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勇者召喚?

「お帰りなさいませ、ご主人様」

 今日も元気にご主人様をお出迎え。

「ラブラブ、にゃんにゃん」

 オムライスにケチャップでハートを作りながら魔法の呪文を唱えます。

「はい、あーん」

 スプーンですくい、ご主人様へのあ~んサービス。

 3回で終わりです。

 オムライス料金1500円にあ~んサービスは含まれます。

「ミナちゃーん、こっちお願い」

「は~い、かしまりました~」

 席を離れることができると、急いで次のお客様。もといご主人様への元へと向かいます。

 そんなわたしは今日もメイド喫茶でアルバイト。

 お気に入りの黒猫耳カチューシャにピンクのふりふりスカートからピョコンとでている黒猫しっぽ。

 いつもにこにこ元気です。

 

「ミナちゃ~ん、ご指名入りました。ホットケーキお願いしまーす。」

 同僚に言われホットケーキを持っていった先は先ほどオムライスをあ~んさせたご主人様です。

 馴れ馴れしいのでちょっと苦手です。

「ミナさん、この後よろしかったらデートしませんか?」

 おたくなのだろうか。年のころは20過ぎ、やせぎすで白地に青のチェックのシャツを着ており、隣の席にリュックを置いてます。

「いや~ん、困ります。ご主人様~。」

 ほんと勘弁してください。

 こういったお客様のためにお店ではあらかじめハンドサインが決められています。

 今回のハンドサインは、ヘルプこのお客は嫌です。

 すると慣れたもの

 「ミナちゃ~ん、チラシ配りお願~い」

 いそいそと席を離れようとしたところで

 「ミナさん、さっきの答えがまだなんですが」

 青年が聞いてくる。

 「ごめんなさい。仕事中はそういったことはお答えできないよう決まっているんです。」

 テンプレ通りうまくいなしたと思ったが、お腹にはナイフが刺さっていた。

 何か間違った解答をしただろうか。

 薄れ行く意識の中で考えたが答えが出る前に意識を失ってしまった。



「…さま、勇者様」

 ぼーっとした意識からだんだんと覚醒していく。

 声のした方をみると、虎耳、虎ビキニの少女がわたしの手を握って跪いている。

 えと、よそのお店に来てしまったのだろうか。

 はっきりしない頭でぼんやりと考えていた。

「勇者様、起きてください。」

 虎耳少女はわたしの手をぎゅっと握り締めてくれている。

 涙は流してはいないものの、目はうるうると涙目だ。

「う、う~ん。ここはどこ? あなただれ?」

 なんか間抜けな問いをしてしまった気もするが、実際この子が誰なのか、ここがどこなのかはっきりとしない。

「勇者様、ここはジャハールの村です。わたしは勇者様の巫女トーランと申します。」

 ひゃん

 まだ意識のはっきりしないまま、いつもの癖で虎耳少女の頭を撫で、お尻もさわさわしちゃいました。

 「ゆ、勇者様ご容赦ください。そんなことをされますとお嫁にいけなくなってしまいます。」

 少女は顔を真っ赤にし、内股でくねくねしながら恥ずかしそうにもごもご言っている。

 そのまま撫でていたかったのだが、甘すぎる雰囲気にはちょっと困ってしまう。


 辺りを見回して、状態の確認をおこなうことにする。

 今は簡素な木のベッドに横になっている。

 傍らには虎耳美少女が頬を赤らめてわたしを見ている。

 銀色のおかっぱ頭から虎耳がぴょこんと飛び出している。本物だろうか?

 それはいいとして、虎柄ビキニって何よ。ラ○ちゃん?

 身長は150cmくらいだろうか、170cm近い私に比べると随分小柄だ。

 部屋は4畳半くらいかな。私の部屋より少し狭い。壁も床も木だが、床は土足のようで結構土がたくさん積もっている。

 今の状態がいまいち把握できないので、扉をあけ外に出てみることにした。

 そこは……

 猫耳、犬耳、熊耳、狐耳、

 もふもふぱらだ~いす。

 「え、え、え~」

 「異世界からの勇者様、どうかわたしたちをお救いください。」


 聞いてみると獣人国に勇者召喚されたらしい。

 ここ獣人国と人間の国とは戦争をおこなっており、その手助けをしてもらいたいということだ。

 人間の子供が首輪をつけ、鞭で打たれているのが目に付いた。

 人間国では獣人を、獣人国では人間を奴隷として扱うのが普通らしい。

 ポニーテールの頭に手をやり、猫耳カチューシャがずれていないか確認した。

 お尻に手をあて、スカートから猫尻尾がきちんとでているかを確認した。

 ここでばれてしまうとやばいことになるだろう。

 勇者どころか奴隷として扱われてしまう危険性がある。

 それだけは勘弁だ。


「勇者様、皆の指揮はあがっております。今こそ人間国へ攻め入る号令を!」

 虎耳少女、もう虎子でいいや。

 虎子が後ろからぶっそうな発言をしてくるが、勘弁してもらいたい。

 わたしは戦いどころか喧嘩さえしたことがない。

 平々凡々な日本人だ。

 大学に通いつつメイド喫茶でバイトしていたただの一般人だ。

 何か期待されても困ってしまう。

 どうにかごまかさねば。時間を稼がねば。

 

 とりあえず、すぐの戦争は勘弁と頭にあるだけの知識を使い、戦闘訓練をおこなうことにする。

 一応習っただけで実践したことのない痴漢対策の護身術だ。

 捕まれたら腕を捻って投げ飛ばす。

 金的蹴り、小指捻りなどの技といえるのか怪しいが、技を伝授していく。

 なぜか一緒に召喚されていた、アルミのお盆。

 これがミスリルトレイという妙な物質に変わっていたが、トレイを使っての上段からの打ち下ろし。

 飛び散ったケチャップ、ジュースから身を守る、咄嗟のトレイガードなどなど意味不明な技も伝授していく。

 次いで悪乗りに乗ってしまい私が着ているのと同じメイド服の作成、シルバートレイの作成をおこない、けも耳メイド軍団を作ってしまった。

 やってしまった感はあるものの後悔はしていない。


 勇者として頼られたからにはやるしかない。

 中立都市トラハで入念な準備をしつつ、戦闘開始日を今か今かと仲間達と待っていた。

「さぁ、これから戦闘開始よ悔いのないように全力を尽くすのよ。」

 私の合図で皆が一斉に動き出した。


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