表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/106

ドラゴンさんの子育て日記⑰

 新聖歴890年 茄月の一日


 きんきらきんが村にしばらくしたらやってくるとライラがはしゃいでいた。

 それにしても人の雄というものはしばらく離れていれば他の雌と交尾をしたりする可能性があると、友人が言っていた記憶があるのだが、きんきらきんもそうなのだろうか。

 そうだったらきんきらきんを小突いてやろう。竜体で小突けば、きんきらきんも怪我をするだろうが、ライラが悲しむのは嫌である。


 新聖歴890年 茄月の三日


 ラビノアとシノウールはルグネの事を「兄さん」と呼んでいる。

 生まれた時から知能のある二体からしてみれば、まだ子供で知能も発達していないルグネの事を兄と呼ぶのには抵抗があったようだが、我が「兄なのだぞ」と言い聞かせていたのもあって最近はちゃんと兄と認識しているようだ。うむ、よきことだ。


 新聖歴890年 茄月の五日


 愛い愛いとばかり口にしていたら、ミカガネに甘やかしすぎたらだめだと怒られた。

 

 新聖歴890年 茄月の七日


 ドラゴンであるラビノアとシノウールは、正直どうにでも生きられる。成体になったら自由に生きるものであるし、長い時を生きるのだから数年とか、十数年とかぶりに再会するとかドラゴン同士の中ではよくあることだ。

 でも、ルグネは……そうではないわけで、幾ら我らが育てているとはいえ、ルグネは『人間』であるのだから後々、ルグネが人の世で生きていけるようにしていくべきであるとミカガネは言う。

 ルグネがどのように生きていくかは自由だが、その選択肢をもっと広げるためにも人の世も知るべきなのだと。ルグネは村は知っているが、そこで生活しているわけでもなく人の世を知らないのは確かだ。

 正直、まだルグネは二歳なのだからそう考えなくてもいいのではないかと思ったが、人の子はすぐに成長するのだからといわれた。


 新聖歴890年 茄月の十日


 我にとっての十年は短い。でも、ルグネにとっての十年は短くは決してない。

 ……拾ってから、すくすくと短い間で変化しているルグネを見ていて、人の子はすぐに成長していくものなのだと理解していたつもりだったけれど、我はまだまだ理解できていないのだろう。

 十年かと思う。

 十年後も我は我のままだし、ラオはラオのままだ。でも、ルグネは、十年経てばそれはもう変わるだろう。ルグネのために選択肢を広げる。それは確かに必要だろう。

 ……考える事が多くて、疲れてきた。


 新聖歴890年 茄月の十五日


 ルグネの将来を考えながら、ルグネを抱っこしていたら舌足らずな声で一生懸命「母さん」と言おうとしているのに気づいてしまった。

 「ママ」と呼んでくれていたのに! ラビノアとシノウールが「母さん」と呼ぶからなのか……と我は複雑な気持ちだ。


 新聖歴890年 茄月の十七日


 子達の将来か。まだ先ではあるが考える必要はある。

 我の時なんぞ、何も考えておらんかった。成体になってからはただ自由に、好きなように生きた。

 他の誰かなど関係なしに、ただ敵は滅ぼし、親しいものとは仲良くする。そんな生活だ。

 ラビノアとシノウールは我やラオと違って人とかかわりながら生きている。

 『人間』という存在が子竜たちにとって大きな存在になるだろう。なら、二体の未来もどのようなものになるのだろうか。

 考えてもわからぬが考えてしまった。


 新聖歴890年 茄月の二十日


 考えすぎていて疲れた。我はそもそも思考する事がそこまで得意ではない。

 考えるより動く方が断然楽であるし、やりやすい。とはいっても考える事は大切だとはわかっている。

 でもとりあえず考え続けて疲れたため、ラオと交尾をしてストレス発散なるものをした。

 うむ、いい発散になった。


 新聖歴890年 茄月の二十二日


 きんきらきんが村にやってきているので、ライラがあまり巣穴にこない。

 それにしてもきんきらきんはライラを愛しているのは見ていてわかるが、ライラとどうなりたいと考えておるのだろうか。我はよく分からんがラオが言うにはライラはもう結婚なるものをする適性年齢だというし……。


 新聖歴890年 茄月の二十五日


 ライラがこちらに来ようとしない。きんきらきんの滞在している間は村にいたいだそうだ。

 好いている者がおるのならそれは当然であろうし、我もラオの傍に居たいと思っているのでその気持ちはわかるが、寂しいものは寂しいのである。

 ミカガネにそれを訴えていたら、「……ラオウールに慰めてもらいなさい、私は忙しい」といわれてしまったのでラオに「寂しい」と訴えて慰めてもらった。


 新聖歴890年 茄月の二十七日


 ラオが我と同じで「父さん」呼びに変化している事を落ち込んでいた。

 気持ちがわかるため、我はラオを慰めた。



 新聖歴890年 茄月の三十日


 今月ももう終わる。今月の事件は「母さん」「父さん」呼びに変わった事だろうか。

 うーむ、もう少し「ママ」と呼ばれる生活を満喫したかったのだが……。

 あときんきらきんにはライラを独り占めするな! と怒っておこうと思う。だって我、ライラがいないと寂しい。




 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ