表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/47

顔なし姫2

呪いにかかった人間の話をしよう。

その人は、お姫様だった。


◆◆◆


「さて、無事に一つ目の遊びが終わったわけだけど…感想は?」


どこかの世界の小さな一軒家。

主とぼくは机を挟んで向き合っていた。


「感想もなにも、ぼくはただ、従うだけなので」


「つまらない返しだねえ」


主はイスの背もたれに背中を預け、わざとらしくイスをギシギシ鳴らす。


「つまらないもなにも、ぼくはあなたのシモベですから」


シモベとは、そういうものでしょう。

そう言えば、主はギシッと一際大きくイスをならした。


「固いねえ。キミ。

頭カチカチだ


もっと気楽に行こうよ。

難しく考えたってどうにもならないさ。


絵本をめくるみたいに、流れに身をまかせることほどつまらないものはないよ」


「それはあなたの意見でしょう」


「なら、キミは今楽しい?」


「…わかりません」


ぼくは主を見上げた。


「ぼくは今、なにも知りません」


ぼくはどうやら、主と約束をしたらしい。

らしい、というのはぼくは約束の内容を何一つ覚えていないのだ。

ただ、約束した事実だけはぼくの中に残っている。


「ぼくは、どうしてなにも覚えていないんですか?」


「それを望んだから」


「記憶を消すことを?」


「いいや

キミが願ったのはそれでもあるけど、それじゃない


最初に言っただろう

これはある意味ゲームさ


キミがボクと遊び、そして選ぶことで全てが終わる」


「…」


「どういうことか、知りたいかい?」


ぼくは少しだけ考えて


「いいえ」


首を横に振った。


「昔のぼくは、今のぼくが分からないことを全部知っていたんですよね」


「そうとも言えるね」


「なら、本当にぼくがほしかった願いは、叶ったんですよね」


「叶ってるよ」


「それなら、いいです


それなら、きっと昔のぼくは満足しているはずだから」


だって、そうでしょう。

欲しいものをもらって、満足しないはずがない。


「きっと、昔のぼくは幸せのはずです」


主は、奇妙なものを見るようにぼくを見おろす。

まるで、期待外れで、でも落胆はしていない。

そんな感じだった。


「でも、今のキミは昔のキミを知らないじゃないか」


意地悪そうに、主は言う。


「だから、見つけるんです

そのためのゲームなんでしょう?」




◆◆◆


彼女が呪いにかかったわけは、別に糸つむぎの針に刺されたからでも、藁人形を釘で打たれたからではけしてない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ