表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/71

13 黒歴史

「やーまーだーくん、あそびましょうーっ!」

「小学生か、お前は」


 大豪邸の前で、物怖じせずにニコニコしながら神崎が叫ぶ。

 俺たちは今、隣のクラスの山田の家へとやってきたところだ。


 しかし、反応はない。

 誰もいないのだろうか。


「よいしょっと」

「いやだから待てよ」

「なんや、どうしたん?」

「どうしたん、じゃないよ。なんでお前はすぐそうやって窓から侵入しようとするんだよ。アホなのかよ」

「アホってひどいなー。うちら山田に会いにここまでやってきたんやで?」


 それはそうだ。

 だが、涼太の家と違ってそう簡単に侵入できそうな家ではないのだ。


 仮に侵入しても、通報装置が鳴ってすぐに捕まるだろう。

 そのくらいの大豪邸なのだ。


「あらあらまあまあ、こんなところに集まってどうされたんです?」


 どうするか悩んでいると、庭のほうから優しそうなお婆さんがやってきた。


「あ、あの、隆文君はいらっしゃいますか?」

「あらあら、困ったわねえ。隆文は家に居ないと言ってくれって言われてるんですよ」


 つまりいるんですね。

 人が良すぎるのか、嘘がつけないらしい。


「それでは、上がらせてもらいます」

「あらあらまあまあ、ではお茶を入れてこようかしら」

「どうぞお構いなく」


 なんとか山田の家に上がることができた。


「おー、カイちゃん、見てみー、この置物めっちゃ高そうやで! この絨毯も! あ、こっちも!」

「静かにしろよ。こっちまで恥ずかしくなってくるわ」

「うふふ、美穂はいつも楽しそうね」

「笑いごとじゃないだろ。お前、よく神崎と友達で疲れないな」


 そんなことを話しながら二階にある山田隆文の部屋へとやってきた。


「お邪魔しまーす!」


 ノックと同時に勢いよく扉を開ける神崎。

 ノックの意味あるのかそれ。


「なあああああああっ!」


 呆気にとられ部屋の外で立ち尽くしていると、中から悲鳴のような声が聞こえた。

 慌てて部屋に入る俺たち。


「隊長、犯人確保しましたーっ!」

「ひぃいい、痛い、痛い! 痛いってば!」


 山田をベッドに押さえつけ、身動きを取れないように後ろ手に縛り上げようとしている神崎の姿が目に映る。


「おい、バカやめろ。何やってんだ」

「えへへへ、こういうの一度やってみたかったんよ。なんか刑事ドラマとかでよくあるやん?」

「やられるほうの身になってみろよ」


 何が起きたか理解していない山田は目を白黒させて神崎のほうを見つめていた。




---




「さて、落ち着いて話を聞こうじゃないか」


 お茶を飲みながら気を取り直す。

 お婆さんが入れてくれたお茶だ。

 高級なのだろうか、さっぱりとしているようで深みがあってそれでいて苦味が絶妙なハーモニーを奏でている。


「話って何さ。何と言われようとも僕はもう学校にはいかないからね!」

「まずはそこからだ。半年ほど前から、誰とも連絡を取らないようになったのは何故なんだよ」

「そんなの言えるくらいなら、学校に行ってるよ」

「なるほど、やっぱりこれが原因ってことでいいのかな」


 ひらりと山田の書いた小説のプリントを机に置いた。


「うわああ、やめて、やめてえええ。僕の黒歴史がああ! うわああ、やっぱり死のう、生き恥をさらすくらいなら、死んだほうがマシだああああ」

「お、落ち着け! ほら、神崎も笑ってないで止めろよー」


 プリントをビリビリに破りながら暴れ狂う山田をなんとかなだめる。


 山田が引きこもりとなった理由。

 それは、自身が書いた小説だった。

 明るくて前向きで、八方美人な性格の山田の裏の顔。

 山田はそれを知られることを極度に恐れていたらしい。


「ええやん、別に。何をそんなに取り乱してるん?」

「だ、だって、この小説は僕の夢と妄想が詰まってるんだよ? こんなものを書いてるなんて知れたら、白い目で見られるに決まってるじゃないか!」

「自分が書いたものにそないなこと言うもんやないで? もっと自信もったらええねん。うちは好きやで? こういう涙あり笑いありの異世界冒険活劇」

「か、神崎さん……」


 手と手を取り合い、何かを分かり合った山田と神崎。

 良い話ダナー。


「でも、ちょっと下ネタが多すぎやんな。山田君、彼女おるのに欲求不満なん?」

「うわああああ、やっぱり死ぬ、死んでやるうう」


 神崎は余計なひと言が多い。



---



「なるほどなー、自分が小説を書いてることが彼女にバレてしまったっちゅうわけやな」

「そう、です……。もう彼女に合わせる顔がありません」


 半年前のある日、家に遊びに来た彼女に小説のことがばれた。

 そのことがキッカケで山田は引きこもることになったという。


「しっかし、たかが小説くらいでオーバーだなあ」

「せやね。カイちゃんも、よくこういう妄想しとるもんな」

「そうそう、俺も……って何を言わせようとしてるんじゃボケェ!」


 俺からしたら誰がどんな小説を書いていようがあまり気にならないんだけどなあ。

 本人にしてみたら重要なことなのだろうか。


「ところで、山田の彼女ってもしかして……」

「白井さんだよ、海斗知らなかったの?」


 あ、やっぱり。

 あの小説のプリントを持っていたからそんな気はしていたが。

 

「なんだよ、知ってたなら早くそう言ってくれよ」

「知らないなんて海斗くらいだよ。山田君が異世界に召喚されたって言ってたのも白井さんだし」

「初耳だぞ、おい。そういう大事なことをなんでもっと早く言ってくれなかったんだ。その情報があれば、もっと早くにここにたどり着くことができたかもしれないのに!」

「だって、聞かれなかったし、異世界に召喚されたって言っても海斗信じてくれなかったじゃない」


 それは信じないだろ。

 大事なのはそこじゃねえ。

 その情報を流してたのが白井だったということだよ。


「まあ、ええんちゃう? これで涼ちゃんたちも助けられるやん」

「山田に説得してもらうってことか? そんなんで、涼太たちは帰ってくるのかなあ?」

「大丈夫や、うちにいい考えがあんねん」


 胸を張って自信満々に神崎が言った。

 その秘策とは――?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ