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66 解決

「待って、お父様ッ!」


 少女の声の叫び声が響き渡る。

 声のするほうを見てみると、三葉幸太郎の一人娘である三葉綾子が立っていた。

 どうして彼女がここに――?


 いや、そんなことより綾子の横にいるのは――。


「なんとか間に合いましたネー。相変わらず夏野は無茶しやがりマース」

「海斗さん、大丈夫ですか?」


 特殊訓練兵関西支部のシェリー。

 それに、旅館の少女レイも一緒だ。


「フー、物騒なものは没収シマース。平和的に解決しまショ?」

「おい、貴様、何者だッ! へ、部屋の前に居たやつらはどうしたというのだッ!」


 三葉幸太郎の拳銃を一瞬にして奪ったシェリーはニコリと優しく微笑む。

 あまりの早業に何が起こっているのか理解できない幸太郎。


「オー、あの人たちならみんな仲良く眠ってもらってマース。なかなか入れてくれなかったので仕方なくネー」

「な、あり得ん。わしが高い金を払って雇った選りすぐりの男たちを一人で倒せるわけが……。いや待てよ、長い金髪に独特のしゃべり方……もしや貴様、サイレントキラーかッ!」

「フフ、懐かしい呼び名ですネー。でも今は特殊訓練兵のシェリーなのデース」

「ふん、なぜ貴様のようなやつが特殊訓練兵などに所属してるかは知らんが、どうやらわしの命運もこれまでのようだな。儚き夢だった……。これで全て終わりだ、何かも……」


 全てを諦めたかのように項垂れる三葉幸太郎。

 しかし、綾子が背中に寄りそうに抱きついた。


「終わりではありませんよ、お父様。罪を償い、そしてゼロからやり直しましょう」

「綾子……。何故だ、わしはお前のことを……」

「それでも、私のお父様に変わりはないですから」


 こうして、事件は終わりを迎えた。

 一人の少女の涙と共に――。




---



 その夜――。


「いやしかし、驚いたよ。どうしてあの場所が分かったんだい?」


 レイの旅館に戻ってきた俺たち。

 のんびりとお茶を飲みながら一息入れていた。


「本当は、気付いていたんです。父が誘拐事件に関わってるって。でも、言えなかった……。父を信じたかった。最後の最後まで……。でも海斗さんがあの時、再び旅館に戻ってきて分かったんです。現実から逃げてたらダメだって。未来は自分で切り開かなければ意味がないんだって」


 綾子が力強くそう言った。

 父親の三葉幸太郎は警察に捕まり、身寄りのない綾子はしばらくこの旅館でレイと一緒に暮らすそうだ。


「格好良かったですよ、シェリーさん! 何十人もいる部下を次から次へと音もなくぶっ飛ばす姿は今でも忘れません。ボクもいつかシェリーさんのように強くなりたいなぁ……」


 目を輝かせながらレイが語る。

 シェリーの強さは俺も見たから知っているが、訓練してどうこうなるレベルじゃない気がする。


「オー、特殊訓練兵はいつでも新人募集中ネー。小三郎よりも使える部下がちょうど欲しかったところなのネー。サーテ、私の命令に背いた罰は受けてもらいマスヨー、ねえ小三郎?」

「そんな殺生なー。わいのおかげで事件も一件落着したんやないかー」


 お酒を飲みながらシェリーも上機嫌だ。

 恐ろしく強い人なのに、普段はそれを感じさせない温かさがある。


「買い物してただけで何を言ってるのデース。今度という今度は許しまセーン」

「いたたたッ! 痛い、痛いッス。死んでしまうがなーッ! おいお前たち、何を笑ってやがるんや。さっさと助けんかい!」

「えー、無理ですよー。シェリーさんには敵いませんもん」

「そうやそうや、それにサブちゃん痛がってる割に嬉しそうやし」


 関節技を決められ、バタバタと手足をばたつかせる大森さん。

 それを見て神崎が笑う。


「それにしても、赤坂先生が悪い人じゃなくて良かったよ……。本当に神崎の点滴に毒を入れられてたら今頃どうなっていたか……」

「せやなー。まさかあの優しそうな先生が青木の親友で事件に関わってたなんて夢にも思わんかったわー」


 神崎が軽い調子でそう言う。

 下手したら死んでたかもしれないというのに、相変わらず不思議なやつだ。


「さぁ、夕飯の準備ができましたよ。たくさん作ったので遠慮せずに食べて行ってくださいな」


 レイの姉がそう言って、御馳走を運んでくる。


「私も手伝いますよ、お姉様!」

「良いのよ綾子さんは休んでいて。いろいろあって疲れているでしょう?」

「それを言うなら、お姉様だって……」


 レイの姉は、助けてくれたお礼にと料理を振る舞ってくれた。

 あの地下の実験室に捕らわれていた数十人の行方不明者は無事に元の家に帰って行った。


 いや、無事にとは言えないだろう。

 彼らは皆、自殺未遂をした人間。


 本当の意味で救うにはまだまだ時間が必要なのだ。


「姉ちゃん、ごめんよ。ボク、何も気付いてあげられなくて……」

「ううん、アタシのほうこそゴメン。この旅館を一人でやっていく自信がなかったの」

「お姉様は一人じゃありませんわ! 私だってついていますもの!」

「ありがとう、綾子さん」


 でも、レイの姉はもう心配いらないだろう。

 レイも綾子もついている。


 これから三人、力を合わせてやっていける。

 そう信じている――。


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