52 シェリー
「ちっ、一人倒したくらいで調子に乗るなよ? おい、銃を構えろ。誰一人ここから逃がすなッ!」
男が慌てて仲間たちに指示を飛ばす。
そして、数人の男たちが一斉に銃を向けてくる。
「オー、困りましたネー」
そう言いながらも表情には余裕のあるシェリー。
「おっと、動くなよ? 動いたら……」
「ンー? 動いたらどうなるデース? フフッ」
「おい、動くなって言ってんだろうがっ!」
男の忠告を無視するかのようにゆっくりと歩み寄るシェリー。
狭い部屋に鳴り響く銃声。
「なっ、いない!? どこへ行きやがった」
「アナタの後ろデース。そんなオモチャでワタシを止められると思ってたのデスか?」
「……ッ!?」
まさに一瞬の出来事だった。
男が銃を撃つ瞬間、シェリーは華麗に宙を舞い男の後ろに着地したのだ。
そして、突き刺すような鋭い眼差しで男を睨み付ける。
「これ以上怪我人を増やしたくアリマセーン。大人しく引き下がってもらえマスカー?」
「くっ、お、覚えてろよ!」
ゾクっと身体を震わせた男は、そのまま仲間たちと逃げるように去って行った。
「す、すごい……」
俺はただただ驚くばかりだった。
感心する俺のほうへと歩み寄ってくるシェリー。
そして、真剣な表情のままおかしなことを口にする。
「ンー、ちょっと服を脱いでくれマスカー?」
「ふぁっ!?」
何を言い出すんだこの人は。
まさか助けたお礼に裸を見せろってことか!?
「ま、まあちょ、ちょっとだけなら……」
逆らったら殺されるかもしれないし素直に服を脱ごうとする。
「オー、君じゃないデース」
「え……俺?」
シェリーは俺の横にいた涼太を指しながら言った。
そしてそのまま、涼太を押し倒し馬乗りになって服を脱がし始めた。
「時間がアリマセーン。早くしてクダサーイ!」
「うわ、ちょ、ちょっと待ってくれよ。美穂もいるのに、こんなところで……アーッ!」
「ふむふむ、なるほどネー」
涼太の腹部をさすりながら何かを納得し始めるシェリー。
そして、鞄から何かを取り出した。
「ちょ、シェリー? 何する気や!」
シェリーはそのまま涼太の腹部に何かを突き刺した。
「う、うぐはッ!」
涼太が苦しそうに手足をばたつかせる。
シェリーがそれを押さえつける。
「え? りょ、涼太……?」
何がどうなってやがる?
味方だと思っていたシェリーに涼太が刺された?
た、助けなきゃ――。
頭ではそう思っているのに、身体が全く動かない。
今さっきシェリーの強さを目の当たりにしたばかりだ。
恐怖で足がすくむ。
目の前で涼太が苦しんでいるっていうのに。
どうして、どうして一歩も動けないんだよ――。
その時だった。
神崎がシェリーの背後から殴りかかろうとする。
「オー、怒ってはダメねー」
片手で神崎の手を跳ね除けるシェリー。
そして――。
「ハイ、応急処置は完了なのデース!」
シェリーは笑顔でそう言ったのだった。




