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23 治療

「最初は痛いかもしれないが我慢してくれよ」

「ひゃぅう」


 怪しい医者の青木が奈央の治療をしている。

 怪我をした足に何やらでかい注射針のようなものを何本か突き刺していく。

 それと同時に奈央の顔が徐々に険しくなっていく。

 痛みを相当我慢している顔だ。


「お、おい、凄い痛がってるじゃないか。本当に大丈夫なんだろうな?」

「だから外で待ってれば良かったのに。治療の邪魔だけはしないでくれよう?」


 俺は耐えかねて青木に掴みかかった。

 やれやれと言った感じで青木が俺の手を払いのける。


「何が治療だ。こんなの見たことも聞いたこともないぞ。奈央を苦しめて楽しんでるんじゃないのか?」

「ハハハ、面白いことを言う子だ。俺っちがそんなやつに見えるのかい?」


 見えるから言ってんだよ。

 しかし、奈央は俺のほうを見てにっこりと微笑む。


「私なら大丈夫。大丈夫だから」

「大丈夫ってお前、汗びっしょりじゃないか。こんな治療法おかしいよ。すぐにやめさせて……」


 俺が奈央の足に突き刺さっている注射針を抜こうとする。

 そこではたと気が付いた。


「え……嘘だろ。さっきまであんなに傷だらけだったのに……」

「これで信じてもらえたかな? さて、こんなもんで良いだろう。もう動いていいよ」


 奈央の傷が綺麗に消えている。

 青木が得意げな顔をしながら奈央の足に刺さっていた針を抜いていった。 


「い、痛みが消えた……。そ、それにさっきまで全然動かなかった足が動く……。す、すごい……ッ!」


 奈央が立ち上がり足を動かし始める。


「な、何が起こったんだ。お前、魔法使いか何かなのか!?」

「医者だっつってるだろうに。ヒャハハ。まあ、俺っちに治せない怪我はないってことよ。あ、さすがに死んじゃったら治せないけど」


 信じられなかった。

 さっきまで、二度と歩けないと思っていた奈央が普通に足を曲げ伸ばししているのだから。


 その状況を見た俺はひたすら青木に頭を下げる。


「疑ってすみませんでした。俺、こんな治療法があるなんて知らなくて……」

「良いってことよ。そのお嬢ちゃん、あんたの彼女なんだろう? 女の子の身を案じるのは男として当然だからな! 幸せにしてやんなよぉ?」


 青木が笑いながらガシガシと俺の肩を叩いてきた。

 奈央は幼馴染なだけで彼女ではないのだが。


「さてと、他にも怪我人は大勢いるからな。俺っちはもう行くぜい? あ、足は完治してるけど、1時間くらいは急な運動は避けたほうがいいぜい、分かったな?」

「は、はい」


 俺が否定する間もなく、青木はニカッと笑ってそのままどこかへ行ってしまった。

 お礼もまだ言ってなかったのに。


「治療費も払ってないけど、良かったのかな?」

「さ、さあ?」


 残された俺たち二人は夢でも見たかのように茫然としていた。


「ほ、本当に治ってるのか? 痛くないのか? なあ」

「ちょっと、変なとこ触んないでよ! ……うん、大丈夫みたい。不思議な人だったね」


 奈央の足を触ってみるが特におかしなところはない。

 完全に元通りになっていた。

 あの注射針の痕すら残っていない。

 かなり不思議な出来事だった。



---



「あれ、西崎先生は……?」

「いないな。どこいっちゃったんだろう」


 車から降りて、辺りをきょろきょろと見渡す。

 青木を紹介してくれた西崎先生が見当たらない。


「色々と聞きたいことがあったんだけどなあ」

「ねえ、海斗。ここって地下なんだよね? どうしてこんなにたくさん人がいるの?」

「ああ、そうか。奈央はずっとこの中にいたから知らなかったのか……。俺も詳しいことは分からないが地上で何かが起こってこの世界に避難してきてるみたいなんだ」

「何かって?」

「わからない。化物がどうとかって話だったけど……」


 西崎先生がいればそのことも詳しく聞けたんだが……。


「あ、あのー」


 俺たちのほうに誰か近づいてきた。

 暗くてわかりにくかったが、その声で誰かすぐにわかった。

 大谷さんだ。


「あ、やっぱり夏野君。頭の怪我はもう大丈夫なの?」

「ああ、うん。なんとかな。あれ、大谷さんも右手を治してもらったの?」

「えっ! あ、そう。うん、そうなの。さっき治療してもらってそれで……」

「そっか、凄い医者がいるもんだよね。俺もびっくりしたよ」

「そ、そうだね……」

「大谷さん……? どうかしたの? 顔色悪いけど」

「ううん、なんでもないの。それより美智子を見かけなかった?」

「中村さん? 見かけてないよ。どうかしたのかい?」

「ちょっと目を放した隙にいなくなっちゃって。一緒に探してもらえないかな」

「おう、わかった」


 聞きたいこともあったし、俺は中村さんを探す手伝いをすることにした。




---




「ねぇ、海斗。ねぇってば」

「なんだ奈央、どうした?」


 奈央が大谷さんに聞こえないように小声で話しかけてきた。


「大谷さん、何か様子がおかしいよ?」

「そうか? 俺、あまり話したことないからよく分からないけど」

「うん、何か変。さっきから、周りを気にして歩いているし……」

「中村さんを探してるんだから当たり前じゃないか」

「だから変だって言ってるのよ。だって、私たち……どんどん人がいないほう所へ連れてこられてない?」


 確かに変だ。

 中村さんを探すなら、もっと人が多い場所で探すべきだ。


 それなのに――。


「フフ、フフフ……」


 大谷さんが不気味に笑い始める。

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