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44 第二の事件

「うおおおおおっ!」

「そんなに慌ててどうした涼太。お前も特売セールか?」


 近所のスーパーに買い物に行こうとすると、後ろから涼太が必死な顔をして追いかけてきた。


「アホかぁああっ! 大変だ、大変なんだよ海斗!」

「なんだどうした!? とりあえず落ち着け。はい、深呼吸!」

「スーハースースウゥゥゥ、げほっごほっ」

「吸い続けてむせてんじゃねえよ。そんなに取り乱してどうしたんだよ」


 涙目になり苦しそうに悶える涼太。

 俺は涼太の背中をさすりながら、落ち着かせる。


「これを見てくれ」

「なんだ、ただの紙切れじゃないか。どれどれ、しばらく実家に帰ります……? ほほう、お前、神崎とケンカでもしたのか」


 この二人でもケンカなんてするんだ。

 俺は少し驚きながら、涼太のほうをチラリと見る。

 思いのほか深刻そうな顔をしている。


「それがさ、ケンカなんてしてないんだ」

「じゃあ、ただ実家に帰っただけってこと? っていうか、神崎って実家住まいじゃなかったんだ」

「ああ、美穂は元々関西に住んでたみたいだからな。今は一人暮らしなんだよ。って今はそんなことはどうでもいいだろ! 美穂は両親が離婚して以来、親と絶縁状態なんだ。だから帰る家なんてどこにもないんだよ」

「うーん? 仲直りしたんじゃなくて?」

「そんなはずはない。もし両親と仲直りして実家に帰るなら俺も一緒に連れて行くはずなんだよ」

「へぇ、もうそんな結婚前提レベルまで昇格してたのかよ。おめでとう。結婚式には呼んでくれよ?」

「茶化すなよ、真面目な話なんだ」

「すまんすまん。それで神崎が実家に帰ったことがどうしてそんなに大事件なんだ?」


 涼太はごくりと息を飲み込みながら、真剣な面持ちでこう言った。


「最近、関西のほうで新たな行方不明事件が起こっているのを知っているか?」

「え、それって……」

「ああ、そうだ。今から半年前、俺たちが出くわした異世界シンドローム事件。あれと似たような事件が関西を中心に起こり始めている」

「ええ? そんな話、聞いたことないぞ。ニュースでもやってなかったし。何かの間違いじゃないか?」

「情報元は、特殊訓練兵の西崎先生だ。美穂はその話を聞いた翌日に突然、姿を消した……」

「じゃあ、神崎はその事件に巻き込まれたのか?」

「いや、違う……と思う。おそらく美穂は……」


 涼太はさっき俺に見せてきた紙切れをじっと見つめがら言う。


「止める気なんだよ。再びあのような悲劇が起こらないように。今度こそ自分の力でなんとかしようとしている……。俺に心配かけないように、こんな嘘の置手紙を残して、一人で事件を解決する気なんだよ」


 なるほど、話は大体わかった。

 正直、あんな事件にはもう二度と関わりたくない。

 もう誰かを傷つけたり失ったりするのはたくさんだ。


 だけど――。

 もし俺に何かできることがあるというのなら――。

 これ以上、誰かが苦しむ姿を見たくない。


「分かった。俺たちも行こう、関西へ!」


 事件はすでに動き始めている。

 立ち止まっている場合じゃない。


 神崎は悩むことなく、救う道を選んだ。

 それならば俺も――。


「さすが海斗、お前ならそう言ってくれると思ってたぜ! 本来なら、海斗に頼らず一人で追いかけるべきだと思ったんだが……」

「何を水臭いこと言ってんだよ。俺に相談もなしにそんな勝手な真似したら絶対許さないからなッ?」


 俺たちは駅に向かって走り出す。

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