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24 化物

「フフ、フフフ……アハハ、アッハハハハ!」

「お、大谷……さん? ど、どうしたの急に笑い出したりして……」


 急に笑い出した大谷さんの顔を覗きこむ。

 すると――。


「がはっ!」

「フフ、フフフフ……もう逃がさない……」


 いきなり首元を思いっきり掴まれる。

 なんて力だ……。


 息ができない――ッ!


「海斗、危ないっ!」


 鈍い音と共に大谷さんが倒れる。


「げほっ、ごほっ、な、奈央……?」

「ハァハァ、ど、どうしよう……私、殴っちゃった……。お、大谷さんを……」


 奈央が血の付いた鉄パイプを手にガタガタと震えている。

 その鉄パイプからは真っ赤な血がポタポタと滴り落ちていた。

 すぐ横には血まみれとなった大谷さん。


「どうしよう、私、人をこ、殺しちゃった……私、私……」

「奈央、落ち着いて」

「でも、わ、私が大谷さんを……!」

「落ち着けって言ってんだろ。とにかく、まだ生きてるかもしれない。どんな怪我でも治してしまう青木さんを呼んで……」


 息があるか確かめようと近付いたその瞬間。

 再び大谷さんの目がガッと開いた。

 人間離れした悪魔のような目をしている。


「ひぃッ!」


 そのおぞましい姿に思わず後ろに仰け反った。

 そして、大谷さんは何事も無かったかのように立ち上がる。


「痛い……痛いよ、小林さん。どうして? どうして殴ったの? ねぇ……」


 ゆらゆらと手をぶらつかせながら、歩み寄ってくる大谷さん。


「ご、ごめんなさい。で、でも私……」

「奈央、そいつから離れろッ!」

「え……あ、いや、こ、来ないで、いやああああ!!」


 まずい。

 奈央のやつ、完全に腰を抜かしてやがる。


 このままじゃ――。


 その時だった。

 突如として、ズドンという大きな音がした。

 それと同時に大谷さんが再び倒れ込んだ。


「よう、大丈夫かい」

「西崎先生!?」

「車に戻ったら誰もいなくて探してたんだよ。そしたら、ちょうど叫び声が聞こえてな」


 西崎先生が持つ懐中電灯からは何やら白い煙がもくもくとあがっている。


「危ないところだったな。まさかすでにこの地下にも奴らが紛れ込んでいたなんてな」

「奴ら? 一体、何なんですか。それに大谷さんは……」

「ふむ、理解できないかもしれないが、奴らはとある国が開発した生物兵器だ」

「せ、生物兵器……?」

「そ。人の姿をした化物……。それが奴らの正体だよ」

「じゃあ、大谷さんは……?」

「今のは偽物さ。本物はおそらくすでに殺されているだろうな」

「そ、そんな……」

 

 淡々と語る西崎先生。

 手慣れた手つきで、転がっている大谷さんの死体に火をつける。


「な、何をしているんですか」

「奴らは不死身だ。こうして焼かないとすぐに再生しやがるのさ」

「……ど、どうしてですか。なんでそんなに手馴れているんですか。先生は一体何者なんですか」

「言っただろう? 特殊訓練兵だってな。そもそもこの地下は奴らのような生物兵器から身を守るために極秘につくられた最先端の軍事施設なんだよ」

「ぐ、軍事施設? 防空壕っていうのは……」

「ああ、元は防空壕だっていうのは本当だぜ? まあそれも昔の話だけどな」


 この地下世界が、軍事施設?


「ハハ、せ、先生も冗談を言えるんですね。そ、そんなのあり得ないですよ。そんな軍事施設に、数日とはいえ高校生たちが勝手に住んでいたんですよ?」

「ああ、俺もあんときは驚いたぜ。まさか最新鋭の軍事施設が高校生の遊び場になってしまうなんてな。どうしたものかと手を焼いていたんだ」


 ってことは、先生が言っていることは紛れもない事実だということなのか?


「そんなことよりも、だ。この内部で奴らが見つかったというのは問題だ」

「どういうこと、ですか?」

「本来、この地下施設は誰にも見つかってはならない極秘施設なんだよ。そこに奴らが入り込んでいた……つまり、この場所が奴らにバレていることになる」

「……?」

「避難してきた住人たちの命すら危ういってことだ。おっと、こんなところでのんびりと話し込んでる場合じゃねえな。すぐに仲間と合流しねえと……」


 そういって、西崎先生が走り出す。


「ほら、お前らも一緒に来い。こんなところでぼんやりとしている暇はねえぞ」

「あ、はい。ちょ、待ってくださいよー、奈央、立てるか?」

「う、うん。ごめんね、迷惑ばかりかけて」

「何言ってんだよ。奈央がいなかったら俺は今頃……」


 奈央の手を取り、立ち上がらせる。

 俺の手をぎゅっと握り返して、奈央は優しく微笑んだ。


「おらぁ、イチャついてねえでさっさと来いやぁ!!」

「はい、今行きます!」

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