけていたので、我はライラと共に子供たちを見ておった。
ライラはルグネを抱っこしながら、「いつか自分も」とつぶやいておった。
ライラもきんきらきんと交尾をしておるだろうから、そのうち出来るのではないかと思う我である。
新聖歴890年 宵月の十三日
きんきらきんから手紙の返事が来た。人の子は、5歳で魔力検査をしてから、魔法を習い始めるらしい。よければ魔力検査の道具を持って五歳になった時にこちらにやってくるといってくれたのでお願いする事にした。五歳か、まだ先だけれども、あっという間に過ぎていきそうだ。
新聖歴890年 宵月の十五日
きんきらきんから手紙が来たので、そのことで皆で話す。
ルグネに魔法の才能があるかが一番の問題だろうが、あった場合、どうしてもルグネを飛ばしてあげたい。というか、我もルグネとお空のお散歩とかしたいのである。考えただけでわくわくする。
だってルグネが飛べるようになったら、我とラオとラビノアとシノウールと、そしてルグネも含めて五人で飛べるという事である。なんという素晴らしい事だろうか。
新聖歴890年 宵月の十七日
ラオと二人で久しぶりに過ごす。ミカガネ達が子達の面倒を見てくれているので問題はない。それにしても我は恵まれておる。子育てというものは、親だけでやると大変だという話だからの。我はこうして手伝ってくれるものがおっていい事だ。
それにしても、子供たちと過ごすのもよいが、こうして番と過ごすのもよい。ラオと二人きりもよいのぉと言ったらラオに襲われた。
新聖歴890年 宵月の十九日
ラビノアとシノウールが少し飛べるようになっていた。なんで自分は飛べないんだろうとルグネが落ち込んでしまうから、そういう場をなるべく見せないように配慮するようになった。
なんで自分には鱗がないの? といわれもしたから、説明していかなければならない。しかしルグネはまだ幼く、説明してもわからぬだろう。いつ、どのタイミングで説明していくべきか、やっぱり悩む。
新聖歴890年 宵月の二十一日
ちょっと飛べるようになったラビノアとシノウールが二人でルグネを抱えて飛ぼうとしていた。慌てて止めた。
ルグネが落ちたらどれだけ怪我をすると思っているのかと。
棲家で少し飛ぶだけとはいえ、危ない。ラビノアとシノウールを怒った。
ラビノアとシノウールが聞き分けが良いから、大丈夫かと思ってしまったけれど、やはり子というものは何をするか分からない。
新聖歴890年 宵月の二十三日
ラオとこの前の事を話した。本当に油断してしまっていたが、子供というのは何をするか分からないという面がある。そういうのをもっと気を付けなければならない。
この場にはライラという人間の雌と、ルグネという人間の子がいるのだ。ラビノアとシノウールが、加減を間違えば、二人は簡単に死んでしまうかもしれないのだ。
新聖歴890年 宵月の二十五日
ミカガネと我とラオで、ラビノアとシノウールに、自分たち竜がどういう生き物か改めて教えた。そして人がどれだけ簡単に死んでしまうかというのも。
もしかしたらこの前の事でもルグネは死んだかもしれないんだと言い聞かせる。
ルグネが我の友人ぐらい魔法が使えるようになれば、別だが、それ以外ではこんなことしていたら万が一の場合死んでしまう。本当にルグネが魔法を使えるようになれればいいのだがと思ってならない。
新聖歴890年 宵月の二十七日
この前怒ったからか、二匹がしゅんとしていた。今度から気を付ければよいといって、二匹を竜体のまま抱きしめた。ラビノアとシノウールも、竜だからそれなりに成熟しているとはいえ、まだ子供なのだ。
ラビノアとシノウールをもっとちゃんと育てなければならない。そう改めて思ったのだった。
新聖歴890年 宵月の二十九日
今月ももう終わってしまう。時が経つのは早いものである。ルグネもラビノアもシノウールもすくすく育っておる。このまま無事に大きくなってくれたら我は嬉しい。




