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41 その後

 事件から数ヶ月が経過したある日の出来事――。


---


「おーい、海斗! 大変だ大変だーッ!」

「なんだどうした!?」


 尋常じゃない様子の涼太。

 ドタドタと慌ただしく教室に入ってくる。


 俺は平和に慣れすぎて、忘れかけていた。

 ――忘れてはいけないあの事件ことを。


 そうだ、俺たちはつい最近まで命を狙われていたのだ。

 西崎先生たち特殊訓練兵のおかげで今もこうして生きていられるけれど――。

 地下世界で起きたあの事件以来、幾度となく俺たちは謎の組織に殺されそうになった。

 全てを知る人物として――。


 事件は世間的には解決したが、多くの謎を残したままだ。

 それでも西崎先生の配慮で俺たちは普通の高校生活を送れるようになった。


 それでも、再び何か事件が起こるようなことがあったなら俺は――。


「宿題をやり忘れた! 見せてくれッ!」


 俺の心配を他所に、涼太はあっけらかんとしてそんなことを言いだす。


「なんだよ、そんなことかよ。また例の組織の連中がやってきたのかと思ったじゃねーかッ!」

「いて、いててて。頭をグリグリすんなッ!」


 全く、コイツは。

 あんなことが起きたのに、事件が起こる前となんら変わってないじゃないか。

 いや、下手したら前より酷くなってるかもしれない。


「ったく、しょうがねえな。次からはちゃんと自分でやってこいよ?」

「へへっ! さっすが海斗。頼りになるのはやっぱり海斗だけだよー」

「神崎はどうしたんだよ。宿題なら彼女に見せてもらえばいいだろうが」

「いやー、アイツは宿題なんてやるようなタイプじゃねえだろ?」


 そういえばそうだった。

 神崎はいつも授業そっちのけで自分のやりたいことをやるようなそんなやつなのだ。


 自由奔放で思い立ったら即行動の神崎。

 それに振り回される涼太。

 そんな涼太がちょっぴり不憫に思えてくる。


「涼太、お前よく神崎と続いてるよなぁ」

「んーまあ、仲良くやってるよ。美穂みたいにぐいぐい引っ張ってくれるほうが性に合ってるんだよ」


 涼太は他力本願なところがあるからな。

 確かにそう言った意味では神崎とお似合いなのかもしれない。


「それよりさ、海斗はどうなんだよ?」

「どうって、何がだよ」

「奈央ちゃんのことだよ。この前、告白されたんだろう?」

「えっ、ちょ、なんでお前がそんなこと知ってんだよ」

「へへーん、美穂から聞いたんだ」


 くそ、神崎経由か。

 奈央め、余計なことを……。


「それで、付き合うのか? 良いじゃん、お似合いだと思うぜ?」

「うーん、どうだろうなぁ?」

「海斗、良いか良く聞け。お前みたいなやつは奈央ちゃんを逃したら一生、彼女なんてできないぞ?」

「お前、真面目な顔して随分と失礼なことを言うやつだな」

「へへ、だってお前、こうやって背中を押してやらないとうだうだ考えてばかりでちっとも前に進まねーじゃん?」


 言われなくても分かってるさ。

 奈央のことだってちゃんと考えてるつもりだ。


 だけど――。


「ま、まあ、俺は一人でいるほうが気楽だからさ」


 俺はそう言って、窓の外を見る。

 秋の澄んだ空に浮かぶ太陽が優しく光り輝いているように見えた。

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