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探偵は眠らない!  作者: ゐぬい
四士編
6/6

ゆく猫くる猫 捜索

 俗にいう探偵っぽい服はインバネスコートと呼ぶらしいが、この小さな探偵はどうやら、ワイシャツに黒のネクタイ、膝下までのスカートにストッキングと、その全てに被さるようにベージュのトレンチコートという、どちらかと言えば刑事みたいな格好である。

 身軽な格好ではあるが、トレンチコートはなんだか大きすぎる気がしなくもない。いや、身長のもんd

「今、アンタ失礼なこと考えなかった?」

 鋭いし、早ぇ。

「いや、なんも」

 小さいなどと言うと、どんな目に遭うか一日目にしっかりと学習した。

「さて、探すと言ってもアテがあるわけじゃないわ」

「どうやって見つけるんだ?」

「まあ、無難に聞き込みでしょうね」

「そうだよなぁ」

 聞きこみ調査。

 最も大事ではあるが、最も面倒なもの。己の忍耐とコミュニケーション力が試される。

「一晩経ってるみたいだし、捜索範囲は広い方がいいかもしれないわね。まずは依頼人の家周りから順に聞いていきましょう」


 依頼人の家はそう遠くはない、徒歩五分の圏内だ。駅まで徒歩五分という表示をよく見たものだけれど、五分で着いた試しがない。もしかすると、俺の足が遅いだけだったりするかもしれないが。

「ここら辺ね」

 中央に向かってものすごい傾斜をつけていくタイプの屋根が連立している。愉快な一家のエンディングの家もこんな家だった。

 家の表面に耐震のためなのかよくわからないが、屋根の下で交差している木と、漆喰で塗り固めたような白い壁。

 一帯が住宅地のようだが、ところどころに商業施設も混じって、いい雰囲気の場所だ。金を貯めたらここに住んでもいいかもしれない。

「まあ、手始めにあの店主にじんも…じゃなくて聞き込みをするわよ!」

 どんな言い間違えだ。


「いらっしゃい!」

 パン屋だ。焼きたてなのか、辺りに香ばしい匂いが立ち込めている。

 やべえ、よだれ出てきた。

「ベイク、ちょっと協力してもらえないかしら?」

「ライカじゃねえか。どうした?」

 知り合いだろうか?

「ちょっと猫を探しててね。白い猫」

「さあどうだったか…」

 しばらく考え込んでいたが、俺に気付いたのかハッと目を開けて

「そいつは?」

「助手よ」

「…あ、山城カズキです」

「お前雇う金あったか?」

 コイツの金の無さはここら一帯に知れ渡ってんのかよ。

「ないわ。その代わり住み込みで働いてもらってる」

「ほぉ…」

 まじまじと俺の顔を見つめると、いきなりニコッとした。

「改めて、俺はこのパン屋の店主のベイクだ」

「ライカを頼むよ」

 遠くを見つめるその顔は知り合いというよりむしろ父親のように見える。

「コイツ片付けねえし、人付き合いもあんまりよくねえんだ」

「あぁ…」

 確かに。

「何納得してんのよ」

「ま、とにかく。お前とは長い付き合いになりそうだな」

「じゃあ、またいつか買いに来るわ」

「おうよ」

 こうやって周辺の住民に聞き込みをしていったものの、めぼしい最新の目撃情報はなく、まあ骨折り損に終わったわけだ。

「いや、得るものはあったわ」

「どうせここにはいないって事実だろ」

「そうよ。でもその事実が大事なのよ」

「ッつったって、しらみ潰しに探すわけにもいかないだろ?猫はリアルタイムで動くんだぜ?」

「そうね…」

「あ、魔法は?」

 この世界には魔法があるじゃないか。

「……ま、たまには頼りましょうか」

 実を言うと、ライカが魔法を使うところはまだ見たことがない。まあ、日常的に魔法を使うこと自体があまりないのだ。…そこらへんの話はまたあとで。

「じゃ、魔法を使いに行くわよ」

「使いに行く?」

「まあどちらかと言えば使わせてもらうかしら?」

「……まぁ、早く見つかるなら何だっていいさ」

 とりあえず、ライカについて行くことにした。


 どうやら、その魔法を使う場所というのは今いるパン屋から少し離れたところにあるらしい。その道中に魔法について少し聞いてみることにした。

「この世界ってやっぱ魔法使えるのか?」

「まあ、たいていの人はね。でも使えない人もいるわ」

「使えないって…」

 みんな使えるものだと思ってた。

「結局、魔法はセンスと魔力量なの。私も使えないけど」

「……え?」

「あによ」

 ギロッと鋭い視線が下からくる。

「私には魔力がなかったのよ。センスはあったかもしれないけど、使えないからわからないわ」

「俺はどうだろうな」

「アンタは多分使えない」

 コイツ、バッサリと言いやがった。

「だって異世界人でしょ」

 ……ちょっと期待してたんだけどな。魔法無双。主人公補正はかからないのか。

 ああ、ちなみにライカには異世界人であることを伝えている。別に隠すこともないし。そこらへんはまた後日記すとしよう。

「さ、着いたわ」

 やってきたのは初日に立ち寄ったギルド。ライカに教えてもらったが、正式には『冒険者ギルド』と言うらしい。看板には大剣と金貨がでかでかと描かれているのみ。

「知り合いに索敵を頼んでみるわ」

 どうやらライカは顔が広いらしい。ギルド嬢ですらライカの名前を知っている。

 てか、魔法使いの知り合いってなんだ。どうしたら知り合うんだろうか。

 おそらく報酬を受け取るようなカウンターで、

「カリオスはいる?」

「カリオス様ですね。少々お待ちください」

「え、お偉いさんなの?そのカリオスさん」

「まあ、ね。有名人というか、元勇者パーティーの魔法使いよ」

「は?」

 勇者パーティーの魔法使い?勇者って?あの魔王の?というか魔王いるの?

「第七十五代だったかしら?ま、とにかくすごい人」

 七十五代っ。え、そんなに魔王いっぱいいるの?

「…というか、お前。なんでそんな人と知り合いなんだ?」

「同級生なのよ。数少ない級友ね。アイツが卒業できたのは私のお陰と言っても過言じゃないわ」

 フンと鼻を鳴らして、誇らしげに話すライカ。

 信じられん。

「やっほいライカ。待たせたね!」

 カウンターの奥の方から出てきたのは、赤髪に白いローブに身を包んだ男。身長は俺よりもちょっと大きいぐらい。整った顔で、肌がツヤツヤしてる。

「俺になんのようかな?」

 勇者パーティーの一員と言うから、もっと厳格な性格をしてるかと思っていた。実際は、目がキラキラして、こう、一軍陽キャのオーラが出ているというか。ライカのことを慕っているのがその言葉、声から滲み出ている。

「ちょっと手伝ってほしいことがあって」

「もちろん!ライカの頼みなら何でもどうぞ!」

 …なんか犬みたいな人だなぁ。と、ものすごく失礼なことを考えてしまった。

 と、俺に気づいたのか、こっちを見て

「あれ、この子は?」

「助手よ」

「いたっけ?」

「最近雇ったわ」

 ジーッと見つめる。

「うん!カリオスだよ。よろしくね!」

「山城カズキです」

「東の方出身かな?まあいいや」

 まあ、一応ここはイギリスと変わらないみたいだし、ライカにも言われたが苗字が先にくる俺は珍しいらしい。

「それで?」

「探索魔法を半径5kmぐらいでやってほしいわ。探すのは白い迷い猫」

「まったく。人使いが荒いなあ」

 文句を言いつつも、ケラケラと楽しそうに笑う。

 まあ、人使いが荒いのは激しく同意するが。

「アンタなら余裕でしょ」

「信頼されてるのは嬉しいけどね」

「腕を買ってなきゃこんなとこ来ないわ」

「確かに。不潔は嫌いだもんね」

 嘘つけよ。部屋の散らかり用はなんだ。

「ん。終わったよ」

「どこにいた?」

 この数十秒、雑談している間に終わったらしい。というか、雑談の片手間にこなせるものなのか?

「じゃあ、今から地図に書き込むね」

 カウンターの奥から大きな地図が運ばれてくると、赤いペンで該当箇所にバツ印をつけていく。

「全部で五匹かな」

「で、地図を見る限りそこら辺をほっつき歩いてるのは一匹だけね」

 ライカは大通りの真ん中に堂々とつけられた印を睨む。

「…よし、行くわよ。ありがとね」

「お安い御用ってやつだよ」

「不本意だけど、アンタに借りができたみたいね」

「いつか事務所にお邪魔させてもらうから、美味しいお菓子用意しておいてね」

 そう言うカリオスさんに背を向け、俺たちはギルドを後にした。

年内に終わらなさそう…

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