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「ねぇどうして家に帰りたくないの?」

「だって家にいてもつまらないんだもん!」


 つまらないか。

 そうだとしてもこれ以上俺たちがこの子を連れまわすわけにもいかないんだよな。


「三葉グループの娘さんなら何不自由なく暮らせると思うけどなぁ」

「……それがイヤなの! みんなそうよ。誰一人として私を私として見てくれないわ。学校に行っても、みんな三葉の娘としか見てくれないの。私は、いつも一人ぼっちだった」


 超有名企業のお嬢様。

 誰もが憧れるセレブ。


 しかしそれが楽しいかというとそれはまた別問題らしい。

 何かをするにも人の目を気にしなければならない。


「家にいてもずっと見張られていて居心地が悪かった。何をやるにも親の顔色を伺わなくてはならない。私のやりたいことは何一つさせてもらえなかった……。だから抜け出したの。誰もいない遠くへ行きたかった。それなのに――」

「やつらに見つかって連れ戻されそうになった、と」


 少女はコクリと頷く。

 そして、両手をぎゅっと握りしめてこう言った。


「だから、もう二度とあんな家に帰りたくない。私は、三葉の名前に縛られずに自由に生きたいの」


 目に涙を浮かべながら少女は言う。

 そんな少女を無理やり家に帰すことなどできるはずもなく――。



---




「なるほど、それでここに連れてきたのですか」

「す、すまん。他に当てがなかったもんで」


 少年が少し困った顔をして溜息をつく。

 行方不明事件も起きているのに、少女をあの場に置き去りにするわけにはいかなかった。

 仕方なく、昨晩泊まった老舗旅館に連れてきたわけだが……。


「わぁ、素敵。一度こういう旅館で働いてみたかったの」


 少女はすっかりこの旅館を気に入ってしまったようだ。

 頼んでもいないのに、旅館の掃除を始めてしまう。


「おいおい、どうすんだよ海斗。このままじゃ本当に家に帰らなくなっちまうぜ」

「うーむ、困ったなあ。今は一刻も早く行方不明事件の調査をしたいっていうのに……」

「あ、それならボクが彼女を見てますから心配いりませんよ。姉のこと、よろしくお願いします」


 そう言って頭を下げる少年。

 俺たち二人は事件の調査に出かけることにした。




---




「それで、ここが少年の姉が行方不明になる直前に訪れていたというスーパーか」

「何か手がかりがあると良いんだけどね」

「お? これは……ッ!?」

「なんだ、もう何か見つけたのか?」

「いや、このスーパーも三葉グループなんだなーって」

「そりゃあ、食料品や日用品だけじゃなくありとあらゆる分野で急成長しているグループだからな」

「それ、さっきケータイで調べてたのそっくり読んでるだけだよな?」

「あ、バレた? って、んなことどうでもいいんだよ。今は行方不明事件を調べるのが先だろう?」


 調べれば調べるほど、本当に行方不明事件など起こっているのかどうか疑わしくなるほど何も出てこない。


「はぁ、今日もまた何も得られずか……やっぱり俺たちには無理だったのかな」

「何を諦めてんだよ。涼太だってあの少年と約束しただろ? 絶対に姉を見つけ出すってさ」

「そうだけどさー……」


 涼太が珍しく弱音を吐く。

 そんな時だった。


「おい、なんかあれ怪しくないか?」


 俺が見つけた一人の男。

 きょろきょろと辺りを見渡しながら、スーパーの裏へと入っていく。


「事件と何か関係があるかもしれないな」


 慎重に怪しい男を尾行する。

 しかし、その先は行き止まりで何もなかった。


 そこで男が振り返る。


「これでもう逃げられまい」

「なっ!?」


 ぞろぞろと怪しい集団が俺たちを取り囲み始める。


「おっと、どういう状況だこれ?」

「ハッ、デートのお誘いってわけじゃねえだろうよ」


 嫌な予感しかしねえ。

 まさかこいつら、事件のことを調べる俺たちが邪魔になったのか?

 

 ここは逃げ場のない袋小路。

 まんまと誘い込まれたってわけか。


「へっ、そう簡単に捕まるかよっ!」


 涼太が次々に敵を投げ飛ばしていく。


「なんだよ、涼太。柔道でもやってたのか?」

「へへん。何の対策もなしに危険な橋を渡れるかってんだ。こんなこともあろうかと西崎先生に護身術をならってたんだよ」


 なんとも頼もしい。

 これなら逃げれるかもしれない。


 そう思った瞬間、涼太がどさりと地面に倒れ込んだ。


「りょ、涼太……?」


 地面が赤く染まっていく。


「へっ。ガキが調子に乗るからだ」


 ナイフを手に、吐き捨てるように男が言った。

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