【詩】満開のさよなら
まっしろにもたれている、
こぼれんばかりの
ゆきやなぎ。
ちいさな葉といっしょに
かぜにゆらゆら。
みあげれば、
くろいみきに
ちからをみなぎらせて、
さくらが
満開になっている。
さくらの木のまわりでは
すべてがぼうとしてしまって、
もう空さえ目に留まらない。
さくらは、
ざわざわと
わたしの中を揺さぶる。
さむかった春も、
かなしかった春も、
せつない予感の春も、
このあつい春に包まれている。
別れと、
別れと、
また、
別れ。
くり返す別れは、
すこしずつ離れていくもの。
やがて散るこのさくらもまた、
ひとつの別れ。
ことしもまた、
さよならのきせつがやってきて、
虫たちや鳥たちは、
さよならを食べてめざめていく。
めざめたかれらは、
はなやかな花のいのちを
満開のままに生きる。
もっととおくへ行きたい。
もっとたかくへ飛びたい。
もっと、もっと、もっと。
かれらは、
春のかぜに舞い散る
花びらたちのように
軽やかです。