こいしかなし
綺麗な月明りの下だった。
風は冷たく、空気は冷え、だからこそ星が一際美しく輝いていた。
『ワカッテいるよね』
クロは大きく息を吸い込む。
クロは生まれた時から独りだった。
クロは本来ならば生まれることが出来ない存在だった。
クロは本来ならば、消えて行く存在だった。
そんなか細い魂を見つけて、手を握ってくれたのは2人だった。
うれしかったんだ。
見捨てられたくなかったんだ。
独りに戻りたくなかったんだ。
「ボクは…」
けれど、クロは優しすぎた。
悲しさを
寂しさを
泣くことすらできない痛みを
知っていたから、仲間を作れなかった。
痛みを知っているから、同じことを他の誰かにしたくない。
「ボクは…いやだ…」
◆◆◆
色んなことを思い出した。
真っ暗の中、落ちて行く。
◆◆◆
「だって、結局独りになるじゃないか!」
クロは立ち上がり、叫ぶ。
「誰と出会っても」
ぐにゃりと、姿が崩れる。
「どんなことをしても」
少女に
少年に
「どんな願いを叶えても」
青年に
女性に
「キミ達だって一緒にいてくれない」
どんな姿にもなれるということは
どんな姿にもなれないことと同じ。
「あの子だって、どうせいなくなる」
自分を知る前に、消えてしまった小さな魂。
そこにつめられた思いすら、自分ではわからない。
「繰り返して、なんの意味があるのさ!」
月が綺麗な、夜だった。
◆◆◆
「どうして、自分を大切にしないの?」
「どうして、あなたの世界にはあなたがいないの?」
悲しそうな声が響く。
やがてぼくは、暗闇の底にたどり着いた。
◆◆◆
『だから』
『ナカマをふやせバいいのヨ』
聞き分けのない子供をなだめるように双子は言う。
しかし
「仲間ってなんだい?
増やしても増やしても
一緒にいられない。
好きになればなるほど、お互いを消したくなる!
仲間だっていうのなら、教えてよ!
ボクの中にずっとある、穴のあいたような気持を埋めてよ!
埋め方を教えてよ!」
感情のまま、クロは叫ぶ。
その姿を幼い少女の姿にとめ、泣きそうに顔を歪める。
けれど、涙はでない。
泣き方も、クロは知らない。
「よくわからないけど、間違ってる
例え、ボク達のような存在は生まれ続けるとしても…ボク等は、一生独りのままだよ」
それなら、としぼりだすようにか細くつぶやく。
「もう、消してよ」
◆◆◆
ぼくは、あの人から生まれた。
あの人の心の隙間を埋めるために命を持った。
だから、ぼくの中身はあの人しかいなかった。
それの、なにがいけないんだろう?
―本当に?-
声がして、振り向いた。
―本当に、その人の為だったの?-
◆◆◆
『そうか、お前も』
『ウラギるのね』
◆◆◆




