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62 復讐

「赤坂先生……ッ!?」

「おっと、おかしな真似をしたらどうなるか分かっているよな?」


 白衣の男がそう言いながら銃を構える。

 神崎の担当医の赤坂。

 こいつが事件の黒幕だった。

 医者という立場を利用し、人々を誘拐し実験を繰り返していたのだ。


「何故だ、どうしてこんなことを……!?」

「ふっ……ふふふ、ハハ、ハハハハハ!」

「何がおかしい!」

「全ては親友のためだ」

「親友……?」

「そうだ、志半ばで命を落とした私の親友……青木宗太郎のな!」

「な、なんだと……!?」


 青木宗太郎。

 忘れもしないその名前。

 半年前の誘拐事件のときの俺がこの手で殺した人物の名だ。


「私は、青木の意志を引き継いだのだよ。青木の夢は病気や怪我で苦しむ人々を救うことだった。昔から外見で判断され、蔑まされ、疎まれていた青木は私なんかよりも数倍いや数十倍優秀だった。しかし、世間の風当たりは冷たかった。クローン技術は倫理に反する、細胞活性化は副作用が心配だと、やる前から道は閉ざされてしまった。そんなある日、日陰者の私たちにチャンスが訪れた。あることを条件に、多額の研究費用を投資してくれるパトロンが現れたのだ」

「まさか、それが三葉幸太郎……」

「そうだ。三葉社長は愛する妻を生き返らせることを条件に我々に投資してくれたのだよ」

「生き返らせるだって!? そんなの無理に決まってる……ッ!」

「ハハハ、何も知らない無知な連中はみんなそう言うよ。でも、青木ならそれを可能にすることができた。時間さえ……時間さえあればできたんだッ! お前がそれを潰した……。何の役にも立たない高校生が、人類の希望である青木を殺したのだッ!」

「何故そのことを……ッ!」

「ふふふ、おかしいと思わなかったのかね。半年の間、君は何度命を狙われたと思う?」

「……ッ!?」


 まさか、攫われたのは事件を調べていたからではなく――。

 端から俺が狙いだった!?


 なんてことだ。

 涼太や神崎を危険な目に合せていたのは、俺のせいだったというのか。


「ようやく自分の愚かさに気が付いたようだね。ふふふ、私がわざわざわかりやすいヒントまで出しておびき寄せた甲斐があったよ。こうして秘密の地下室にノコノコと現れてくれたんだからねえ。前回のようなヘマはしない。私自らお前を地獄へと招待しようじゃないか」


 全て俺をおびき寄せるための罠だったということか。


「ただ引き金を引くのはつまらないな……」


 そう言って赤坂は俺に向かって医療用のメスを放り投げた。


「それで自害しろ。そうすれば、お前の仲間の命だけは助けてやろう」

「な、何ッ!?」

「私が素直に君の仲間である神崎を治療したとでも? フフフ、毒を点滴の中に混入させたのだよ。もってあと数時間といったところか。解毒できるのはこの私だけだ。分かるね?」


 俺のせいで、神崎が死んでしまうかもしれない。

 そんなの耐えられない。

 耐えられるはずがない。


「そうだ、それで良い。自分のしたことを後悔したまま自ら死ぬが良い!」


 俺は手首にメスを押し当てる。


 神崎を救うためなら、この命――。

 惜しくはない――ッ!

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