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ほしいもの5


「た、ただいま、戻りました!!」


緊張気味で上ずった声で、家の扉を開けると


「・・・誰だい?」


カップ片手に目を丸くする主様がいた。



喜んでもらえると思った。

役にたてるし、何より主は面白いことが好きだ。

ぼくがこんな姿を手に入れたと言ったら、きっと興味津々で


「面白いねえ」


って言ってくれる。

それに、主の仲間に会ったと言えば、もっと驚いて面白がってくれるかもしれない。


一応、言っておくけど約束はしたけど何でもかんでもペラペラしゃべったわけじゃない。


主と出会ってからは日が浅いこと。

ぼく自身はなんの力もないこと。


話したのは、この二つだけだ。

それでも、双子は満足したみたいで、願いを叶えてくれた。


なんと言ってくれるだろう?

主は、人のカタチをてにいれたぼくに、なんというだろう?

腕いっぱいに花をかかえたぼくは、ドキドキしながら主に先程までのことを説明した。


「・・・ふうん」


あれ?


「なるほどねえ」


それだけつぶやいて、主はこめかみに指をあてた。

あんまり、うれしそうに見えない。


「あの・・・」


「それで」


主はぼくの言葉を遮った。


「その二人は、一体どこにいるんだい?」


「え?それは…」


あれ?そういえばどうしたっけ?

願いを叶えてくれると言った瞬間、双子のからだが主が変身するときみたいにぐにゃりと崩れて、それで


『くすくす』


『クスクス』


びくりと、肩をはねてしまった。

この気配は


『呼んだ?』


『ヨバレタ?』


「ひいっ!?」


気が付くと、両脇にあの二人が立っていた。

やっぱり、気配が主と同じだ。

主と、同じタイプの人たちなんだろう。


『やあ、久しぶり』


『ヒサシブリ』


かくん、と同時に首を内側に傾ける二人。

人形の首が落ちるところを、一瞬想像してしまった。


「やっぱり、キミたちか」


はあ、と主は沈痛な面持ちでため息をつく。

驚いている様子はない。

やっぱりというか、顔見知りみたいだ。


「何しにきたんだい?

それに、この子に一体何を吹き込んだんだい?」


『吹き込んだなんて人聞きの悪い』


『アタシたちは、ただ、クロちゃんのヨウスをミにきたダケヨ」


『オレ達は、特別なことをした覚えはないぞ』


『ウワサをきいて、キタだけよ』


『オレ達は、こういうことをする者、だろ?』


『キイテあげる』


『叶えてあげる』


『『だから、こっちをみてってね』』


『あはは』


『アハハハハハ』


くるくる、くるくる、休む暇なく二人は交互に言葉を紡ぐ。

口を追っているだけで、目を回してしまいそうだ。

主の方を見ると


「この子は、ボクのだって、知ってるはずだよね」


ぐいっと、肩をひっぱられて、主のほうに引き寄せられる。


「横取り、する気なら容赦しないよ?」


もしかして、怒ってる?

こんな、無表情で淡々としゃべる主を見たことがない。

まるで、必死に感情を隠してるみたいな


いつも、思うことをペラペラいう主にしては、穏やかじゃない。


『大丈夫。クロの言うことを邪魔することはない』


とイル。


『ダイジョウブ。ナカマのジャマはしないよ』


とアル。


『それにしても』


『ウマクやってるねえ』


『短期間で、よくここまでひきこめたな』


『ジュンチョウ、じゃなイ』


なんの話をしてるんだろう。

見上げると、主の目が、すうっと細くなるのを見た。


「あの・・・」


「ねえ」


ふいに、こちらを向かれて、びくりとする。


冷たい、感情のない瞳。

今まで、一度も、こんな主の目を見たことがない。


ドクン、と不穏に胸が鳴る。


体が恐怖ですくみ、手から花が零れ落ちた。


ばさりと、床に花が散らばる音で、ハッと何かを言いかけた主の唇が閉じる。

ふう、と静かに息をはきだす主。

それから


「ねえ」


いつもの、優しい光が主様の瞳に宿った。


「ねえ」


「は、はい」


「キミは、元の姿に自由に戻ったりすることはできるのかい?」


「あ、それは、自由にこれと元の姿とを自由に変えられます。

…あの、この姿は、嫌ですか?

なら、すぐに元に戻りますが」


「いいや」


首をふる主。

その手が、マントを強く握りしめていることにきがついた。

まるで、子供が必死に泣くのをこらえているみたいに、握りしめたてが小刻みに震えている。


「どうしたんですか?」


怒っているのだろうか。

それで、体を震わせているのだろうか?


「勝手なことをして、ごめんなさい」


ぼくは恐る恐る、その手に触れた。

ぴくりと、主の眉が動いた。


「でも、あなたは言いました

ぼくの好きなようにしていいと


だから、ぼくは望みました


もっとたくさんのことができる体がほしいと」


何をするべきか、考えた。


普通なら、記憶を取り戻そうと頑張るべきなんだろう。


でも、どうしてだろう。

焦る気持ちはわいてこないんだ。


大丈夫だって、そんな気がするんだ。


「ぼくは、あなたのことを知りたいです

だってぼくはシモベだから


役目を果たすためには、主のことをもっと知るべきなんです」


主はぼくを見る。

黒い瞳の中の感情は読み取れない。


「昔のことは、正直どう向き合えばいいかわかりません

だから、今のぼくはとりあえず、進もうと思うんです」


喜んでいるのか

戸惑っているのか

怒っているのか

憐れんでいるのか


読み取れるだけの、繋がりをぼくは持っていない。


「だから、もっと教えてください

あなたのことが、知りたいんです」


「ありがとう」


いつも通り浮かべるその笑顔の裏側も、今はまだ分からない。



でも、いいや。


ぽん、と頭に乗せられた手のぬくもりを昔のぼくは知っているから。


―本当にあなたはまじめねー


呆れたように笑う誰かが、頭に浮かんですぐに消えた。


「…ねえ、ところでキミはもその姿をちゃんと見たのかい?」


ぼくは首を横に振る。

花畑には、姿を映すものはなかったから

それにすぐに見せたくて、変身したらすぐに走ってここまで来た。


「それなら、ここの裏に湖があるから、そこで確認してくるといいよ」


「はい」


促されるまま、外に出るとすぐに扉は閉められた。

家の中からは、すぐに話し声が聞こえてきた。


「で、本当はなにしにきたんだい?」


『だから、様子を・・・』


『ウワサをキイテ・・・』


「それは・・・だい?」


『・・・やっぱり・・・で・・・』


『キッカケ・・・しょう?』


「否定は・・・けど・・・」


『意地・・・』


『相変わらず・・・』



あんまり、良く聞こえない。

そもそも、盗み聞きはよくないよね。

ぼくは静かにその場を離れた。






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