もう、夢から覚める時
筆休めというなの自己満足、拙い作品第二話です。注意として頂くのは、拙い作品である事、相変わらずの自己満足作品であること、解放の鐘とは違い主人公は救われません(この小説内では)
【結婚式場内】
……ねぇ、そこの貴方。そう、貴方ですわ。貴方、他の方からは見えてなさそうなのですが…もしかして妖精や精霊の類ですの?
…そうなのですね。…え?友達の結婚式なのにそこまで楽しんでもないし喜んでもない?…フフッ。えぇ、そうですわね……では少しで宜しいので私のお話を聞いて頂けますか?
ありがとうございます。ではまず、少しだけ私の自己紹介でも……?頭で思っている事を映像化できる…?…簡単に話しかけてしまいましたけどもしかしてかなり高位の御方でしたので…?
…気にしていない?あ…ありがとう御座います。あ、すみません。私の名前を言っておりませんでした。私の名前はリンドリスト=ヘルガンナ。リンドリスト伯爵家の次女でございますわ。もし宜しければ貴方の名前をお聞きしても…?
いい名前ですわね!ですが名と姓が逆なのは少し不思議ですわね。
……では気お取り直しまして
…まぁ、私が彼に恋というものをしたのは……いえ、これが恋という気持ちを理解したのが今から大凡ニ年前です。何故、私が彼……ニルヴァーナ公爵家長男、ニルヴァーナ=ヘルシンキ様を好きになったのか。それは至極単純な理由ですが、彼が私のことを救ってくださったからなのです。ただ、私とヘルシンキ様はそこまで繋がりはある訳ではありませんでした。あるとしたら北方の防衛と領同士と交易ぐらいでしょうか。学院内でも廊下出会えば少し他愛のない会話をし、講義では席が隣に会えば一言二言交わすぐらいでしょうか……でも何故か私が受けていた事には敏感というか感が鋭い方でしたわね…
では何を救ってくださったのかと言いますとまぁ、ただの除け者扱いですわ。
私の伯爵家というのは王都の中心よりも離れたところにある場所の領主なのですが……そのせいなのかはわかりませんが、王都の侯爵家、伯爵家、子爵家、男爵家の令嬢が党徒を組んで此方を「田舎者」や「薄汚い伯爵家」と蔑んできたのです。えぇ、ツマラナイものです。
あぁ、でもルクオレア=ベルネスト侯爵家長女、ルクオレア=レルジェ様だけは私の味方でありましたけど……確か、「家がまだ子爵家の時に助けてもらった恩を漸く返せるのもありますし、何よりも貴方がそんな事をすると考えれない」なんて言っておりましたっけ…恐らく家の親か昔の縁でしょう。
まぁ…私を除け者扱いしてる者達は何を基準にそう言い放っているのか。そして侯爵伯爵家ならまだしも子爵男爵家までもが此方を蔑んでは私も上位貴族家としての面子と普遍の階級があります。ですので私も反撃はしました。「何を基準にそこまで私を蔑むのか。ただ王都から離れているだけで此方をただ誹謗中傷する其方こそ、本当の田舎者である!」と。……しかしながら、それで変われば苦労しません。私の行動はいわば、燃えている森林に爆裂魔法を放ったようなものです。そこからは対応が激化。水魔法で私の教科書を汚したり、制服を切り刻んだりと色々とありました。何よりも悪質なのが学院側と癒着汚職していた侯爵家の者が紛れている事ですわね…
ただ、それは大凡半年ほどで終わりましたっけ……え?5ヶ月?あ、そうでしたわね。まぁ期間はそれほど重要じゃありません。
あの時はかなり酷かった気がします。私を除け者扱いにしてきたグループの男爵家の一人の持ち物を盗んだとして、皆が集まる食堂にて公開審判のような物を受けた時です。まぁ、非難轟々でその時の私は「これで退学になればあとは考えなくて済む」なんて考えてましたっけ。
ただ、ベルネスト様だけは「彼女だけなんでそんなに必要以上に責め立てるの!?貴方達は証拠も無いのにそれだけ追い込めるのですか!?」なんて味方してくれましたっけ。
まぁでも侯爵家といえど数には勝てません。結局有耶無耶になってそれで主犯格のジレール侯爵家長女、ジレール=ジルベルトが私を偽物の言葉の剣で断罪しようとした時に、ヘルシンキ様が助けてくれたのです。
「何故彼女らの言い分を聞かぬ。それとジレールとジレールに賛同する家の者共よ。貴様等の数々の悪行、晒す事にした。学院に、そして貴族としていられると思うな!!それと我関与せずと黙ってみていた貴様等も同罪だ!!同じ貴族として思うなら、彼女を助けてやれば良かったのに何故そうしなかったのだ!!!」
…えぇ、まさしくその様な勇姿で私を助けてくれました。と言うよりも映像化再現とは恐れ入りますね…
話しを戻しますが…
彼の鶴の一声で食堂は静まり返りましたね…それで彼と彼女がそこから抜け出せるようにも手伝ってくれましたっけ。あの時の横顔は今でも鮮明に思い出せます。
その時からでしょうか。彼とお話する時は気分が高鳴り、あまりお顔を直視できなく、暇があれば彼は何をしているかなんて考えていました。今思えばあれが恋と言う物の始まりだったのでしょう。
…それで…えぇと…あの事があってから四ヶ月後。私を除け者にしていた令嬢は学院を強制退学、職についていた親は公職追放処分を下されましたね。まぁ、それは重要じゃありません。正当な処分ですし。
ただ、ここから私は恋を自認しました。彼との家の位がかなり離れているからと何度も諦めかけました。でも、私専属のメイドからも恋を応援され、私のこの激情をぶつけたい。そして、彼と結ばれたい。彼となら困難も乗り越えれる。そう思ったのです。しかしながら、私は除け者扱いされた時もされる前も自己評価はそう高くありませんでした。ですので、いつまで経っても地団駄を踏み、もし仮に想いを伝えたとして【この関係が壊れてしまう】と、ありもしないことを思いながら時間ばかりが経ってしまいました。しかし、彼の笑顔を向けられる度にこのままでは行けないとも思っているのも、また事実ですが。
………
そこから数カ月が経ちました。私は学院内で講義の部屋に移動している時でした。広場にてヘルシンキ様を見かけたのです。少しだけ声をかけようと思いました。……ですがそれは止めました。何故なら隣にベルネスト様がいたからです。…確かに、ただ、隣にいたのなら声をかけたと思います……しかし…しかしです。あの御二人方は他一般大衆に向ける笑顔とは違う…どちらかといえば、大切な人を想う様なそんな笑顔でした。私にはもう必ず向かないであろう、ヘルシンキ様のあの笑顔がとても眩しくて、そして私の味方であったはずのベルネスト様を妬ましいと思ってしまって…
そこから自己嫌悪と現実逃避が重なり、駆け足で逃げる様に講義の部屋に入っていきましたね……あと、私の思い違いかも知れないと思っていたのですが、あの後……大凡2ヶ月後でしょうか、ベルネスト様からヘルシンキ様と正式に付き合ったという言葉を聞いて私の恋は終わりましたね。あの時、ちゃんと笑顔でいれたかは定かではありませんが…
あの後の講義は頭に入りませんでした。多分それほど動揺してたのでしょう。私の部屋に帰った時、直ぐにドアを閉めました。足に力が入らずにドアにもたれかかるようにして床に座り、感情の我慢の糸が切れたかのように涙が溢れてきましたね……拭っても拭っても止まらない涙にまた涙が溢れてきたものですから、それ程迄に、ヘルシンキ様の事が好きだったのを認めざるを得なかった事でしょう。
……あのとき思ったのは「もっと前から行動していれば、隣に居るのはもしかしたら私だったのかもしれない」という後悔です。まだ正式に付き合っていない時に告白すれば、もしかしたら…なんて考えていました。……けれども、互いを大切に想う二人のあの笑顔を切り裂けるほど、私は強くありませんし非常ではありませんし、それに、あれだけの想いを持つ二人の間に入る事が、如何して出来るのでしょうか!!幸せを求めるのならば傷つける、傷つく勇気がある者だけが享受できる。まさしくそのとおりです。ベルネスト様は傷つく可能性がある上で、ヘルシンキ様に想いを告げたのですから。
私は臆病です。変わるかもしれないとう仮定から抜け出せないほどに………それに、今でもヘルシンキ様に不相応な想いは心に残っているのです。まるで、「せっかく自分で見つけた想いなのだから蔑ろにしないでくれ」と訴えてる様に、美しい音色がもっと聞いてほしいと願い、何時までも残響を響かせるように、残っているのです。
…でも、それも今日で終わりです。何時までも壊れた時計を眺めている暇はないのですから。
…あ、精霊様。御覧ください。あの純白の衣装を纏った二人の御方が私が話していたニルヴァーナ=ヘルシンキ様とルクオレア=ベルネスト様です。…………お綺麗になりましたね…本当に。
(一通りの行程が終わり、自由時間となりヘルガンナに近づくヘルシンキとベルネスト)
「……フフッ、ヘルシンキ様にベルネスト様。ご結婚、おめでとう御座います。御二人方ならどんな困難があろうとも、必ず立ち直っていける事でしょう。…え?私…ですか?フフッ、私は私の幸せを必ず掴みます。ですのでご心配なさらないでください。………えぇ……そうですね、確かに主役である御二人がここに居続けるのもあれですし……えぇ、では、また」
(笑顔で、「ありがとう」といい、その場を後にするヘルシンキとベルネスト)
…精霊様。私はリンドリスト家の一員として振る舞わなければなりませんし…これで御開ですね。私のツマラナイ昔話に付き合って頂きありがとう御座いました。
…あと、最後に一つ。…………私は………
………私は笑顔でいれましたか…?
…そうですか。
貴方は最後の問になんと答えましたか?