3話 月に照らされてtalk
「梓、あーずさ!ほら、起きて」
「ん、、、あ、え、もう?」
お母さんは私が座っていた助手席のドアを開けて今回は少し遅刻気味なのがお母さんの早歩きで分かった。
大きな病院には車椅子に乗っているお婆さんや、お母さんと手を繋いで笑顔の男の子がいる。私はエスカレーターで2階まで行き、5つぐらい横に並んでいる検査室の前のソファーに腰をかけて待っていた。すると、前の通路に真面目そうな男の人の後ろに教室で寝ていた男子がいた。その瞬間、看護師さんに名前を呼ばれた。
沢山の検査を終えた後、病院の先生から検査結果が前よりも良くなっていた。病院に通う頻度も少し減らそうか。と伝えられた。私は自然と思いっきり息を吸いながら口角が上がっているのが分かった。
私は血液の病気を持っている。病気が発覚したのは小学校4年生のときだった。水泳の授業で友達の爪が私の鼻の中を傷つけてしまい鼻血が出てしまった。その友達というのが純恋だ。純恋は爪が当たったことに気づいていなかった。私はすぐに保健室に連れていかれた。保健室のおばちゃんは鼻にティッシュを詰めてくれたが鼻血が止まりそうな気配はなく、それどこらか出てくる血は増すばかり。徐々に私の意識も朦朧としてきていた。私はそのままおばちゃんが呼んだ救急車に乗り、病院での検査で病気が発覚した。
私の病気は治療法はなく、薬で症状を軽くすることと、生きれる期限を伸ばすことしかできなかった。でも、その薬もいつかは効かなくなるらしい。それを病院の先生から聞いた時は本当にショックだったし将来の夢が馬鹿らしく思えた。どうせ、すぐ死ぬんだから夢なんか叶えられるはずがないと思った。でも今回の検査で希望が持てた。今までの検査結果は検査をしていくにつれてどんどん悪くなっていていたの今回はよかったから本当に本当に嬉しかった。
帰ったらオムライスをお母さんと作った。オムライスの卵みたいに私を包み込んでくれる彼氏がいてもいいなとか病気になってからは一切考えなかったことを考えているほど先程のことは嬉しかった。
オムライスを食べ終えた後、学校の準備をしていると、鞄がないことに気づいた。純恋と一緒に行った湖波高校に置いてきてしまったのだ。夜に行くのは怖いけど違う鞄で行くと陰キャの私はもしかしたら虐められるかもしれないので勇気を振り絞って自転車で湖波中学校に向かいました。
夕方と夜の校舎とではまるで違っていて、夜の方が校舎に威圧感を感じる。玄関は幸いなことに空いていたので忍足で物音を立てないように学校に侵入した。職員室は明かりがついていた。厄介なことに先生がいるようだ。でも1人は嫌なので半々な気持ちだが。4階の2年5組まで向かう。
私は5組のドアの前で深呼吸をする。お化けなどいるはずがないと言い聞かせて落ち着かせるために。両手でドアを慎重に開けた。すると、奥の窓際席に人影が見えたのだ。キャーと叫びそうだった口を両手で強く抑えた。私は教室で寝ていた彼を思い出し、小声ですいませんと言い、鞄が置いてあるはずの席まで早歩きで行った。だが、無いのだ。あるはずの物が無いのだ…。すると、彼がわたしの鞄を腕を伸ばしてあ、これ?と座ったままこちらに見せてきたのだが、月に照らされながら頬杖をついて月を見つめる彼に見惚れてしまい、彼の声が聞こえなかった。
すると、彼は椅子をガッっと鳴らしこちらに走ってきた。私はハッとして彼が怒っていると思い、一瞬で私の瞳は濡れた。
「返事しろよ」
「イケメンですね……」
「は?」
私は何を言ってしまったのだろうか!!!
彼は怒っていると思った私はテンパって彼の機嫌をよくするようなことを言えばいいんだと思って、イケメンですねだなんて言う馬鹿みたいなことを言ってしまったのだ。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
私は自分の言ったことの失礼さで自然に私はごめんなさいを呪文のように唱え始めたのだ。
「大丈夫?ていうかこの鞄ラクガキ書いてあったけど…いじめられてんの?」
「え、いじめられてなんか…いない……はず。」
実は私少し心当たりがあった。今朝、学校に着いたとき私のロッカーが濡れていたのだ。でも、それはリュックに入れていた水筒からもれたのだと思っていた。それと、机にラクガキがあった。でも、それは悪口ではなくて私の名前だった。忘れているだけで自分がやったと思っていたが、鞄には流石に書かないのでこれで私はいじめられているのだと確信した。
「俺もいじめられてんだよ。仲間だな。」
名前も知らない人に握手をされた。というかなぜこんなイケメンがいじめられるのだろか。素っ気ないからだろうか。
「そうなんですね…えへへ」
「ちょっとこっち来い」
「あ、はい……」
男の人に初めて引っ張られた。ドキドキした。
彼はほら、見ろよと、机のラクガキを男らしいくて少しゴツゴツとしているけど白くて綺麗な指で示した。
すると彼がここ座れよと、長くて細い腕で前の席の椅子を引っ張った。私はありがとうと、下を向いて言い、彼から始まったいじめの憂鬱な話をした。彼は暗い性格で友達がおらず彼のことなんて誰も興味がないらしい。私はだからイケメンなのにいじめられているんだと納得した。私はなぜいじめられているか分からないから何も話さなかった。それから恋愛の話になった。彼は彼女が居ないらしい。嬉しかった。私と同じ。そんな他愛のない話をした。ふと時計を見ると21時になろうとしていた。流石にコレはやばかった。私は慌てて立ち、椅子を後ろにガッと押した。
「ご、ごめんなさい。もう帰らないと」
「何かシンデレラみたいだな。じゃあな」
「じゃ、じゃあね。また明日」
「えっ」
私は慌てて教室から出たため彼の驚きの声を無視して出てきた。急ぎたかったが先生がいるため、むやみに走ることは出来なかった。校舎を出てからは外の自転車に急いで跨り、急ピッチで家に帰る道でさっきの彼の何かに驚いた声が気になりその前に言った私のことばがおかしかったのかと思い、こんがらがっている私の記憶を探る。すると、ものすごくヤバいことに気がついた。私は“また明日”と言ってしまったのだ…。もしかしたら彼にものすごく馴れ馴れしい人だと思われたかもと心に不安が一気に溜まる。
でも彼もかなり馴れ馴れしい人だったのでどっちもどっちやないかーいと心の中でツッコミをする。