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45 たこ焼き

「はあぁ、新幹線って高いんだな。せっかくのお年玉がすっからかんだよ……」

「金の心配してどうすんだよ。人の命がかかってんだぞ」

「それはわかってるけどさ……。そんなことより、奈央ちゃんには言わなくて良かったのか? 今頃心配してると思うぜ」

「良いんだよ、奈央は。後で電話でもしとくよ。事件のことは伏せるけどね」


 俺と涼太は神崎を追って、新幹線に乗り込んだ。

 目的地は大阪。

 神崎が幼少のころに住んでいた町だ。


「奈央ちゃん、本当のこと知ったら怒ると思うぜ? なんで私も一緒に連れてかないのよーってさ」

「……だろうな」

「だろうなって、わかってるならどうして教えてあげなかったんだよ」

「奈央をこれ以上危険な目に合せたくなかったんだ……。奈央は強がってはいるけど、前回の事件を俺以上に深刻に受け止めてる。パニシエルさんの死を自分のせいだと思い込んでる……。だから、事件にはもう関わらせたくないんだ」


 奈央が泣いてる姿は、もう二度と見たくないから――。




---




「やってまいりましたよ大阪! さてと、まずはたこ焼きでも食うか!」

「おい、涼太。お前、何しにここに来たか忘れたとでもいうわけじゃあるまいな?」

「わかってるって。でも、もう少し肩の力を抜かないとすぐにバテちまうぜ? 今回の事件はまだ噂レベルだ。実際に何が起こってるのかもまだよくわかっていない。だから観光でもしながら情報を集めてだな……」

「か、観光って、そんな悠長なこと言ってる場合かよ。もし、本当に行方不明のやつがいたら、一刻を争う事態なんだぞ! またパニシエルさんの時みたいに間に合わなくなったら……ッ!」


 涼太は俺の口を手で塞いできた。


「わかってるってばー。だからこそ、焦りは禁物なんだよ。俺たちはド素人だ。西崎先生のように武術の達人でもなければ武器も持ってきていない。敵の目的も分からない今、不用意に事件のことを調べ回ってたら、まっさきに狙われるぞ?」

「じゃ、じゃあどうすんだよ」


 俺が聞き返すも、涼太は無言で歩き出す。

 そして、そのままたこ焼き店へと入って行った。


「腹が減っては戦もできねえってな!」

「結局、たこ焼きが食いたいだけじゃねえか!」


 たこ焼きを頬張りながら、涼太はご満悦だ。


「何をそんなに怒ってんだ? お前も食えよ、美味しいぞ」

「のんびりたこ焼きを食べてる場合かよ……もぐもぐ、ん、これは確かに美味いな!」

「だろう? おばちゃーん、たこ焼きもう1個追加で!」

「それでこれからどうすんだよ。神崎の居場所はわからないのか?」

「それがさー、美穂のやつさっきからケータイの電源切ってるらしくて一切つながらないんだよ」

「おいおい、それって大丈夫なのか? まさか奴らの仲間に捕まっちまったんじゃ……」

「いやー、さすがにそれはないよ。いくら美穂が猪突猛進だからって、敵のアジトに単身で突っ込むようなことはしないだろう」


 神崎ならやりかねない。

 そう思った。


「まあ、今さら心配したところでどうにもならんわけよ。俺たちは自分にできることをやる。ただそれだけさ」

「そうだけど……」


 涼太のやつ達観してるな。

 神崎と長く付き合ってるせいか、振り回されることに慣れてんのか?


 だけど、やっぱりもっと率先的に動かないと――。

 今こうしてる間にも誰かが実験に利用されているかもしれない。


 俺は残ってるたこ焼きを一気に口に放り込むと、急いで立ち上がった。

 すると――。


「海斗」


 涼太が俺に座れと目配せする。


「……?」


 涼太は真剣な表情で、くいっと指で他の席を指差す。

 その席のほうを見ると、女子高生の集団がわいわいと騒がしそうにたこ焼きを食べていた。


「涼太、お前というやつは……」

「しー、静かに。黙って、あいつらの会話を聞いてみろ」


 ……?

 こんな時に何を言ってるんだ。

 そう思いながらも、女子高生の集団に耳を傾ける。


 すると――。


「えー、広子が音信不通?」

「そうなんよ。メールも電話も繋がらへんしどうしちゃったんやろか」

「冬休みやし、どっか旅行にでも行ったんとちゃうん?」

「そんなはずないわー。広子がうちらとの約束をすっぽかすわけないやろ?」


 そんな声が聞こえてきた。


「まさか、これって……あれ、涼太?」


 ふと涼太のほうに目を戻すと、涼太の姿がない。

 いつの間にやら、涼太は女子高生の集団と同席している。


「なるほどー。広子さんは一昨日の夜から連絡が取れないわけですね?」

「そうそう、そうなんよー」


 あの野郎、何を普通に溶け込んでやがるんだ。

 下手に事件のこと聞きまわったら危険だって自分で言ってたくせに。

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