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ドラゴンさんの子育て日記94

9/1 本日七話目

 新聖暦900年 文月の二日


 来月のはじめごろにもう我が子達は学園都市に旅立つそうだ。

 あとひと月ほどか。我が手の中に収まりあんなに小さかった子達がもうこんなに大きい。我、感激してやっぱり泣きそう。


 新聖暦900年 文月の五日


 劇を見に行った。今日はラビノアと二人でだ。

 なんだろう、いつもよりラビノアが我に優しかった。いつも愛いけど、今日は一段と愛い。頭をなでなでして、ぎゅってしたら流石に怒られた。

 街中でそんなされたら恥ずかしかったらしい。


 新聖暦900年 文月の八日


 今日は学園に行く準備を子達がしているのを手伝った。

 なんだろう、家族で皆で準備して、我が子達がわちゃわちゃしているの見るの楽しい。


 新聖暦900年 文月の十日


 今日は街に向かった。

 お別れ会は、十日後ぐらいに行われる予定なのだが、今日も街のものたちは色々くれた。

 皆、我にいろいろ与え過ぎではないか?

 なんか傍にいたシノウールが「お母さんにものをあげすぎです!」とか言ってたし。

 

 新聖暦900年 文月の十一日


 ミカガネと子達が今日も出かけて行った。

 ミカガネも我が子達と本当に仲良しである。

 なんか、我とラオがいて、ミカガネがいて、子達がいる。それが当たり前の日常だけど、もうすぐその日常が日常ではなくなるのか。

 世の中の親たちは子が巣立ちのたびにこういう寂しさと、そして成長のうれしさと、こういう気持ちを我のように味わっているのだろうか。ルグネを拾うまでこんなこと考えた事さえなかった我がこういう気持ちを感じているのは、やっぱり少しだけ不思議だ。


 新聖暦900年 文月の十三日


 母君と父君はパーティーが終わったらしばらく過ごした近場の山から去るって言ってた。でも我が子育てし始めるまで番バラバラで過ごしていたのに、一緒にぶらぶらするって言ってた。

 仲良きことは良き事なので良いと思う。

 まぁ、我が子達が気になるからちょくちょく街とかにも来るって言ってた。


 新聖暦900年 文月の十五日


 子達を連れて山で遊ぶ。楽しそうにはしゃぐ我が子達は愛いとしか言いようがない。ルアノも楽しそうで良い。


 新聖暦900年 文月の十八日


 パーティーは二日後だが、もう街にきてる。ラオが用意してくれた赤いドレスも見た。ラオは我に似合うものをちゃんと見つけてくれている。

 ひらひらするものもたまには良い。あと試着するとラオが滅茶苦茶喜んでいたからそれだけ喜ばれると嬉しいのである。


 新聖暦900年 文月の二十日


 パーティーは、長2号の家(街になってから建て替えられた)で行われた。街の人たちが出入り自由で一日中やるらしい。

 結構大規模である。

 ルグネ、ラビノア、シノウールに「頑張ってね」「たまには帰って来てね」「元気でね」などと皆声を掛けていた。なんか皆我が子達のことが大好きなのだ。まぁ、我が子達は愛いので皆が大好きになるのも当然であるのだが。

 あと我やラオの方にも「ぶらぶらしてもいいけど、たまには顔を出してほしい」とか「ラオウールさんに心配かけないように」とか「無茶はしないように」とか、我はそんなに心配をかけることはしていないと思うのだが。あと色々くれた。握手してほしいとか言ってくる街のものとか。

 色々くれたりして、楽しい。

 食事をして、お話をして、凄く楽しいものだった。


 新聖暦900年 文月の二十四日


 不意打ちで子達から育ててくれてありがとうってプレゼントもらった。

 我とラオの入学祝のプレゼントあげる前にである。ミカガネと最近出かけていたのは我とラオにプレゼントをあげるためだったらしい。我、感激して泣いた。

 だって嬉しい。不意打ちで泣いた。とっても嬉しい。

 お揃いのアクセサリー。一生懸命子達が選んでくれたらしいもの。

 我もラオと一緒に選んだ、三人お揃いのペンダントをあげた。入学祝だっていってあげたら笑ってくれた。

 本当に、我が子達は最高に愛いのである。


 新聖暦900年 文月の二十八日


 子達にもらったプレゼントに嬉しくてニマニマしてしまう。なんか、こうして子達が我にありがとうって伝えてくれて嬉しかったのだ。

 というか、我の方がありがとうって言いたい。子達が居なかったら我はこんなに楽しくて濃い十年を過ごせなかったから。


 新聖暦900年 蛇月の一日


 数日後には子達が巣立ちをするので、ぎゅってする。最近、よくぎゅってしてしまう。だってぎゅってしたいから。


 新聖暦900年 蛇月の六日


 子達の巣立ちである。このまま学園都市に行き、学園に入学する。そして学園で色んな経験をして大人になっていくのだ。

 我、もう朝から大泣きであった。

 ミカガネが呆れてて、ラオが優しく我の頭を撫でてくれて――、そんな中で制服を着ている我が子達を見て我は泣いてしまう。

 「お母さん、益々泣くかもしれないけど」

 そして、馬車に乗り込もうとする我が子達はそう言って手紙を差し出してきた。それぞれが書いた手紙だ。我だけじゃなくて、ラオとミカガネにも渡してた。

「じゃあ行ってきます!」って我が子達は言って馬車に乗っていった。手紙は馬車が出てから読んでほしいって言ってた。

 我が子達が去ってから読んで、我、また大泣きした。悲しいからじゃなくて、感激して大泣きした。あと我が子達が大きくなったんだなって、そう思うだけでなんかこう色んな思いでいっぱいになった。

 ずっと書いてきた子育て日記も、子たちが巣立ちをした今もう、終わりだ。




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