魔法使いのくつ
ーそんなわけで ひとの すがたを もらいましたー
暗い水面揺らめくこの場所は、今日も桃色が舞っている。
小さな波紋はまるで着物の柄のようで、いつ来ても美しさに目を奪われる。
「そう…」
やはりというか、あの人の反応は悪い。
前に、主のことを物の怪とか言っていたっけ。
どちらにせよ、あまりいい印象は持っていなさそうだ。
ーほんとうは あなたにも みせれたら いいんですけどー
どうして、嫌うんだろう?
もしかして顔見知りだったりするのかな?
「大丈夫よ
ちゃんとわかっているから」
―え?-
もしかして、見えているのかと聞くと
「知っているだけよ」
それ以上は教えてくれなかった。
それから
「転ばないようにね
あなたは意外と運動神経悪いから」
からかうように言われて、顔が赤くなった。
―だいじょうぶ ですー
「ふふふ」
―もうー
ここの水は、とても深い。
泳ぎを知らないぼくでは、あっという間に溺れてしまうだろう。
便利な体を手に入れたのに、結局こっちを使うなんて、なんだか納得いかないなあ。
―きいても いいですか?―
「なあに?」
―あなたは あるじ たちの ことを しっているんですか?-
「…知っているわよ
知りたい?」
ーはいー
「あれはね、とても純粋な存在
それゆえに、とても恐ろしい存在よ」
―でも ねがいを かなえて くれるんですよね?-
「そうね
確かに彼らは、どんな形であっても願いを叶えるわ
でも、それが必ずしもいいことにつながるとは限らない」
願いを叶えてもらえれば、普通は幸せになるんじゃないのだろうか。
欲しいものを手に入れて、悲しむヒトはいるんだろうか?
「彼らは対価もなく、願いを叶える
それはつまり、彼らの目的はものをもらうことじゃない」
―つまり?-
「考えてごらんなさい
彼らの目的は、なんなのか」




