ゆく猫くる猫 1
「そういや、アンタの名前聞いてなかったわ」
「山城カズキだ。まあこれから自立するまで頑張るよ」
そう意気込んで早二日。
暇すぎる。
言ってしまえば依頼がこない。現実はこんなものなのだろうか?
もっと、こう、殺人事件が舞い込んできたーとか、孤島に招待されてクローズドサークル的展開が待ってたとか、そんなことは一切なく、掃除して散らかった部屋を片付けて飯を作ってを繰り返していた。
まあ赤字なのも納得だ。
さすがに家計が火の車になってしまうので、たまにアルバイトをして日銭を稼いではいるが、それもいつまで続くかわからない。
「チリリリリ」
と、ドアベルが鳴った。
「カズキ、客よ!入れて差し上げなさい!」
久々の仕事かもしれないと、声からして張り切っている。
「はいはい。今でます」
ガチャリとドアを開けると、メガネをかけた白髪のご婦人がいた。どこか落ち着きがなさそうだ。
応接室まで案内すると、あのソファにちょこんと大人しく座っているライカがいた。俺はライカの斜め後ろに立つことにした。
「おかけになってください」
…俺のときと対応が全く違う。赤字のちょっとした助けになるかもしれない大事な客とはいえど、こうもあからさまに違うとは……。
「私立探偵のライカ・エルベレイです」
「シエンヌ・ローザと申します」
「ローザさんですね。今日はどうされましたか?」
ライカがそう聞くと、ゆっくりと話し始める。
「実は…。うちの猫がいなくなったんです」
「ネコ?」
「はい。ふと目を離した隙にいなくなっていて」
だんだんと息遣いが荒くなっていく。
「昨日から帰って来ないんです!」
「それで夜しか眠れないと」
「健康じゃねえか」
束の間の沈黙。
「と、とにかく。うちの子を見つけてほしいんです」
「写真とかあったりしますか?」
「これです」
ご婦人は傍に置いていたトートバッグから一枚の写真を取り出す。
「女の子です」
写真にはまつ毛が長く、毛並みが整った白猫が写っていた。
「この猫です。よろしくおねがいします」
「こちらは預かっても構いませんか?」
「はい。絶対に見つけてください!」
その後、依頼達成の際のお知らせのために電話番号を聞き、ご婦人は去っていった。
「さて…」
クルッとこちらを見るライカ。
「猫よ」
「…なんか地味だな」
「しょうがないじゃない。猫探しなんて、そこら辺の警察や衛兵が引き受けてくれると思う?」
「まあ、そう考えると必然的に探偵に回ってくるか」
やっぱり小説は小説なんだなあ。
「さあ、純白の女の子を捕まえるわよ!」
「その言い方探偵じゃねえだろ」
「何よ。間違ってないでしょ」
まあ、事実ではある…か?
「ま、とりあえず探しに行くわよ」
読みにくいかなと思ってちょっと字を減らしました。
その分いくつかに分類する必要がありそうだけどまあなんとかします。




