1章 1話 〜ようこそ御都合主義の天界へ〜
初投稿なので大目に見てもらえればなあと思います。
「……さん」
、、、?
「…マ…キさん」
、、誰だ、、?
「ヤマネ カズキさん」
「ハイッ!!」
自分の名前を呼ばれたからなのか、反射的に返事をしてしまった。
…で、ここはどこだ?、、眩しいな‥
「目を覚ましましたか?」
きれいな声のする方を細目で見ると、そこにはぼんやりと人影があった。
目が慣れてきた…。何度か目を瞬くと、そのおぼろげな人影もあらわになってきた。
「あなたは…?」
「私は女神アグネスです」
そこには少し気恥ずかしそうな顔をした美人が立っていた。
「えっと…女神?」
「はい、そうです!」
「女神って、あの?」
「たぶんそうです!」
勢いがすごいな…。
そのアグネスと名乗る女神は、茶髪のショートヘアに洗礼されたような白い服を来ていて、目の色が緑色だった。
…アグネスなんて女神聞いたことないな。
「で、ここはどこなんだ?」
俺が何となく聞いてみると、やや気まずそうな顔で言った。
「ここは、、、天界です。あなた、山根カズキさんは…その、、」
焦らすな………。
「…残念ながら亡くなりました」
…死んだ?
俺が?
うそだろ女神。
「…おい、どういうことだ?」
「あなたは地球にてお亡くなりになりました」
……そんな予感はしていたがやはりそうなのか…。
俺は死んだ。なんらかが原因で死んで、天界に呼ばれた…か。
「…死因はなんなんだ?」
「えっと、、、ですね、、、。刺殺です…」
し、え?刺殺?さ、刺されたってことか…?
俺は寒気を覚えて腹あたりを無意識に探る。
「誰かまではわかんないよな…」
「申し訳ございません……」
まあ、知ったところで死んでるしな……。
「で?俺が天界に来たのは閻魔様の天秤に量られるからじゃないのか?」
「いえ、違います!今からあなたには『転生手続き』をしてもらいます!」
「てんせい?」
転生ってあの?
「転生です」
「…いや、わかるんだけどさ」
転生ってマジであるのかよ。
「で、女神様はどこに俺を飛ばしてくれるんだ?」
「………」
「女神?」
「あっいや、そのですね。なんか割り切ってるなぁって」
「…まあ、未練なんてないしな」
友人も多かったわけじゃない。一応高校生ではあるが、クラスで目立ってたわけでもなく、彼女がいたわけでもなく。よく言って平凡、悪く言って飾り気のない人生だったわけだ。
「…転生先ですが、リクエストができます。その場合は転生まで三日ほどかかりますが」
「リクエスト?」
「ハイ!こんな星がいいとか、こんなものになりたいとか、人によって全く違うんですよね〜」
なるほどな。転生ってのはポンポンやるものかと思えば、しっかりとした手続きがあるらしい。まあ、引っ越しだと思えばそうか。
「まあ、とりあえず、カウンターの方に行きましょうか」
そう言われて気付いた。周りを見渡せば、何もない、地平線まで白い空間が広がっていた。
「精神となんちゃらの部屋みたいですよね」
言っていいのか、それ。
「では、着いてきてください」
そう言ってすくっと立ち上がると、少し奥側にドアが現れた。
俺も置いていかれないように、慌ててその後ろを追いかける。
女神がそのドアを開くと、そこには信じられない光景があった。優しい光の差し込むドーム型の天窓に、円形になった廊下は、一番下まで光が届くようにと吹き抜けになっている。やはり他にも人がいるようだが、みんな実質死んでるのか…。
「改めまして、ようこそ天界へ!」
「…すげえな」
目の前の光景に圧巻された俺にはこんな言葉しか出なかった。
「じゃあ、行きましょうか」
方向に迷いがないというのか。やっぱ慣れてんだな。
「なあ、女神」
「アグネスとお呼びください!」
「なあ、アグネス」
「なんでしょう?」
俺はくるりと見回して
「ここには地球人以外にもいるのか?」
「もちろんですよ。天界の仕事は主に二つに別れています。一つは転生、もう一つは裁量です」
やっぱ裁量はあるんだな。
「基本的に転生のチャンスは一度だけです。その後は生前の行いを量って冥界に送られます」
「閻魔様か」
「星によって違いますね。言語も違うし、文化も違うので」
確かに、人間じゃなさそうなやつもいるし、どっちかといえば人間のようなやるもいる。
「ではでは自己紹介します!私は女神アグネス。登録番号102607番です!」
女神ってそんないたのか…。
「俺が生前何してたのか知ってるのか?」
「もちろんです!公立高校に入学後、自己紹介で大滑りして、友達がうまくできず…。その後体育祭で足が速いと認知されるも、対して話題になったわけでもなく、むしろ学年一の美女が綱引きで脅威のパワーを見せるという方が話題になって。彼女なし、友達なし。趣味はアニメを見ること…。なんか…ッ…悲しいですねw」
「笑うなよ!」
…悲しいことに事実だが、、、、。
「えー、ケフンッ!着きましたよ」
「…ここが…カウンターか」
着いたのは横に伸びる白い机がある大きな部屋、というかもう広間だろうか。天界ってどんだけ広いんだ?
やはり様々な人種(?)の転生待ちがいるな。
「ささ、おかけください!」
「いや、おかけくださいって言われてもな…」
奥の奥まで見てもどの席も誰かしら座っていて、自分が座れそうな場所など到底なさそうだが。
「パチンッ!」と音がした。
「どうぞ!」
振り返ると、そこにはなぜか席があった。
「すごいな女神って…」
「いえいえ、これぐらいできて当然です!」
冷静さを装ってるつもりだろうが、照れてんのバレバレだぞ。
作者は承認欲求モンスターなので感想いただけると励みになります。