32 戦闘
「ははーん、まだ生きてんのか。しぶといやつらだぜ」
「お前は……ポンタロス!」
「パニシエルだバカ! まあ、そんなことはどうでもいいけどな。悪いがお前ら人間どもには全員死んでもらうぜッ!」
爆弾を仕掛けたのは、メリアンダと一緒にいた謎の男パニシエルだった。
パニシエルの手から大量の爆弾が投下される。
「やばい。あんな大量の爆弾を避けきることなんて……ッ!」
「ここは俺に任せて下がってろ」
西崎先生がそう言って俺たちの前に躍り出た。
そして、隠し持っていた小刀で大量の爆弾を全て真っ二つに斬り伏せる。
まさに電光石火の早業だった。
「へぇ、やるじゃないか。さすがは特殊訓練兵といったところかな」
少し驚いたように笑うパニシエル。
「これ以上、俺の生徒に危害を加えるようなら容赦はしないぞ?」
「はん、やってみろよ。ただのおっさんがボクに敵うとでも思ってるのかい?」
パニシエルと西崎先生が激しい戦いを繰り広げる。
「おいおい、どうなってんだよ。あれ、本物の西崎先生だよな? あんな人間離れした動きができたのかよ……」
「ザッキーは凄い人なんやで。一度だけテニスで試合したことあるんやけどな、アウトのボールも全て打ち返してくるんやで!」
「そ、それ、テニスとしてどうなんだ?」
二人が激しい戦いを繰り広げる中、俺たちは至ってのんきなもんだった。
あまりにも現実離れしたことが起きると、逆に冷静になるのかもしれない。
「そんなことより、私たちも西崎先生に加勢したほうが良いんじゃないかな?」
「いや、無理だろ。俺たちがあの中に入ったら、即死だぜ?」
「涼太ならいけるんじゃないか? ほらお前、空手やってたことあるだろう?」
「何年前の話だよ。大体、空手でどうにかできる場面じゃないっつーの」
誰かあの二人を止められる人はいないのか。
このままじゃ、部屋が破壊されて生き埋めになっちまうよ。
「よっしゃ、うちが止めたるわ」
「何言ってんだ、それなら俺が止める」
「じゃあ俺が……」
「どうぞどうぞッ!」
「ちょっと、ふざけてる場合じゃないでしょ。何やってんのもう!」
べ、別にふざけてるわけじゃねーし。
「二人とも落ち着いてくださいッ! パニシエルさん、あなたは薬を探していたんじゃないんですか!?」
意を決して、俺が叫ぶ。
パニシエルの手が一瞬止まる。
「ふん、確かにボクは薬を探していたさ。生き残るためにね」
「だったらもう争う必要なんてない。俺たちは、パニシエルさんの味方だ。薬なら、この研究所のどこかにあるはずだ。だから……ッ!」
「ハハハ、笑わせるな。もう何もかもが遅いんだよッ! お前たち人間は、俺たちクローンを大量に殺した。ボクは今、その復讐のために動いている。この研究所もろとも全てを破壊し、そしてボクも……」
……!?
仲間が殺されて自暴自棄になってるのか……ッ!
「……そうか。復讐か。ならば、俺を殺せ」
「に、西崎先生?!」
武器を捨て、パニシエルの前に棒立ちする西崎先生。
「何のつもりだ?」
「俺たち訓練兵が君たちの仲間を殺したことは事実だ。何も知らなかった、などと言い訳するつもりはない。俺を殺して気が済むのなら今すぐ殺せ。だが、他のやつらをこれ以上巻き込まないでくれ、頼む」
そして、そのまま地に頭をつけた。
「……やめろ。やめてくれ。ボクはこんなことを望んじゃいないッ! これじゃあ、まるでボクが悪者じゃないか。違うッ! 仲間を殺したのはこいつら人間じゃないか。そうだ、悪いのはこいつらなんだ。ボクは間違っちゃいない。間違ってなんかいないんだッ! ハハハッ。そうだよ。悪いのは人間だ。人間を全て滅ぼさなきゃ……。死んだ仲間たちのためにも……ボクがやらなければいけないんだ」
パニシエルが泣きわめきながら、懐に手を伸ばす。
「ば、爆弾! よせ、パニシエル。そんなことをしても死んだ人たちは生き返らないぞ!」
「ハハハ、ハハハハ! そうだ、そうだとも。もう何もかも手遅れなんだよ。ボクが……終わらせる……この手で……」
そして、火をつけようとしたその時だった。
一発の銃弾がパニシエルの身体を貫いた。




