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探偵は眠らない!  作者: ゐぬい
転生編
1/5

ようこそ御都合主義の天界へ

初投稿なので大目に見てもらえればなあと思います。

「……さん」


 、、、?


「…マ…キさん」


 、、誰だ、、?


「ヤマシロ カズキさん」

「ハイッ!!」

 自分の名前を呼ばれたからなのか、反射的に返事をしてしまった。

 …で、ここはどこだ?、、眩しいな‥

「目を覚ましましたか?」

 きれいな声のする方を細目で見ると、そこにはぼんやりと人影があった。

 目が慣れてきた…。何度か目を瞬くと、そのおぼろげな人影もあらわになってきた。

「あなたは…?」

「私は女神アグネスです」

 そこには少し気恥ずかしそうな顔をした美人が立っていた。


「えっと…女神?」

「はい、そうです!」

「女神って、あの?」

「たぶんそうです!」

 勢いがすごいな…。

 そのアグネスと名乗る女神は、茶髪のショートヘアに洗礼されたような白い服を来ていて、目の色が緑色だった。

 …アグネスなんて女神聞いたことないな。

「で、ここはどこなんだ?」

 俺が何となく聞いてみると、やや気まずそうな顔で言った。

「ここは、、、天界です。あなた、山城カズキさんは…その、、」

 焦らすな………。

「…残念ながら亡くなりました」


 …死んだ?

 俺が?

 うそだろ女神。


「…おい、どういうことだ?」

「あなたは地球にてお亡くなりになりました」

 ……そんな予感はしていたがやはりそうなのか…。


 俺は死んだ。なんらかが原因で死んで、天界に呼ばれた…か。


「…死因はなんなんだ?」

「えっと、、、ですね、、、。刺殺です…」

 し、え?刺殺?さ、刺されたってことか…?

 俺は寒気を覚えて腹あたりを無意識に探る。

「誰かまではわかんないよな…」

「申し訳ございません……」

 まあ、知ったところで死んでるしな……。

「で?俺が天界に来たのは閻魔様の天秤に量られるからじゃないのか?」

「いえ、違います!今からあなたには『転生手続き』をしてもらいます!」

「てんせい?」

 転生ってあの?

「転生です」

「…いや、わかるんだけどさ」

 転生ってマジであるのかよ。

「で、女神様はどこに俺を飛ばしてくれるんだ?」

「………」

「女神?」

「あっいや、そのですね。なんか割り切ってるなぁって」

「…まあ、未練なんてないしな」

 友人も多かったわけじゃない。一応高校生ではあるが、クラスで目立ってたわけでもなく、彼女がいたわけでもなく。よく言って平凡、悪く言って飾り気のない人生だったわけだ。

「…転生先ですが、リクエストができます。その場合は転生まで三日ほどかかりますが」

「リクエスト?」

「ハイ!こんな星がいいとか、こんなものになりたいとか、人によって全く違うんですよね〜」

 なるほどな。転生ってのはポンポンやるものかと思えば、しっかりとした手続きがあるらしい。まあ、引っ越しだと思えばそうか。

「まあ、とりあえず、カウンターの方に行きましょうか」

 そう言われて気付いた。周りを見渡せば、何もない、地平線まで白い空間が広がっていた。

「精神となんちゃらの部屋みたいですよね」

 言っていいのか、それ。

「では、着いてきてください」

 そう言ってすくっと立ち上がると、少し奥側にドアが現れた。

 俺も置いていかれないように、慌ててその後ろを追いかける。

 女神がそのドアを開くと、そこには信じられない光景があった。優しい光の差し込むドーム型の天窓に、円形になった廊下は、一番下まで光が届くようにと吹き抜けになっている。やはり他にも人がいるようだが、みんな実質死んでるのか…。

「改めまして、ようこそ天界へ!」

「…すげえな」

 目の前の光景に圧巻された俺にはこんな言葉しか出なかった。

「じゃあ、行きましょうか」

 方向に迷いがないというのか。やっぱ慣れてんだな。

「なあ、女神」

「アグネスとお呼びください!」

「なあ、アグネス」

「なんでしょう?」

 俺はくるりと見回して

「ここには地球人以外にもいるのか?」

「もちろんですよ。天界の仕事は主に二つに別れています。一つは転生、もう一つは裁量です」

 やっぱ裁量はあるんだな。

「基本的に転生のチャンスは一度だけです。その後は生前の行いを量って冥界に送られます」

「閻魔様か」

「星によって違いますね。言語も違うし、文化も違うので」

 確かに、人間じゃなさそうなやつもいるし、どっちかといえば人間のようなやるもいる。

「ではでは自己紹介します!私は女神アグネス。登録番号102607番です!」

 女神ってそんないたのか…。

「俺が生前何してたのか知ってるのか?」

「もちろんです!公立高校に入学後、自己紹介で大滑りして、友達がうまくできず…。その後体育祭で足が速いと認知されるも、対して話題になったわけでもなく、むしろ学年一の美女が綱引きで脅威のパワーを見せるという方が話題になって。彼女なし、友達なし。趣味はアニメを見ること…。なんか…ッ…悲しいですねw」

「笑うなよ!」

 …悲しいことに事実だが、、、、。

「えー、ケフンッ!着きましたよ」

「…ここが…カウンターか」

 着いたのは横に伸びる白い机がある大きな部屋、というかもう広間だろうか。天界ってどんだけ広いんだ?

 やはり様々な人種(?)の転生待ちがいるな。

「ささ、おかけください!」

「いや、おかけくださいって言われてもな…」

 奥の奥まで見てもどの席も誰かしら座っていて、自分が座れそうな場所など到底なさそうだが。 

「パチンッ!」と音がした。

「どうぞ!」

 振り返ると、そこにはなぜか席があった。

「すごいな女神って…」

「いえいえ、これぐらいできて当然です!」

 冷静さを装ってるつもりだろうが、照れてんのバレバレだぞ。


「さてさて、」

 アグネスがカウンターの反対側に座った。俺もやっと腰を落ち着かせられるぜ。

「転生先のリクエストについてですが、もう一度説明させてもらいますね」

 机からポンっとフリップが湧いて出た。

「便利だなそれ」

「えーっとですね。まずリクエストというのはあくまでも希望の範囲内なので、全部叶うとは限りません」

「まあ、そのくらいは」

「そして、手順としてはこのフリップ通りなのですが」

 見せられたフリップには時系列を説明するような図が描かれている。

「まず、『何になりたいか』です」

「人間のままだな。スライムとかろくな事なさそうだし」

「そして、『どこに行きたいか』」

 これが重要だ。俺の主人公ライフを大きく左右すると言っても過言ではない。

「どんなところがあるんだ?」

「こちらも図付きで説明しますね」

 フリップの絵が波に均される砂浜のように消えて樹形図が出てきた。

「大まかに分けると星は二つに分けられます。魔法がある世界とない世界です」

「アグネスがさっき使ってたのも魔法だよな?」

「そうですね。ちなみに地球も魔法を使う星に分類されています」

「ってことは、誰かが使ってたってことか…。ロマンあるな」

「その反応は意外ですね」

「どういうことだ?」

「いや、地球人って箱の中に人間を閉じ込めたり、物体を凍らせたり熱したりしてるじゃないですか?あれって魔法ですよ」

「あれ違うから。カガク。自然現象を利用してるだけ」

「十分魔法ですよ!」

 天界もだいぶ雑な仕事するなオイ。

「まあ、俺は純粋に魔法に興味あるし、ある星がいいかな」

「わかりました。あとは何かありますか?」

「なるべく地球に近い感じの星にしてくれないか?ユゴスとかに飛ばされても困るし」

「努力はしますが…。わかりませんね…」

 アグネスが言葉を濁らせると、机からパソコンが生えてきた。…天界にあるんか。しかもちょっと古いし。

「………あー。何件かあります」

「じゃあ、なんとかそこを頼む」

「承知しました!」

 まあ、ゼロから始めるなんとかでもいいとは思うが、予備知識を使えるに越したことはない。

「最後は『オプション』ですね」

「ああー。よくアニメで見るようないわゆる『チート』ってやつか」

「そうですね。転生先での生活の支えになるようにと、そんな感じで渡すやつです」

「……そうか…。俺は別に世界征服したいわけじゃないしな…」

「大抵のお客様は魔法とか武器とかですね」

「まあ、そうだろうな」

「なんかありますか?要望がなければテキトーに決めますが」

「…そうだな。もう少し待ってもらえるか?慎重に決めたいんだ」

「できますが…期間は三日ってところですね。転生させるときに付与しますね」

「わかった。サンキューな」

「では、説明は以上となるのであとは自由に過ごしてもらって構いません。何か不明な点があれば指輪に聞いてください。また三日後にお呼びしますね!」

 その言葉と同時に、周りの風景がジェンガのように崩れていき、俺はあの天窓の大広間の最下層にぽつんと立っていた。

作者は承認欲求モンスターなので感想いただけると励みになります。

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