48 誘拐事件
「良いのかよ涼太」
「んあ、何のことだ?」
「あんな安請け合いしちゃってさ」
「困ってる人を助けるのは当然だろ?」
まあ、行方不明事件を解決するためにわざわざ関西まで来たんだ。
この事件を解決させれば、あの少年の姉も見つかるかもしれない。
だけど――。
「でも結局、何の手がかりも得られなかったじゃないか。これじゃあまた昨日のように無駄に歩き回ることになるぞ?」
「大丈夫だ、心配すんなって。こんなこともあろうかと、西崎先生に連絡を取っておいた」
なるほど、涼太がやけに自信たっぷりだと思ったらそういうことだったのか。
特殊訓練兵の西崎先生の助けを借りるというわけだな。
「それなら安心だな」
「ま、西崎先生は来れないみたいだけどな」
「ダメじゃん! なんだよそれ。期待して損したわ!」
「おいおい、俺に文句言うなよ。西崎先生だってアレで結構忙しいみたいだぜ?」
つまり俺たち二人だけでなんとかしろってことか?
困ったな、やはり俺たちだけじゃ経験が足りな過ぎる。
何をどうやって調べたらいいのかもよく分からない。
このままでは時間だけが過ぎていくばかりだ――。
「おい、海斗。あれを見てみろ」
「うん?」
涼太が指差す先。
一人の少女が、複数の男たちに囲まれている。
サングラスをかけ見るからに怪しい集団だ。
「きゃあ、ちょっと放して、放してったら!」
少女が叫ぶ。
男たちは嫌がる少女の手を無理やり引っ張り、強引に車の中へと連れ込もうとしている。
「おいおい、これってもしかして――」
――誘拐!?
もしや、行方不明事件と何か関係が――?
瞬時に涼太に目配せする。
二人で同時に走り出した。
「うおりゃああああ」
涼太がサングラスの男の背後から鞄で思いっきりぶん殴る。
「さあ、こっちへ、早く!」
「え? ええっ!?」
その隙に、俺が少女の手を引いて連れ出す。
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「ふー、ここまでくれば大丈夫だろう」
「……」
辺りに人がいないのを確認して、ゆっくりと腰を下ろす。
少女はびくびくと震えていた。
危うく誘拐されそうになっていたのだから当然といえば当然だ。
俺は安心させるために少女の背中を撫でようとすると――。
「どういうつもりですの?」
パシンと手を払われ睨まれる。
「ほえ?」
少女の思わぬ行動に驚いて変な声を出してしまった。
「目的は何ですの? やはりお金……? そ、それとも身体目当て!? いやあああ、やめて近寄らないでえええッ!」
「あ、あの……」
少女はガタガタと肩を震わせながら、落ちている小石や木の枝を投げつけてくる。
あれれ、何コレ?
まるで俺がこの少女を誘拐したみたいになってる――?
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「ええー、誘拐じゃなかった!?」
「そうなんだよ、それどころかあの黒服の男はなんとこの少女専属のボディーガード!」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。それじゃあ俺たちがしたことって……」
「ああ、今頃、世間じゃ大騒ぎだろうな。超有名企業三葉グループの一人娘が不審な男二人に誘拐されたってな……」
人助けのつもりだったのになんたる失態。
「で、間違いだと分かったのに、なんでこんなところでのんびりと昼飯なんて食ってるんだ?」
「この子が、お腹が空いたと騒ぐもんだから……」
少女は美味しそうにハンバーガーを頬張りながらニコニコしている。
一応、俺たちが誘拐犯ではないことは納得してもらえたはずなんだが――。
「な、なあ、それ食ったらちゃんと家に帰れよ?」
「絶対にイヤ! 海斗と一緒にいるの!」
「……」
何故か家に帰ろうとしない少女。
このままじゃ俺は誘拐犯として指名手配されてしまうんじゃなかろうか。




