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4 涼太の妹

 涼太の家に勝手に上り込んで、失踪事件の調査をしていた俺たち。

 すると、誰かが家に帰ってきた音がする。


「おい、何してんだよ。マズイって」

「カイちゃんなら大丈夫やって」


 逃げ隠れせずに、俺の背中を押して部屋から押し出そうとする神崎。


「そう言って、俺をおとりにして逃げる気だろ? そうなんだろう?」

「えー、なんでバレたん? ええやん。うちら三人捕まるよりはマシやろ?」


 いやいや、あり得ませんから。

 なんで俺が損しないといけないんやっちゅうねん。

 あ、関西弁がうつっちまった。


「ねえ、ちゃんと謝ったほうが良いよ。涼太のクラスメイトなんだから話せば分かってくれるって」

「そ、そうだよな。誠心誠意謝ったら許してくれるよな? ほら、神崎も……」


 窓から逃げ出そうとする神崎を取り押さえる。

 そして、ああでもないこうでもないと言い争う俺たち。



 

 すると、階段を上がってくる音が聞こえてくる。


「あれ、お兄ちゃん? 帰ってきてるのー?」


 どうやら、帰宅したのは妹のようだ。

 一歩、また一歩と足音が近づいてくる。


「どどどど、どうしよう?」

「もうこうなったらしゃーないやろ。カイちゃん、相手したってーな」


 そう言って、ニヤニヤと笑う神崎。

 随分と余裕だな、おい。

 もしかして、慌てふためく俺を見て楽しんでるのか?


 くそう、ふざけやがって。




「え、誰?」

「や、やあ。初めまして」

 

 きょとんとしながら俺たちを眺める涼太の妹と思しき少女。


「きゃあああ、不審者ぁああッ!」

「おうふ、おうふ、痛い。痛いからやめて。は、話せば分かる! とりあえずその竹刀をしまってくれえええ!」


 涼太の妹に竹刀で何度も叩かれた。

 一体どこから取り出したんだよ。


 


 なんとか妹を落ち着かせ話ができたのはそれから数十分後のことだった。


「ごめんなさい。兄の友達とは知らずに……」

「いや、俺たちのほうこそ勝手に部屋に入っちゃって、すみませんでした」


 なんとか和解するも、重たい空気が流れる。


「彩夏ちゃんに聞きたいことがあんねん。涼ちゃん、どこに行ったか知らへん?」


 何事もなかったようにあっけらかんとそんな質問をする神崎。

 元はといえば神崎のせいで、こんな目にあったというのに。


「ううん、分からないの。昨日、学校に行ったきり帰ってきてないから……う、うぅ、お兄ちゃん、どうしちゃったのかな、うっく、ひっく、うえぇぇん」

「おー、そうやったんかー。そら悲しいわなぁ、ええでええで、うちの胸で気が済むまで泣いてや」


 時折見せる神崎の優しさがなんかムカつく。





「つまり、涼太は昨日から行方不明ってことか」

「そうみたいだね」


 妹の了承を得て再び調査を再開する俺たち。


「しかし、手がかりになるようなものは何も残ってないしなあ」

「ねえ、このパソコンが怪しいと思うの」


 奈央が机の上に置いてあるノートパソコンを指差す。

 他人のパソコンをチェックするのはどうにも気が引けるが……。


「あー、あかん! パスワードが分からんわー!」

「って、何やってんだよ神崎」


 どうするか迷っていたら、早くも神崎がパソコンの電源を入れていた。

 しかし、パスワードでロックされ中を見ることはできないようだ。


「カイちゃん、涼ちゃんの誕生日っていつやっけ?」

「6月22日だけど、それが何か? いや、待て。お前、そこは諦めろよ。大体、誕生日をパスワードに設定してるわけが……」

「おー、入れたでー」

「マジかよ!」


 涼太、パスワードの意味がないぞ。

 これはもう仕方がない。

 涼太の自己責任ということにしておこう。


 断じて俺のせいじゃない。

 そう自分に言い聞かせる。


「なんや、あんまおもろいもんないなぁ」

「何を期待してたんだよ」

「人に見られたくないものとかあるんやないかと思ってしまうやん? それが、こんな小説サイトの履歴しか残ってないだなんて、おもろないわー。がっかりやわー」


 なんで人のパソコンを勝手に覗き見て落胆してるんでしょうね、この人。


「でもこれ、異世界モノの小説ばっかりだね」

「奈央ー! お前はまともだと信じてたのに! 俺は悲しい、悲しいよ!」

「海斗は大袈裟だなぁ。ちゃんと調査しないと意味ないじゃないの」

「いやいや、こんなところに手がかりなんてあるとは思えないぞ?」


 ミステリーじゃあるまいし。

 ノートパソコンに失踪の痕跡が残されているとは思えない。


「そういえば、お兄ちゃんは異世界に憧れてたみたいだよ」


 涼太の妹の彩夏が思い出したように言った。


「ふむふむ、なるほどねー。ほら海斗。やっぱりそうだったんだよ」

「そうって、何が?」

「最初に言ったでしょ? 涼太は異世界に召喚されたって」

「ああ言ってたな。で、それが何か?」

「うん、だから涼太は異世界に憧れていた。だから異世界に召喚されたんだよ」

「いや、意味が分からないから。異世界に憧れるだけで召喚されちゃったら、もっと大勢の人が召喚されてるんじゃないかな?」


 どうしよう、俺の知ってる奈央じゃない。

 昔はこんなバカなことを言う子じゃなかったのに!


 一体、奈央に何があった?


 はっ、まさか!

 これも神崎のせいなんじゃなかろうか。

 そうだ、神崎が奈央を狂わせたに違いない。


 くそう、神崎め、絶対に許さん、許さんぞおおお!


「あ、あれ、そういや神崎はどこだ?」

「あれ、いないね。どこ行っちゃったんだろう?」


 涼太の部屋を見渡しても神崎の姿はなかった。


「そんなバカな、さっきまでそこに居たはずなのに――ッ!」


 なぜだろう、嫌な予感がする。

 涼太がいなくなった時と似たような感覚――。


 まさか、神崎も――?

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